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その昔、伊豆から来た宮大工などが建てたといわれる慈光寺 |
その様を見た人は「まるで桃源郷のようだ」と話す。春から秋にかけてサクラやヤマツツジ、ミツバツツジ、ハナショウブ、アジサイ、そしてかれんな淡紅色の花を咲かせるシュウカイドウなど四季折々の花が咲き乱れるという埼玉県比企郡ときがわ町。ほぼ県央部に位置する人口1万2000人の町だ。埼玉の観光地といえば川越や秩父などが頭に浮かぶが、ときがわ町にも年間90万人以上が訪れるという。その割にはあまり知られていない“山里”をしばし、都会の喧騒(けんそう)を離れ歩いてみた。
関東最古の山岳寺院
まず訪れたのが1300年の歴史を誇る慈光寺。鎌倉時代に源頼朝から仏像と田畑1200町歩の寄進を受けたと伝わる関東最古の山岳寺院である。
東京・池袋から東武東上線に乗り小川町駅で下車、JR八高線に乗り換え明覚駅へ。そこから町営の路線バスに乗り約10分でバス停「慈光寺入口」に着く。ここから坂を上がると慈光寺がある。
慈光寺は、秩父山地の東端に位置する標高466メートルの都幾山(ときさん)に本堂、開山堂、観音堂、般若心経堂、霊山院など多くの堂宇を擁している。春になると、参道の両側にヤエ、カワズなど36種のサクラが約4キロもの間、咲くという。夏の季節はもちろんサクラは見られないが、代わりに緑がまばゆいほど。「秋は紅葉を見に来る人が多いですよ」と話すのは第108世住職の佐伯頼栄さん(48)だ。
幕府祈願寺として手厚い保護を受けて、最盛期には1山75坊を擁する大寺院として隆盛を極めたという慈光寺。国宝や重要文化財、県、町の文化財に指定された多数の寺宝が伝わる。寺宝の代表格が国宝「法華経一品経・阿弥陀経・般若心経」(鎌倉時代)。平家納経、久能寺経とともに仏教美術の粋を後世に伝える3大装飾経の一つといわれる。同寺では、最新技術で拡大した陶板を常時、見学できる。
文化財は宝物殿入館料300円で拝観できる。慈光寺 TEL.0493・67・0040
手打ちうどんに舌鼓
暑い季節には特においしく感じる冷や汁つけうどん |
慈光寺の参道を下るとちょうど昼時、近くにあるうどん店「やすらぎの家」(TEL.0493・67・0800)へ。100年以上も前に建てられた古民家を移築した建物は独特の風情がある。
この店の一番人気である冷や汁つけうどん(800円)を野菜天ぷら付き(300円)で注文。冷や汁につけていただく手打ちうどんはコシがあっておいしく、地元で取れた野菜の天ぷらも冷や汁につけると一段と風味が増す。希望者はうどん打ちが体験できる。要予約。
“巨木の里”の建具
腹ごしらえが済んで向かったのが、「やすらぎの家」から徒歩1分の建具会館(TEL.0493・67・0049)。
“巨木の里”としても知られるときがわ町はスギやヒノキなど木材の産地であり、県内有数の建具生産量を誇る木工の盛んな町でもある。「かつて慈光寺を創建する際に伊豆から宮大工や建具職人が来て、この地に住み着いたといわれています」と話すのは同館アドバイザーの浅野孝一さん(76)。館内には障子や襖(ふすま)、扉、引き戸、欄間戸などの逸品が展示販売されているほか、地元特産の農産物なども販売している。最近、アルミ製などに押されていたが、徐々に「木工の良さが見直されつつあります」と浅野さんは話す。 |
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おすすめ観光情報
ときがわ町には「日帰り温泉都幾の湯 都幾川四季彩館」「いこいの里 大附そば道場」などの町営施設があり、民営の「とうふ工房わたなべ」やゴルフ場も人気だ。秋には大附みかん山などでみかん狩りが楽しめる。
ハイキングが好きな人には、トイレを設置した初級者、中級者、上級者別のハイキングコースやキャンプ場。また、天文台で満天の星空を眺めることも。 |
【観光の問い合わせ】
ときがわ町観光協会 TEL.0493・65・1283 |
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