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  今月の旅情報 平成24年5月下旬号  
伝統と現代アートが交錯  香川県/瀬戸内地方

菓子木型は硬い桜の木を使用。材料は和三盆糖100%。粒子の細かい和三盆糖だからこそ型押しができる
 四国の入り口にして古来、瀬戸内海を行く大小の船に揺られ人・物・文化が交錯した讃岐の国—香川県。現在、同地で伝統と現代アートが交錯、瀬戸内の島々を彩る多彩な花を咲かせている。穏やかな波に誘われ讃岐路を旅した。

“甘い芸術”和三盆
 食紅で色付けし、霧吹きで水分を加えた讃岐名産の和三盆糖を菓子木型—木彫りの鋳型に盛り十分に押し固めると、縁起の良いタイや鶴亀の干菓子が出来上がる。見た目はらくがんのようだが、口に入れるとスーッと溶けさらりとした甘さが広がる。この高級菓子はその名も「和三盆」という。

 和菓子作りに欠かせない菓子木型は江戸時代に発祥したといわれる。和菓子は一昔前まで縁起物として冠婚葬祭に欠かせず、木型の職人も全国の津々浦々にいた。しかしさまざまな甘味があふれ、伝統や風習が年々薄れゆく現在、職人は全国で10人以下にまで減少。

 そんな中、四国でただ一人伝統の灯を守り続ける木型職人の市原吉博さん(66)は、企業やアーティストとのコラボレーションにより東京やニューヨークで和三盆による現代アートを出品、一躍脚光を浴びた。「需要がなければ後継者は育たない。しかし伝統は守っていくものではない。芯はぶらさずに変えていくものだ」と市原さん。

 また、作品展会場で和三盆の型押しを実演したところ多くの人が目を輝かせて喜んでくれたという。その光景を見た娘の上原あゆみさん(38)も感動。「これまで父の仕事に何の関心もなかったが、家にあった菓子木型に触れ初めてその楽しさに気が付いた」と技の継承を決意するとともに、地元の高松市で和三盆体験ルーム「豆花(まめはな)」を始めた。伝統とアートの交錯が親子の絆を一層固くした。

 豆花の和三盆作り体験は午前10時〜午後5時(予約制)。飲み物付き。料金は1000円で時間は約1時間。木曜定休。TEL.087・831・3712

「島がキャンバス」

「空の粒子」…棚田や海を望む絶好のロケーションの下、普段目には見えない空に舞う粒子を鋼材で可視化

「遠い記憶」…集落の旧公民館を改造、島々から集めた廃材でトンネルを形成。トンネルの先に見えるものは…
 讃岐の国から望む瀬戸内海—さぬき瀬戸には大小116の島が浮かび、そのうち24の有人島には独特の文化が育まれてきた。

 今、この島々にアートの風が吹き渡る。瀬戸内の海と島の美しさがアーティストらのインスピレーションを喚起した結果、2010年には高松港と7つの島をキャンバスに瀬戸内国際芸術祭が開催され、105日間にわたって18の国と地域からなるアーティストらが76作品と16のイベントを展開。この海と島を会場に行われた世界初の試みに国内外から約93万人が来場、以降現代アートの聖地となった。

 縄文・弥生の遺跡が点在し、棚田のほかミカン畑やオリーブ畑が広がるのどかな島・豊島(てしま)もその1つ。周囲20キロ、人口1000人余りの同島には「豊島美術館」を中心に芸術祭で展示されたアート作品がいまだあちこちに見られる。歴史と伝統ある島の日常と現代アートのコントラストを楽しむため、国内はもとより多くの外国人観光客も訪れる。

 また、13年にはエリアを12の島と2つの港に拡大し芸術祭の第2弾が開かれる予定だ。問い合わせは事務局 TEL.087・832・3123

レストランもアート作品
 食とアートで島と島、人と人をつなげることをコンセプトに瀬戸内国際芸術祭での1作品としてスタートしたのが、豊島の古民家を改築したレストラン「島キッチン」。

 料理を手掛けるのは東京・丸ノ内ホテルから招いたシェフと島のお母さんたち。最新のフランス料理と郷土料理のコラボレーションが実現した。食材はほぼ島産を原材料とし、メーンメニューの「島キッチンセット」は季節の素材を生かした料理が提供される。

 営業時間は午前10時半〜午後4時半。土日祝日のみ営業。メニューは「島キッチンセット」1500円、「キーマカレーセット」1200円ほか。家浦港からバスで11分、清水前下車。TEL.0879・68・3771(問い合わせは土日祝のみ可)
【観光情報】
 豊島へのアクセスは高松港からフェリーで最短なら約35分(家浦港)。家浦港には電動レンタサイクルあり(使用料4時間以内1000円)。その他観光情報や島々を巡るフェリー・海上タクシーなどの運行情報は香川県観光協会 TEL.087・832・3377

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