|
秋田内陸縦貫鉄道の観光アテンダントは、爽やかな笑顔が印象的だ |
青森や岩手に面した秋田県北東部に位置する小坂町や鹿角(かづの)市はかつて鉱山で栄えた歴史と伝統が今も息づく町だ。また鹿角市の隣、大館市には天然杉を使用した伝統工芸が伝わっている。こうした観光スポットのほかにも、きりたんぽや比内地鶏(ひないじどり)を使った親子丼など、おいしい料理が楽しめる地域でもある。秋田県内陸部を巡るのに便利な秋田内陸縦貫鉄道(内陸線)を利用して、秋田の奥深い魅力を秘めた鹿角市周辺を訪ねた。
「小坂鉱山」の伝統息づく
東京から秋田新幹線「こまち」に乗って角館(仙北市)で下車。この町から鷹巣(北秋田市)まで内陸線で約2時間半だ。「最近は台湾などからのお客さんも多いですよ」と駅長(現統括駅長)の鈴木光男さん(58)。車窓から眺める山や川などの風景とともに話題なのが、秋田内陸線の“花”観光アテンダントさんたち。いわばガイドを兼ねた車掌さんで、名所や撮影スポットでの観光案内や行き先へのアクセスなどの相談にも乗ってくれるという。
途中、阿仁合(あにあい)駅で下車し、車に乗り換えて訪れたのが小坂町。かつて「日本一の鉱山」と称され、鉱山業で繁栄した町だ。
現役の芝居小屋
当時の繁栄がしのばれるのが日本最古級の木造建築物の芝居小屋「康楽館」(TEL.0186・29・3732)。1910(明治43)年7月に建築された同館は、1世紀以上が過ぎた今も現役。607人が収容できる芝居小屋で、国の重要文化財にも指定されている。和洋折衷のモダンな外観もさることながら、現代の人々には内部の造りが興味深い。
例えば舞台回しや花道で役者をせり上げる切穴(すっぽん)は人力だ。中央の回り舞台は舞台下でろくろ仕掛けによる直径9.73メートルの舞台を4人で押しながら回し、切穴はロープと滑車を使って2人が操作する。機械で動かす今の時代では珍しい構造だ。
また、舞台奥にある楽屋には、壁や戸などのいたるところにこれまで康楽館の舞台を踏んだ役者のサインなどが数多く残されている。よく見ると、「(市川)団十郎」などよく知られる歌舞伎役者の署名があったりして面白い。
康楽館は小坂鉱山の厚生施設として建設されたというから、当時、いかに鉱山業が地元に利益をもたらしたかというのが分かる。
小坂鉱山事務所 |
優れた建築美
その小坂鉱山の輝きを今に伝えるのが、康楽館と国際交流広場を挟んで建つ、「小坂鉱山事務所」(国指定重要文化財)だ。木造3階建て、延べ床面積2596平方メートルの同事務所は、優れた建築美を誇る。屋根の飾り窓などルネサンス風の華麗な外観、また玄関ホールにある見事な曲線美のらせん階段などは見る者を魅了する。
入館料300円。問い合わせは TEL.0186・29・5522
「南部藩の名湯」
800年以上の歴史を誇るという大湯温泉郷(鹿角市)は、その優れた泉質から江戸時代は南部藩の湯治場だったという。実は、鹿角市は江戸時代、南部藩の領地。秋田藩だった隣の大館市とは、今でも人々の気質に微妙な違いがあるというから面白い。
宿泊や観光、物産のPRを行っている(社)十和田八幡平観光物産協会会長の千葉潤一さん(53)は元南部藩士がルーツ。千葉さんは大湯温泉郷で「龍門亭 千葉旅館」を経営する6代目社長でもある。千葉さんの先祖が武士から旅館業を起こしたのだが、明治の廃藩置県後にそのうわさを聞いた元南部藩主が千葉旅館を訪れたこともあったという。 |
|
比内地鶏のもも肉のみを使った絶品の親子丼 |
おすすめ情報
絶品親子丼
秋田名物として全国に知られる「きりたんぽ」。その本場・大館市で新たな名物となっているのが比内地鶏。天然記念物の比内鶏の雄とロードアイランドレッドの雌をかけ合わせて生まれた食肉用の鶏だ。
「比内や」はこの比内地鶏のもも肉のみを使った絶品の親子丼を出す店。TEL.0186・49・7766
鹿角産の黄金スイーツ
かつて栄えた鹿角市・尾去沢鉱山にちなんで鹿角産の食材を用いて作った「黄金スイーツ」。黄鉱や黒鉱などをイメージしたきんつばやチーズケーキ、米粉を使用したロールケーキが評判だ。(社)十和田八幡平観光物産協会 TEL.0186・23・2019
大館曲げわっぱ体験工房
明るく優美な木肌と整った木目の天然杉。杉を素材にして作る曲げわっぱは国の伝統的工芸品にも指定。
この曲げわっぱ作りを楽しめるのが「大館曲げわっぱ体験工房」だ。「体験キット」を選んでインストラクターのサポートを受け製作。完成した曲げわっぱは持ち帰って使用できる。TEL.0186・49・5221 |
|
| |
|