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吉岡温泉は美肌のほか、神経痛や関節痛にも効能がある |
人気のある足湯 |
鳥取砂丘で有名な鳥取市は、実は複数の温泉郷が集中するリラクセーションスポット。そんな鳥取市にあって市民の心に潤いをもたらす“オアシス”を巡ってみた。
“隠れ家的”な湯煙の里
鳥取砂丘や鳥取空港に程近い吉岡温泉は、天然の湖沼中、日本最大の池である湖山池(こやまいけ)から目と鼻の先にあり、肌に効能のあるアルカリ単純泉として知られている。江戸時代より皮膚病の湯治場として発展してきた。
こぢんまりした温泉街はなだらかな細い坂道に沿って延び、12軒の旅館のほか共同浴場、2カ所の足湯が並ぶ。湯量は豊富で、静かな風情ある街並みを歩けば随所に温泉井戸があるのに気付く。蛇口をひねれば温泉が出るのだ。
さらに夏にはホタル、秋には紅葉、そして冬は松葉ガニなど日本海の幸が湯治客の目や舌を楽しませる同温泉街。一番の魅力は一人旅や夫婦での旅行など少人数の客を徹底しておもてなしする各旅館の姿勢だ。
「人の気持ちをつかむとは何かを考え、自分の旅館でできることは一つひとつ実行してきた」と語るのは、旅館「湯菜花(ゆなか)」(TEL.0857・57・0245)の女将(おかみ)・田中和子さん(53)。同温泉街は大半が小さな旅館だが、だからこそ一人ひとりの宿泊客へ配慮が行き届くとあって、口コミなどで“隠れ家的”温泉として好評を博す。 |
仁風閣は白亜の外壁と三角屋根のフレンチ・ルネサンス様式を基調とした外観 |
白亜の洋館「仁風閣」
豊臣秀吉の城攻めで有名な鳥取城。現在は石垣のみを残し城跡は公園として整備され市民の憩いの地となっている。その一角に建つ白亜の木造2階建て洋館「仁風閣」は1907(明治40)年、皇太子(のちの大正天皇)行啓の宿舎として、旧鳥取藩主・池田家が急きょ建設したもので明治文明開化期の華々しさを今に残す。
瀟洒(しょうしゃ)な外観に心躍らせながら玄関をくぐると、県下で初めて電気の光がともされたシャンデリアに迎えられる。保存状態のよい館内は当時の品格が漂い、また曲線美を誇る支柱のないらせん階段など建築技術の粋を尽くした内装からは、過ぎし日の華族の財力を想像せずにはいられない。
現在は国の重要文化財に指定されている。館内は鳥取城の資料および鳥取藩・池田家代々のゆかりの品が展示されている。なお館の名前は皇太子行啓に随行した海軍大将・東郷平八郎の命名によるもので、その時の肉筆も館内に掲げられている。
開館時間午前9時〜午後5時。月曜休館。観覧料は150円。TEL.0857・26・3595 |
10日間寝かせたカレーと軟らかなカツが自慢の「べニ屋」のチキンカツカレー。ご飯とルーのブレンドを味わってほしいため、付け合わせはない |
喫茶店の“華麗なカレー”
鳥取県は全国有数のカレールー消費県。だが鳥取市の繁華街にはカレー専門店は少なく、なぜか喫茶店が人気のカレーを提供している。チキンカツカレーが名物の老舗「喫茶ベニ屋」もその一つ。
「共働きが多く外食が少ない家庭が多いので、作り置きできるカレーの消費量が多いのでしょう。そういう環境だから昔は外食産業が発展せず、喫茶店がどんなメニューでも提供していた。その後、人気のないメニューが徐々に外れて、結局カレーが残りました」と解説してくれたのは店主の平田瑩壹さん(64)。
平田瑩壹さん |
幅広い年代に食べてもらうため自家製ルーは口当たりの柔らかい豚骨ベース。口に入れた時は甘いが後からくるピリッとした辛さが癖になると、昼時には多くの市民が訪れる。お盆にはこの味で育った帰省客が列をなすことも。
ちなみにベニ屋の“ベニ”は口紅の“ベニ”であり、歴史をさかのぼると化粧品店から枝分かれしたという変わり種だ。華麗な味のカレーはいかが。カレー580円。チキンカツカレー750円。営業時間午前8時〜午後7時。水曜定休。TEL.0857・22・2874 |
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【観光の問い合わせ・鳥取県東京本部】
TEL.03・5212・9077 |
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