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「波浮港見晴台」で佐藤健治さん。背後には円形の美しい波浮港が望める |
東京・竹芝桟橋から高速ジェット船で105分—。豊かな自然に囲まれた伊豆大島(東京都大島町)は、火山の恵みが生んだ魅惑の島だ。2010年9月には地球全体の仕組みを学べる貴重な地域として、日本ジオパークに認定された。四季の花々や温泉、食…。東京で唯一の“大地の公園”で、地球の息吹を体感しよう。
学ぶ
ジオパークとは、「地球の活動や、地球と生き物との関わりを楽しく学べる場所」のこと。ユネスコが支援する新しい構想で、貴重な地質や自然の価値を含め、その資産を地元の人が生かしながら守っていくという“活動”が重要視される。日本では現在、20地域が日本ジオパークに認定(そのうち5地域は世界ジオパーク)。中でも伊豆大島ジオパークは、火山活動とその履歴を観察できる「野外博物館」だ。
現在、伊豆大島で観光ガイドも務めるケンボーネイチャーサービス(TEL.04992・4・0355)の佐藤健治さん(61)。佐藤さんは長年のダイビング業が縁で、90年に同島に移住した。「首都圏から120キロという伊豆大島は、日本でも数少ない玄武岩質活火山の島。安全に火口のすぐそばまで行くことができ、知識・経験豊かなガイドがいるのも特徴です」
ヤブツバキやオオシマザクラ、ガクアジサイ…。植物学者の故牧野富太郎が「東海の花彩島」と名付けた通り、1年中花々が楽しめるのも、噴火と再生を繰り返す伊豆大島ならではだ。 |
三原山の火口を1周する“お鉢めぐり” |
歩く
ジオパーク体験の醍醐味(だいごみ)は何といっても三原山(標高758メートル)のハイキング。特に「御神火」とあがめられる三原山火口を一周する“お鉢めぐり(2.5キロ、約45分)”は360度の眺望が楽しめてお勧めだ。道は初心者にも歩きやすく、空気の澄んだこの季節は伊豆諸島の島々が見えることも。
また三原山の東側、「裏砂漠」と呼ばれる一帯はハイキングの人気ルート。晩秋には辺り一面、ススキの穂が風に揺れる。水はけのよいスコリア(火山放出物の一種で多孔質、暗色の岩片)の道を歩けば、ザクザクという心地よい足音が追いかけてくる。道中、溶岩の隙間に芽を出したイタドリや、その落ち葉を養分に根付いたススキなど、度重なる噴火のダメージからたくましく再生し、環境に適応している生物の姿を確認できる。「カルデラ内でいろいろな命の競争を見てとれます。人も生物も互いに関わり、変化しながら生きている」と佐藤さん。
山頂避難休憩舎では、土日祝日と、椿祭り期間中に「ジオパーク展」を開催。写真展示の他、ガイドが常駐。三原山を歩いて見られる景色を物語にしたバーチャルツアー(無料)も。 |
大島温泉ホテルの露天風呂。開放感たっぷりの湯に漬かり、散策の疲れもリフレッシュ |
安らぐ
宿泊は三原山7合目に位置する源泉掛け流しの温泉宿「大島温泉ホテル」(TEL.04992・2・1673)へ。絶好のロケーションを誇る露天風呂では、何一つ遮るもののない原生林越しに三原山の絶景を満喫できる。
夕食は旬の魚の刺し身、アシタバなど伊豆大島の滋味を堪能。メーンはチーズフォンデュならぬ「椿フォンデュ」だ。串に刺した魚介や野菜に衣をつけ、特産のつばき油の中へ。自ら揚げた熱々を食べれば、旅の思い出もより特別なものに—。 |
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その他のスポット
かつては火山の火口湖だった波浮(はぶ)港。大津波で海とつながり、江戸時代、人工的に湾口を広げ港として利用された。港町情緒あふれる同港は川端康成の小説「伊豆の踊子」にも登場。
また、島の南西側には高さ約30メートル、長さ600メートル以上にわたって「地層切断面」が続く。100〜150年程度に1回という大噴火によって降り積もった降下堆積物が、幾重にも積み重なって見事なしま模様を描く。
島内には火山博物館や踊子の里資料館の他、日本最大の椿園なども。 |
【問い合わせ先】
【観光全般】(社)大島観光協会 TEL.04992・2・2177
【交通(乗船券)】東海汽船予約センター TEL.03・5472・9999 |
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