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「那須平成の森」の動植物や昆虫について、ユーモアを交えて説明する古澤さん=右端。平成の森には車椅子でも行ける散策路も整備されている |
東京の北、約180キロに位置する那須高原(栃木)。那須連山を望む自然と温泉に恵まれた、日本有数のリゾート地だ。ことし5月には那須御用邸用地の一部だった森が「那須平成の森」としてオープンした。原発事故に伴う放射能の影響に苦慮しながらも、関係者は「那須元気!宣言」を掲げ誘客に力を注ぐ。木々が色づく季節を迎えた高原の“今”を紹介する。
「平成の森」で自然観察
天皇ご一家や皇族が静養する那須御用邸があることから、那須高原は格式高い“ロイヤルリゾート”の地として知られてきた。
「那須平成の森」(TEL.0287・74・6808)は、御用邸用地として管理されていた約560ヘクタールに及ぶ広大な森。2008(平成20)年、宮内庁から環境省に移管された。長年、人の立ち入りがほとんどなかったこともあり、希少種を含む貴重な生態系が維持されている。散策路などからは那須連山の主峰・茶臼岳(1915メートル)が間近に見える。
平成の森では、ブナやミズナラの大木や渓流を訪ねる「ガイドウオーク」など、自然と親しむ各種プログラムを実施している。担い手は「インタープリター」と呼ばれる“自然と人の橋渡し役”。16人いるインタープリターの1人、古澤庄三郎さん(57)は「案内はゲーム感覚で楽しく。御用邸の歴史も絡め、森の魅力を伝えます」。
ガイドウオークは有料で予約制。約30分間の「ミニプログラム」は無料で当日、参加を受け付ける。
「鹿の湯」 |
泉質異なる「那須七湯」
1400年近い歴史を誇る那須温泉郷。高原に散在する温泉群は効能や泉質がそれぞれ違い、「那須七湯」などと称される。目的や好みに応じた「高原の湯巡り」がおすすめだ。
那須温泉には、湯治場の雰囲気を残す「鹿の湯」を中心とした温泉街も。七湯の宿泊者数は毎年170万人を超すが、(社)那須観光協会事務局長の関幸夫さん(44)は「震災後、客足は3割ほど落ち込んでいる」と話す。那須町はすでに「那須元気!宣言」を打ち出しているが、「放射能への不安は、やはり影響している」。ただ夏以降、客足が戻ってきたという関さんは「これからも正確な情報を提供し、那須の魅力も発信したい」と前を見据える。
ドウダンツツジ、ナナカマド、カラマツ、ブナ…。高原の紅葉は見頃を迎えている。那須連山の山腹から麓へ下りる“紅葉前線”は11月中旬ごろまで楽しめそうだ。
那須ハイランドパーク |
「味」堪能 レジャーも充実
牧場や遊園地…。那須高原はレジャー施設も充実している。
那須ハイランドパーク(TEL.0287・78・1150)は、東日本最大規模の遊園地。10種類のコースターなど、幅広い年齢層が楽しめる40種類以上のアトラクションをそろえている。高さ57メートルの大観覧車は、那須連山や関東平野を見わたす360度の景色を満喫できるとあって人気が高い。
山野草が植えられた広い敷地にはニジマス釣りができる渓流体験ゾーンや天然温泉の足湯も整備され、ことしは11月20日(日)まで利用できる。
「那須の内弁当」
(ル・ロージェ) |
ハイランドパークのすぐ近くにある「TOWAピュアコテージ」(TEL.0287・78・1164)。木立の中、18棟72室のコテージが点在する“森のホテル”だ。美肌・保湿効果に優れた天然温泉の露天風呂でのんびりできる。
那須高原は米や野菜、果物、肉、生乳など“食材の宝庫”。年間500万人を超す観光客に、その恵みを味わってもらおうと昨年春、誕生したのが「那須の内弁当」(愛称・なすべん)だ。
那須町内のレストランが創意を競う9品のランチプレート(1200円)。数量限定の店が多く「“売り切れ”になる時もある」(TOWAピュアコテージ ル・ロージェ)。しかし、原発事故の後、那須和牛が一時、使えなくなるなど、各店は対応に神経をとがらせざるを得ない状況だ。ル・ロージェ料理長の井上定夫さん(45)は「安全・安心を最優先に、おいしさも追求している」と語る。 |
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【観光の問い合わせ】
(社)那須観光協会 TEL.0287・76・2619 |
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