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さしが入るがさっぱりした壱岐牛。焼肉のほかにもしゃぶしゃぶ、ステーキで味わえる |
壱岐(長崎県)は島全体がパワースポット。人口3万人の島に由緒ある150もの神社があり、古代の息吹をいまだ感じさせる。また、お皿をひっくり返したようななだらかな形状をなす壱岐は、山がちな長崎県では2番目に大きい平野を抱え、農業と牧畜が盛んだ。さらに沖合は日本屈指の漁場であり、新鮮な海の幸が日々水揚げされる。パワースポットと山海の珍味で心も体も壱岐でリフレッシュ。
絶品「壱岐牛」、魚は「背切り」
壱岐は牛の名産地。古くは京の都で牛車を引くなど使役牛として重宝され、現在もやわらかく霜降りになりやすい肉質の良さから素牛(もとうし=肉牛用などとなる1歳未満の子牛)の主産地となった。全国に散らばる名うてのブランド黒毛和牛で実は壱岐生まれのものも少なくない。この由緒ある牛を食べさせてくれるのが芦辺港そばの壱岐牛専門店「味処うめしま」だ。
「壱岐牛はさしが入っている割に脂がさっぱりで甘みがある」とはお店を切り盛りする女将(おかみ)の梅嶋美保子さん(62)。その秘密は、「海に囲まれ自然豊かな壱岐の環境が牛をストレスから解放。さらに潮風の吹く牧場でミネラルたっぷりの飼料を与えているから」とのこと。
ブランドとしての“壱岐牛”は実は新しい。壱岐から出荷した素牛が各地で肥育(素牛を仕入れ、おいしい肉として仕上がるまで育てる)され、「○○牛」としてブランド化されている現状に一石を投じようと、美保子さんの夫・吉男さん(故人)が、1968年に“生産から消費まで”を掲げ牧場を設立、長い試行錯誤を経てついに繁殖から肥育、精肉卸までを地元農協とともに確立したのだ。そして94年、良いお肉を安く地元の人に提供したいとの思いから「味処うめしま」が誕生した。おいしいお肉には一人の男の情熱があった。
毎週水曜定休。営業時間は午前11時半〜午後3時、午後5時半〜10時。特選カルビ定食2100円〜。TEL.0920・45・3729
波の高い玄界灘で育ったアワビは身がしまり、歯応えが良い |
壱岐の浮かぶ玄界灘は暖流と寒流がぶつかり合う上に大陸棚も多いことから、沿岸部のアワビやウニ、サザエ、沖のイカ、ブリ、マグロなど、1年を通じて豊富な漁獲量を誇る。
そんな海の幸を思う存分食べさせてくれるのが郷ノ浦港に程近い郷土料理店「お食事処 太郎」。「アワビは1年中、秋から冬はヒラス、カツオ、マグロがおいしい」と教えてくれたのはご主人の大野太郎さん(65)。海運会社を経営するも倒産、後に包丁一本で再起した波乱の経歴を持つ料理人だ。
壱岐の人は新鮮な刺し身を“背切り”で食べることが大好きだ。三枚におろすことなく身の部分を背骨ごとぶつ切りにしたワイルドなさばき方だが、薄く切るには料理人の腕が試される。「観光に来た人にもお薦めしている。骨があると敬遠される人もいるが、たいがいは歯応えがあっておいしいと言ってくれる」と大野さんは話す。1人前の値段は、「お客さんの提示したお値段に応じて」とのこと。
定休日は第2、第4日曜。営業時間は午前11時〜午前1時。TEL.0920・47・4038
海が割れ参道が出現。1日のうち干潮時の前後2時間のみ参詣できる |
島全体「パワースポット」
「魏志倭人伝」に邪馬台国とともに紹介された壱岐は、古代よりの信仰がいまだ濃厚に残る島。神道発祥の地とされる月読神社や神功皇后ゆかりの住吉神社など古代の神社総覧「延喜式神名帳」にも記された古い社が島のあちこちに鎮座する。
中でも神秘的なのが芦辺町の内海(うちめ)湾に浮かぶ小島神社。ご神体は文字通り小さな島そのもの。だが、干潮時には映画「十戒」のごとく海が割れ参道が出現。ただ島全体が神域のため島内の物は小枝すら持ち帰ることは許されない。
事前に潮位を確認してから参詣のこと。問い合わせは壱岐市観光協会 TEL.0920・47・3700 |
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