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佐波理綴の打ち掛け「紫炎孔雀文」。オーストラリアブラックオパールの色合いを美しいクジャクの羽根色に重ねた名品。写真では分かりづらいが、見る角度によってオパールのような色が変化する |
帯のほか、草履の鼻緒なども佐波理綴 |
“織物の本場”京都で生まれた、オーロラ色に輝く織物「佐波理綴(さはりつづれ)」。30日(火)から銀座・東京セントラル美術館で「佐波理綴30年の歩み展」が開催される。「織物の宝石」とも称される佐波理綴とはどんなものか、一足先に見てみようと京都を訪ねた。
「見る角度によって色が変化するでしょ」。佐波理綴の生みの親、佐波理綴国際振興会代表で(株)佐波理(京都市北区)社長の池口定男さん(76)は説明する。池口さんが手にした帯を傾けると、瞬時に紫や赤など多彩な色合いに変化する。図案の良さも相まってか、美しさが際立つ。
池口定男さん |
池口さんが佐波理綴に取り組んだきっかけは約40年前にさかのぼる。自分の作ったきものを着たモデルがきものショーに出演した時のこと。客席の照明が暗くなった途端きものから華やかさがなくなり、暗く沈んだ色合いになってしまった。ショックを受けた池口さんはそれ以来、「光」「輝き」をテーマに試行錯誤を重ね、「光を失わない織物」にたどり着いた。
「輝く織物」のヒントはダイヤモンド。ダイヤが少しの照明でもキラキラ光るのはダイヤモンドカットといわれる角度があるから。池口さんはこれをヒントに、織物の表面に角度をつけることによって、ほのかな明かりでも輝きを失わない織物の開発に成功した。
「織物には長い伝統があります。しかし、昔からあるということと現代に合うということは違うと思います」と池口さん。「例えば、きものにしても電気が発明される前からありますので、そもそも電灯の光を想定していません。私は電気がもたらす明かりにも映える織物が作りたかったんです」
池口さんが考え出した「角度をつける織りの技法」は現在までに12の特許を取得し、2002年には(社)発明協会から発明奨励賞を贈られたほど。
池口さんの創作意欲は衰えない。「古いものをコピーすることが伝統を守ることだとは思いません。芯の部分をしっかり持ちつつ時代に合わせていくことが大切だと思います」。東京で開催する展覧会には、袋帯などえりすぐりの約80点を展示する予定だ。 |
「佐波理綴30年の歩み展」
30日(火)〜9月4日(日)、東京セントラル美術館(銀座貿易ビル5階、地下鉄銀座一丁目駅徒歩1分)で。
きものや帯、インテリアなど佐波理綴の名品約80点を展示する。華道家・假屋崎省吾氏とコラボレーションしたスペシャル展示も。午前10時〜午後6時。一般600円(大学生以下無料)。
問い合わせは(株)佐波理 TEL.075・493・8857 http://www.sahari.co.jp/ |
話題のおすすめスポット紹介
京都文化博物館別館 |
京都の“ほんまもん”実感
ことし7月にリニューアルオープンしたばかりの京都文化博物館。「“ほんまもん”の京都」をテーマに貴重な資料を分かりやすく展示している。
特に150インチの大画面を4つ配した「ビジュアル歴史絵巻」は壮大だ。現存する絵巻などを基に平安、鎌倉、室町、江戸それぞれの時代の京都を紹介。一遍上人が説法する様子(鎌倉時代)や京都の街中で釣りをする人(室町時代)など各時代の風俗がよく分かって楽しい。このほか、戦前の祗園祭や時代祭を撮影した貴重な記録映像なども。料金は総合展示・一般500円(特別展は別途料金)。月曜休館。
また、重厚な同博物館別館は、旧日本銀行京都支店(明治39年建築)を修理復元した国重要文化財だ。見学は無料。
京都文化博物館 TEL.075・222・0888
アクセス:地下鉄「烏丸御池駅」下車、5番出口から徒歩3分。
香道を体験
室町時代に花開いた香道。香木の香りをさまざまに味わう、奥深い優雅な遊びだ。創業400余年の香老舗「薫玉堂(くんぎょくどう)」では毎月1回程度、「聞香体験」を開催している。午前10時と午後2時の2回(各90分程度)。お香の聞き方(嗅ぎ方)や作法などを気軽に体験できる京都ならではの企画だ。
「最近は本物志向のお客さまが多いようです。お香の体験は、庭に面した本格的な香室で行います。ぜひご参加を」と同社代表取締役の負野和夫さん(50)。体験料は2500円(抹茶、菓子、土産付き)。
“本願寺御用達”の同店は、1階で仏事用品、2階で香炉や匂い袋などを販売している。
薫玉堂 TEL.075・371・0162
アクセス:JR京都駅から徒歩15分(西本願寺の真向かい)。 |
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