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浄楽寺の運慶作の仏像(イラスト提供:スタジオ・ペーパーランド)。実物は見てのお楽しみ! |
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全国に18体(真作)しかないといわれている運慶の仏像。神奈川県横須賀市芦名の金剛山勝長寿院大御堂浄楽寺(以下=浄楽寺)には、そのうちの5体がある。通常は年に2回しか公開されないが、「定年時代」横浜・川崎版100号記念企画として6月に小紙読者を対象に浄楽寺を巡るツアーを開催する。この機会にぜひ拝観してみよう。また、横須賀市の西海岸はまだ手あかのついていない力強い自然風景が残されている。多くの文化人が余生を過ごしたこの地の魅力を紹介する。 |
秘蔵の5体、浄楽寺に
浄楽寺 |
浄楽寺は、もともとは源頼朝の側近であった武士・和田義盛が建てた阿弥陀(あみだ)堂だった。和田氏が北条氏との戦いに敗れた後、鎌倉・材木座にある光明寺の寂恵上人が開山し現在に至っている。ここに阿弥陀如来坐像をはじめ、運慶作の仏像が5体ある。
ではなぜここに運慶の仏像があるのか?
横須賀市在住の郷土史家の辻井善彌さん(79)は、「北条氏と和田氏はライバルでしたので、北条時政が伊豆に願成就院を建立しそこに運慶作の仏像を入れたのを知って、和田氏はそれなら自分もと阿弥陀堂を造り、仏像を運慶に依頼した、といわれています」と、現在一番有力視されている説を教えてくれた。
辻井善彌さん |
長年人目にさらされていなかったためか、浄楽寺の仏像の状態はかなり良い。「この状態の運慶作仏像が5体もそろうところは、全国的にも浄楽寺だけだと思います」と辻井さんは胸を張る。
運慶の仏像の特徴は、リアルさと重量感だ。5体のうち、特に昆沙門天立像にそれがよく表れており鋭い目線、鎧(よろい)や布地の下の筋肉の力強さ、肩や腕の肉付きの写実さに圧倒される。京都の仏像に比べてやぼったいともいえるが、この力強さが武士好みだったのだろう。
百聞は一見にしかず、ぜひ拝観してみよう。
個人で行く場合、JR逗子駅バスターミナル2番乗り場から「長井」行きなどのバスに乗り、バス停「浄楽寺」で下車。仏像拝観は10人以上から。事前に申し込みを。保存のため雨天は拝観不可。拝観料400円(案内付き)。一般公開は毎年3月3日と10月19日の年2回。問い合わせはTEL.046・856・8622 |
秋谷海岸 |
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西海岸、雄大な自然景観
横須賀というと観音崎や軍港などがメジャーだが、西海岸にはまだ未開発の雄大な景色も多い。人の応対も気持ちがよく、温暖な気候と新鮮な魚などの食材も豊富なことから、前島密や女優の沢村貞子ら余生をこの地で過ごした著名人も多い。歩いて楽しい道が多いことも、彼らを魅了した理由の一つだといわれている。
浄楽寺付近には短いウオーキングコースもある。そのうち「前田川遊歩道」は、浄楽寺を出て国道134号線を逗子方面に戻り、前田橋の信号で右手に入る。橋の横の階段を下りれば遊歩道がある。川のせせらぎを聞きながら20分ほど歩くと車道に出るので、左に行けば先ほどの前田橋に戻る。1時間もかからない手軽なコースだ。また、近隣には江戸時代の長屋門が残る邸宅がある。辻井さんによると、ここが秋谷村だった当時の名主、若命(わかめい)家の自宅で、泉鏡花の小説「草迷宮」で主人公が暮らす屋敷のモデルになったという。
また134号線を渡って海に出れば、秋谷海岸に。歌川広重の浮世絵にも登場する立石公園まで歩いても。 |
佐島で地魚を
新鮮な魚が目当ての人は、ぜひ佐島へ。佐島港直送の地魚が都心では考えられない価格で販売されている。特に佐島のタコは全国的に有名だ。また、湘南シラス、サザエなども人気。クール宅急便サービスのある鮮魚店もあるので、気軽に購入できる。
佐島からは1時間半に1本の割合で逗子駅までバスが出ている。また134号線に戻れば、逗子行きのバスは頻繁につかまる。
道案内も兼ねたボランティアガイドを頼むのもお薦め。料金は人数に応じて異なる。問い合わせは横須賀市観光協会TEL.046・822・8256 |
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【運慶】
鎌倉時代に活躍した仏師。代表作は、東大寺南大門の金剛力士像や興福寺北円堂の無著・世親像など。まるで生きているかのような写実性と重量感のある作風が特徴。 |
6月1日(水)に日帰りバスツアー (海沿いの絶景レストランランチ付き)
横須賀市観光協会は「定年時代」横浜・川崎版100号を記念し、6月1日(水)に日帰りバスツアー「秘蔵の運慶に出会う旅—海沿いの絶景レストランランチ付き」を実施。参加者を募集する。
当日は、NHKドラマ「坂の上の雲」の舞台でもある世界三大記念艦「三笠」を見学後、軍港クルーズを体験。横須賀市西海岸の絶景を眺めながら「葉山ゲストハウスC33」で昼食後、浄楽寺で仏像拝観(ガイド付き)。佐島でしらす直売所などへ立ち寄り後、帰路へ。
当日は午前8時、JR東京駅集合。ガイド付き。雨天決行。料金は8900円(ランチ、資料、保険代含む)。最少催行人数30人。先着順。
主催・横須賀市。
問い合わせ・申し込みは(株)JTB法人東京 法人営業横須賀支店 TEL.046・824・4216 |
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