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「世界遺産の菅沼合掌造り集落。 集落に足を踏み入れると自然と心が落ち着く |
合掌造り集落が世界遺産に登録されている富山県・五箇山(ごかやま)。同地には、「こきりこ」など多くの民謡や、あつい信仰心に育まれた報恩講(ほうおんこう)料理、歯応えが特徴の「五箇山とうふ」など、地域の暮らしに根付いた力強い素朴さが色濃く残っている。そんな“日本の原風景”に出合おうと、五箇山(南砺市)を訪ねた。
“陸の孤島”の世界遺産
岐阜県・白川郷とともに1995(平成7)年、ユネスコの世界遺産に登録された「白川郷・五箇山の合掌造り集落」(文化遺産)。五箇山では相倉(20棟)と菅沼(9棟)の集落が選ばれている。
日本有数の豪雪地の工夫が生かされた合掌造り。急勾配の屋根が合掌した時の手の形に似ていることからその名がついた。屋根の勾配は約60度で断面は正三角形に近く、降り積もった雪が滑り落ちやすい形になっている。くぎや金具を使用せず木と荒縄で組まれた住宅は、約100〜200年前のものが多く現存する。
山深い五箇山はかつて“陸の孤島”と呼ばれ、江戸時代には加賀藩の流刑地にもなっていたほど。また同地は戦国時代から、火薬の原料となる塩硝作りが盛んで、集落には塩硝製造の設備を持つ家も多い。人の行き来も少なく隠密裏の製造に適していたためか、江戸時代には“加賀藩の火薬庫”として藩を側面から支えた。
国重要文化財に指定さ れている村上家の外観 |
108枚のヒノキ板を編み合わせた楽器「ささら」を鳴らし民謡「こきりこ」を披露する村上忠兵衛さん |
国指定重要文化財の「村上家」(TEL.0763・66・2711、入館料300円)は、約400年の歴史を持つ、五箇山の代表的な合掌造り家屋だ。屋内を自由に見学できるほか、塩硝製造などの民俗資料も。また、いろり端では同家当主・村上忠兵衛さん(63)が五箇山の説明や最古の民謡ともいわれる「こきりこ」を聞かせてくれる。
岐阜県・白川郷とともに1995(平成7)年、ユネスコの世界遺産に登録された「白川郷・五箇山の合掌造り集落」(文化遺産)。五箇山では相倉(20棟)と菅沼(9棟)の集落が選ばれている。
日本有数の豪雪地の工夫が生かされた合掌造り。急勾配の屋根が合掌した時の手の形に似ていることからその名がついた。屋根の勾配は約60度で断面は正三角形に近く、降り積もった雪が滑り落ちやすい形になっている。くぎや金具を使用せず木と荒縄で組まれた住宅は、約100〜200年前のものが多く現存する。
山深い五箇山はかつて“陸の孤島”と呼ばれ、江戸時代には加賀藩の流刑地にもなっていたほど。また同地は戦国時代から、火薬の原料となる塩硝作りが盛んで、集落には塩硝製造の設備を持つ家も多い。人の行き来も少なく隠密裏の製造に適していたためか、江戸時代には“加賀藩の火薬庫”として藩を側面から支えた。
国指定重要文化財の「村上家」(TEL.0763・66・2711、入館料300円)は、約400年の歴史を持つ、五箇山の代表的な合掌造り家屋だ。屋内を自由に見学できるほか、塩硝製造などの民俗資料も。また、いろり端では同家当主・村上忠兵衛さん(63)が五箇山の説明や最古の民謡ともいわれる「こきりこ」を聞かせてくれる。 |
赤尾館の報恩講料理。豆を好んだという親鸞聖人を思い、あずきやジンダなど豆料理も多い |
信仰が育んだ報恩講料理
“山の恵み”たっぷり
五箇山地方には、古くから浄土真宗を信仰する人が多い。信仰心のあつい同地の人々にとって、毎年11月から12月にかけて営まれる「報恩講」(宗祖親鸞の恩に報いる法会)は大切な行事だ。
その際にお膳で食べられるのが報恩講料理。山菜などその年の季節ごとにとれた最良の食材を保存しておき、各家庭が報恩講に合わせ時間をかけて料理するという。お膳には、地元の五箇山とうふや山菜の煮しめ、アオマメをすりつぶしたジンダなどが並ぶ。素朴ながらも質のいい食材を使った、北陸の郷土料理だ。
年間通して提供
五箇山温泉「赤尾館」(TEL.0763・67・3321)では、1年を通じて報恩講料理を食べることができる(要予約)。同館女将(おかみ)の道宗由紀子さん(55)は「北陸でも報恩講料理を作る地域が少なくなっているようです。でもここ五箇山では、田舎のせいかまだ伝統が残っています」と話す。
同館は作家司馬遼太郎の作品「街道を行く」にも登場。司馬は同館滞在の折、「目が醒めれば暦がなく そのあたりは眞青なひかり 赤尾の山の中」と色紙に揮毫(きごう)している。 |
五箇山とうふを持つ「喜平商店」の岩﨑喜平さん。縄で縛っても崩れないほどの密度が自慢 |
食べ応え十分、五箇山とうふ
報恩講料理の“メーンディッシュ”として欠かせないのが「五箇山とうふ」。普通の豆腐に比べて水気が少なくかなり歯応えがあるため、かんでいるうちに大豆本来のうま味が口に広がる。
とうふ工房「喜平商店」(TEL.0763・66・2234)の3代目岩﨑喜平さん(60)は説明する。「遣唐使から伝えられたという豆腐は、もともと堅(かた)豆腐だったそうです。五箇山は“陸の孤島”だったので、豆腐本来の姿がそのまま残ったのでしょう」。同商店の五箇山とうふ(約800g、400円)は地元産の大豆と伏流水を使ったこだわりの逸品だ。冷ややっこや田楽はもちろん、バターしょうゆで食べる豆腐ステーキも絶品だとか。
「山の中にも磨き上げられた味や食があることを知ってほしい」と岩﨑さん。同商店では、豆乳ソフトクリームや珍しい豆腐の薫製なども販売しているほか、豆腐作りや五箇山の食文化についての説明にも対応する。 |
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交通アクセス・五箇山観光全般の問い合わせは五箇山総合案内所
TEL.0763・66・2468 |
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