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大地の恵み、海の幸…いつもと違う旅 和歌山/那智勝浦 |
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「まぐろ体験CAN」でのツナ缶作り。マグロの身を3つの缶に分け、綿実油を加える |
オリジナルラベルを貼ってツナ缶が完成 |
南東が熊野灘(なだ)に面する和歌山県那智勝浦町。世界遺産(文化遺産)の熊野古道で知られるが、天然の良港・勝浦漁港もぜひ訪ねたい。近海や遠洋漁業の基地で、朝はマグロなどの水揚げで活気づく。マグロの漁獲高は日本有数。那智勝浦ならではの楽しみとして、マグロの缶詰作りに挑戦したほか、清流に育まれた酢の醸造元にも足を運んだ。いつもと違う旅を体感—。
マグロ缶作り
勝浦漁港にある「まぐろ体験CAN」は、“ツナ色”をした外観の建物。ここで紀州勝浦産マグロを使ったオリジナルのツナ缶作りに挑戦した。ガラス戸を開けて中に入ると、インストラクターの山井真弓さんと西美由紀さんが、にこやかに迎えてくれた。
手を洗いエプロンなどの身支度を整え、作業台へ。あらかじめ蒸し器で蒸されたマグロの皮と血合いを除き、1cm角のサイコロにカット。3つの缶に130gずつ入れた上、綿実油と塩を加え、真空巻き締め機で缶のふたをする。さらに高温高圧調理殺菌装置で殺菌消毒。待つ間、パソコンでオリジナルラベルを作製する。殺菌消毒が済んだ缶にラベルを貼れば出来上がり。どこにも売っていない、自分だけの旅の思い出と味がグッと詰まった缶詰の完成だ。
ホテルに入る前に、“まぐろづくし”で遅い昼食を済ませ、町中をブラブラ歩く。勝浦は岸辺に湯が湧き出す、まさに海の温泉郷。漁港近くにも「鮪乃湯」と「海乃湯」という2つの足湯があった。海乃湯には手を入れる浴槽もあり、冷えた手先がジワーッと温まった。やがて、黄昏(たそがれ)とともに、海辺の宿には灯籠のように明かりが満ちて、それが波間にこぼれてかすかに揺れる。そろそろホテルに向かう時間だ。
宿泊したホテル浦島(TEL.0735・52・1011)の「忘帰洞」は、天然の洞窟を生かした“海の温泉”。 |
杉桶を使い、酢を醸造熟成させる。桶の木の目を通し、酢が5%蒸発するが、納得する酢の香りが得られるという=丸正酢醸造元 |
酢の醸造元へ
翌朝は温泉に漬かり体を目覚めさせた。朝食後、丸正酢醸造元(TEL.0735・52・0038)へ。JR紀伊勝浦駅から車を5分程走らせると、大きな蔵のある建物が見えてくる。創業は1879(明治12)年。那智滝と同じ水源の熊野山系の伏流水を使い、杉桶(おけ)を用いるなど、こだわりの古式醸造を伝承している。原料には、自家田などで低農薬栽培した米を使用している。
3代目社長の小坂晴次さん(83)は酢造り職人でもあり、醸造蔵に入る時は、入り口の神棚に手を合わせ、ほら貝を吹き、拍子木を打つ。「酢は生き物。自然と語り合う心構えが必要です」と言う。12の杉桶が並ぶ醸造蔵の照明は、窓明かりだけ。それぞれの杉桶には、相撲好きだった祖父の代から横綱の名前が付けられている。
小坂晴次さん |
夜、小坂さんは酢を発酵させる温度に保つため、「こも」をかぶせた桶を、懐中電灯でのぞきながら“酢が発する声”を確認するという。酢が熟成するまで長い時は500日以上、それを毎日欠かさない。防腐剤や薬品類を一切使用しない、手造りに徹する心意気が全国にファンを持つ理由だ。
帰りに、最高品質のもち玄米だけで造った黒酢「那智黒米寿」を買った。コクのあるまろやかな味は酢調味料として、どんな料理にも合うという。 |
【世界遺産・熊野】
熊野灘を見下ろす那智山は“千古不伐”のうっそうと茂る原始林に包まれた一大聖地。「日本一」の落差133mで有名な那智滝=写真、熊野詣ででにぎわった那智大社、西国三十三カ所第一番札所の青岸渡寺、補陀洛(ふだらく)渡海の話を伝える補陀洛山寺などは、世界遺産(文化遺産)に登録されている。
古代につながる信仰と歴史が今も脈々と流れ続けるパワースポットとして人気が高い。 |
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【観光の問い合わせ先】
那智勝浦町観光協会 TEL.0735・52・5311
勝浦漁業協同組合(まぐろ体験CAN) TEL.0735・52・0977 |
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