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善知鳥神社が所蔵している志功の作品 |
“世界の板画家”棟方志功(1903〜75)は生まれ故郷の青森市を愛し、「板画」と称した独自のスタイルによる木版画のほか、油絵や倭画(やまとが)、書、詩歌など数々の作品を残した。同市内では、志功のルーツを巡る街歩きツアーをはじめ、志功や太宰治らが好んだ津軽の味を「津軽文人懐石」として提供している。ゆかりの温泉宿や美術館では、“描く喜び”に満ちた志功の作品を数多く鑑賞できる。
あおもり街てく
「わだば(私は)ゴッホになる」。鍛冶屋の家に生まれた志功は油彩画家を志して上京。その後、独自の板画世界を歩み始め、「民芸運動」の柳宗悦らに見いだされた。宗教・自然・文学を題材に、従来の版画の概念を打ち破る、雄大で独創的な作品を作り続けた。
そんな志功の原風景をたどるのが、地元シニアガイド(約40人が登録)の案内で市内を歩く「あおもり街てく」だ。見て、食べて、触れる|。港町青森の景観や市民の台所「古川市場」を巡るなど、現在3コースを実施。今回は棟方志功と青森市のルーツを歩く「歴史と文化コース」(2.5キロ、約2時間15分)へ。
青森市発祥の地といわれる善知鳥(TEL.017・722・4843)は志功の生家に程近い。少年時代、スケッチに通ったり、好物の津軽あめを食べたりという思い出の場所だ。ねぶた好きだった志功。「祭りの後、酔っ払って神社の沼に落ちたこともあったようです」と話すのはあおもり街てくガイドの阿部儀孝さん(63)。ここで祝言も挙げた志功は神社に「うとうの図」など自作を贈っている。社務所に予約すれば、作品を鑑賞することも。
「街てく」は毎週金〜日曜・祝日。参加費無料。 |
「日本料理 百代」の「津軽文人懐石」 |
津軽文人懐石
太宰治や寺山修司など津軽が生んだ文人の愛した郷土料理を現代風に再現した「津軽文人懐石」。東北新幹線全線開業に合わせ、市内6店舗で始まった。
マダラのじゃっぱ汁や昆布締めなど、「今でも食べられている家庭の味。この時季、青森に来ないと味わえない新鮮なタラを1匹くまなく使いました」と話すのは、「日本料理百代」料理長の浪内通さん(58)。中でも山菜や野菜を細かく刻んだ「けの汁」、バター焼きで出される干しもちは志功の好物だ。
コース料理は8000円。通年で提供している。 |
志功の作品鑑賞
【棟方志功記念館】
代表作「釈迦十大弟子」をはじめ、数多くの志功作品(184作品・777点)を所蔵する同館(年4回展示替え)。館長補佐の武田公平さん(61)は、「志功さんは板画では白と黒色のバランスの美しさを追求し、倭画では流れるような線、豊かな色彩で表現した」と話す。上京し、海外で認められ、「逆輸入」という形で評価された志功。「青森市初の名誉市民賞を受賞したときはうれしかったはず」と武田さん。同館では3月13日(日)まで、冬の展示「棟方志功の倭画」を開催中。
【青森県立美術館】
棟方志功展示室として、志功作品を常設展示(年4回展示替え)。大展示が可能な県立美術館ならではのダイナミックな志功作品が鑑賞できる。
【浅虫温泉 椿館】
志功ゆかりの宿として知られる「椿館」。41(昭和16)年ごろから亡くなる前年まで、志功は毎年夏になると家族で同館に滞在した。「お湯に浸り、体を清めてから筆を執っていたようです」と話すのは同館代表取締役の蝦名幸一さん(70)。同館では書や絵などの志功作品を展示している=写真。 |
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【観光全般・街てく・津軽文人懐石の問い合わせ】
青森市観光交流情報センター TEL.017・723・4670 |
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