|
弥生時代の建物群が復元された原の辻遺跡の中心域は、復元公園として一支国博物館と同時オープンした。環濠や墓域の復元も予定されている。遺跡に近い丘陵に博物館(写真奥)が建つ |
|
体感型の博物館オープン
“海の王都”、原の辻遺跡を一望
魏志倭人伝の「一支国(いきこく)」へ—。大陸と日本を結ぶ“海の架け橋”になった長崎県・壱岐島(いきのしま)。島内の「原(はる)の辻遺跡」は、一支国の王都に特定された弥生時代の大規模集落跡だ。遺跡を間近に見下ろす丘陵に3月、壱岐市立一支国博物館がオープンした。“見て聞いて触れる”体感型施設。美しい海岸と海の幸、温泉に恵まれた島に、古代ロマンを凝縮した新たな魅力が加わった。
弥生時代の海の王都—。原の辻遺跡は二重・三重の濠(ほり)を巡らせた環濠(かんごう)集落で、1キロ四方の広さを持つ。対馬国、奴国、邪馬台国…。魏志倭人伝には2000年近く前の“国々”が記されているが、王都が特定されたのは一支国だけだ。
|
一支国博物館 |
決め手の一つは1996(平成8)年に発見された日本最古の船着き場跡。大陸との交易を示す遺構で、一支国博物館学芸員の松見裕二さん(34)は「環濠の規模や出土品の質量を考え併せ、(王都の)特定に至った」と説明する。00年には「遺跡の国宝」に当たる国特別史跡に。壱岐市は弥生時代の地形を再現し、高床主祭殿や平屋脇殿など17棟を復元している。
原の辻遺跡から出土した国内唯一の人面石 |
|
遺跡も展示物
一支国博物館の建物は、黒川紀章の国内の遺作。芝の緑が美しい屋根は敷地の丘陵の稜線(りょうせん)に合わせ、なだらかな曲線を描く。一方、館内は最新の映像・音響技術を生かした「新感覚ミュージアム」。目の前に広がる原の辻遺跡を展示物の一部に見立てたビューシアターの仕掛けは、訪れる人を驚かせる。復元された古代船に乗れる「海の王都・原の辻」、床下模型とCG映像でバーチャル体験を演出する「古墳の世界」など、エンターテインメント性に富んだ展示構成だ。出土品の一部には触ることもできる。
また、同館は長崎県埋蔵文化財センターを併設している。高さ5㍍に及ぶガラス張りの「オープン収蔵庫」。膨大な出土品を見ることができる。
【一支国博物館】
入館料:一般400円。6月20日(日)まで、開館記念特別企画展「『魏志』倭人伝の国々に残る至宝展」を開催。TEL0920・45・2731
http://www.iki-haku.jp/
|
田口 勇さん |
神社、古墳…古代史ぎっしり
東西15キロ・南北17キロの壱岐は“古代史ぎっしり”の島。「日本神道発祥の地」といわれる月読神社など1000以上の神社・祠(ほこら)に加え、250基を超す古墳も点在する。「くり抜き式家形石棺」が発見された掛木古墳など、古墳の多くは6世紀後半〜7世紀前半の築造。大陸、朝鮮半島との関係が緊張した時代背景の下、ヤマト政権が、国威をアピールした証しと考えられる。
50〜70代の住民でつくる「壱岐しま自慢プロジェクト」は、史跡ガイドを務めるNPO団体。理事長の田口勇さん(70)は「(壱岐の古墳の)石室や副葬品は、大和地方と並ぶ高い水準」と話す。 |
|
【おすすめ情報】
変化に富んだ海岸線、海の幸、いで湯…。壱岐の魅力は史跡にとどまらない。
▽海岸線=奇岩「猿岩」、「ゴリラ岩」や波の浸食でできた「鬼の足跡」などの景観が有名。
▽勝本朝市=壱岐の北部・勝本漁港近くの路上で毎朝、漁師の家や農家の女性たちが魚介類や野菜、手作りの加工品を販売。安さと鮮度が自慢。
▽湯ノ本温泉=鉄分を含む赤褐色の食塩泉。肌がすべすべになる“美人湯”と評判。
▽イルカパーク=イルカショーやイルカとの触れ合い体験。
▽壱岐神楽=島内の神主だけが継承する神事芸能。国重要無形民俗文化財。予約すれば見学できる。
【観光の問い合わせ先】
壱岐市観光協会TEL0920・47・3700 |
|
| |
|