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頭ヶ島教会は全国でも珍しい石造りの教会。信者たちが7年の月日をかけ、自ら切り出した砂岩を積み上げて造った。内部は船底天井に花柄をあしらい、優しい雰囲気だ |
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長崎県の西端に浮かぶ五島列島。その北部に位置する上五島(新上五島町)は7つの有人島と60の無人島から成る“祈りの島”だ。総面積213.97平方キロメートルの島内には29の教会群が点在し、中には世界遺産登録候補の教会も。同地には“幻”といわれた「五島うどん」をはじめ、海産物や焼酎、椿(つばき)油など滋味豊かな逸品も多い。
☆信仰の証し
遣唐使船の寄港地になるなど大陸交流の拠点として栄えた上五島。リアス式海岸特有の自然美に恵まれ、同島のほぼ全域が西海国立公園に指定される。島内にはカトリック教会や寺社などの建造物をはじめ、神楽や念仏踊り、捕鯨文化を伝える伝統行事など独特の地域文化が息づく。
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「水鏡の教会」とも呼ばれる中ノ浦教会のライトアップは幻想的 |
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中ノ浦教会内部。列柱上部の白壁には五島の花「椿」をモチーフにした装飾がある |
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中でも29の教会群は信仰を守り続けてきた人々の祈りの証し。300年という幕府の厳しいキリシタン弾圧に耐え、1873(明治6)年の禁教令廃止とともに一気に設立が進んだ。2007(平成19)年1月には「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界遺産の暫定リストに掲載、同島の頭ヶ島教会と青砂ヶ浦教会(ともに国指定重要文化財)が“明日の世界遺産”として明記されている。
ステンドグラスや列柱の装飾など建築物としての価値はもちろん、教会巡りで体験したいのが、それぞれの教会が持つ独特の静寂感だ。同町観光物産課長の中島紀昌さん(55)は「上五島は長崎県の中でもモデルになる教会が多く、巡礼の場として理解と協力をいただいています。教会は観光施設ではなく祈りの場。生きている信仰と祈りをぜひ肌で感じてください」と話す。
初めての人は教会ガイド(6時間6000円)の利用を。八角形ドーム型の鐘楼を持つ大曽教会(県指定文化財)や「水鏡の教会」とも呼ばれる中ノ浦教会など同島の教会は入り江に建つものが多く、教会群と海辺が織り成す美しいコントラストも上五島の魅力だ。
12月には6夜連続で「チャーチウィークin上五島 教会コンサート」(会場は青砂ヶ浦教会など)が開催。ライトアップされた教会とクラシックコンサートは女性に人気だという。
五島手延うどんの「地獄炊き」 |
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田邊鈴子さん |
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☆“幻”のうどん
旬の魚とともに上五島でぜひ食べたいのが、大陸からその製法が伝えられたという「五島手延うどん」だ。
ミネラル豊富な海水塩や特産の椿油など五島の滋味が凝縮された逸品で、コシのある細麺(めん)とのどごしの良さが特徴。流通量の少なさから、かつて「幻のうどん」とも呼ばれたが、現在島内のうどん製麺所は約30軒に増加。
「各家庭に“ひいき”の麺があります。冬場は鍋にも入れますが、麺を味わうなら『地獄炊き』で」と同町観光物産協会総務係長の田邊鈴子さん(58)。
食べ方はシンプルでゆでたてのうどんを特産のアゴ(トビウオ)のだし汁で食べる、つけ麺スタイル。シコシコとしたうどんの食感がだしのうま味と調和して絶妙だ。有川港すぐの「五島うどんの里」ではうどん作りの見学や体験も(要予約)。
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★おすすめ情報★
【矢堅目の駅】
五島近海の自然海水だけで精製した天然塩をはじめ、上五島の名産品を販売。同所近くの矢堅目公園は、円錐形の奇岩と複雑な海岸線が美しく、オニユリの群生地でもある(見ごろは6〜7月)
【五島灘酒造】
原料に上五島で収穫されたサツマイモのみを使用した本格芋焼酎「五島灘」(素朴でやさしい口当たりが特徴)を製造。
★アクセス★
長崎港、佐世保港などから高速船で約90分。
★問い合わせ★
新上五島町観光物産協会:TEL0959-42-0964/HP:(http://official.shinkamigoto.net/) |
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