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古文書を吟味し再現した忍者道具の数々を紹介する福井さん |
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新名神高速道路の開通でアクセスが飛躍的に便利になった南滋賀の歴史の里・甲賀。忍者のからくり屋敷や古刹(こさつ)の美しい庭園など、歴史ロマンあふれる町並みを散策した。
甲賀流忍術屋敷
近江(滋賀県)南部は険しい山里。昔から山伏や虚無僧(こむそう)などの隠れ里だった。こうした人々が戦国の世に歴史の裏舞台を駆け抜けた。これが服部半蔵らの伊賀(三重県)と並び称された甲賀忍者の正体。しかし後世、猿飛佐助ら人間離れした架空のキャラクターが忍者として講談を舞台に大活躍。
これら世に伝わる忍者伝説の発祥地であり、かつ現在歴史的視点から光をあてる忍者博物館となっているのが、甲賀流忍術屋敷(甲賀市甲南町)だ。
忍術屋敷は甲賀忍者筆頭・望月出雲守家のもの。約300年前に建てられ、内部は望月家当主以外には秘密にされていた。この屋敷が戦後、郷土史家により“発見”され、昭和30年代には全国で忍者ブームが巻き起こった。かの司馬遼太郎も訪れたとか。
外からは普通のかやぶき民家としか見えない屋敷の内部には隠しはしごや落とし穴など、からくりがいっぱい。忍者アトラクションに欠かせない「どんでん返し」もこの屋敷が発祥だ。
忍術屋敷の代表を務める郷土史家の福井實さん(79)は、「屋敷中のからくりは隠れて息をひそめるもの。忍者とは“隠”の一字。情報を持ち帰りお金に換える忍者が戦うのはフィクションの中だけ」と通説をピシャリ。
また展示されている手裏剣や煙玉などの武器もすべて古文書を基に再現したもの。「甲賀の自然は薬草の宝庫。もともと薬剤を取り扱っていた山伏が火薬も扱うようになり忍者となったのでは?」というのが、置き薬販売を長年務めてきた福井さんの推理だという。
甲賀流忍術屋敷
開館時間:午前9時〜午後5時。年末年始以外は無休。
料金:大人600円。
問い合わせ:TEL0748-86-2179 |
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大池寺蓬莱庭園
((C)びわこビジターズビューロー)
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大池寺蓬莱庭園
天平時代、大仏建立に協力した行基に由来するという臨済宗の古刹・大池寺(甲賀市水口町)。周囲にある4つのため池のほぼ中央に位置する本堂からは、見る者の目を癒やす数々の庭園の美を楽しむことができる。
中でも目を引くのが書院の正面にある蓬莱庭園。江戸初期に数々の名庭園を作庭した小堀遠州の手による枯山水庭園と伝えられ、サツキの大刈込みにより7つの石(宝)を載せた宝船を表現。見る者を圧倒する。
住職の清水寿晴さん(45)は、「小さな庭だが、型にはめて説明することができない強いインパクトを持つ。初めて来た人は絶対驚きます」とにやり。庭園を愛(め)でながら抹茶を楽しむこともできる。また仏間に鎮座する、行基が彫ったと伝わる金色の本尊釈迦如来坐像も圧巻だ。
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大池寺蓬莱庭園
拝観料:400円。抹茶は別料金で300円(団体は予約必要)。
問い合わせ:TEL0748-62-0396 |
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「忍者御膳」 |
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塩野温泉「忍者御膳」
弘法大師が源泉を掘りあてたのが由来という老舗旅館・塩野温泉(甲賀市甲南町)では、忍者の里にちなみ「忍者御膳(ぜん)」が味わえる。御膳として並ぶのはボタン鍋に根菜類、もち米の干し飯、古代米(黒米)のうどん、おはぎなど10の椀(わん)。
支配人の辻邦夫さん(65)は「郷土の素材を生かすとともに忍術の知恵をアレンジした。忍者の携帯食である干し飯や芋、根菜類をメーンとし、見た目は忍者のイメージである“黒”を基調に仕上げた。なぞ解きを楽しみながら食べてもらいたい」と解説。料理の器一つひとつも特注品という凝りようだ。
実は辻さん、地元の忍術研究会に属し、独自に研究を進めるほどの忍者通。同地で開かれた「忍者検定」にも協力したとか。
1泊2食付きで1万2600円〜。また夕食は忍者御膳以外に近江牛のしゃぶしゃぶ、もしくは京風懐石をセレクトできる。
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塩野温泉
問い合わせ:TEL0748-86-2130 |
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