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雄大、悠久 和歌山・南紀の名湯紀行 和歌山県/南紀 |
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川湯温泉「仙人風呂」(C)田辺市熊野ツーリズムビューロー |
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雄大、悠久
和歌山・南紀地方は日本有数の温泉地帯。火山がないのに、なぜか温泉がポコポコわき出る、学者も首をかしげる不思議な場所。保養地としてはマリンブルーの海を望む那智勝浦などが有名だが、“神々の地”熊野の山中も悠久の昔から隠された名湯・秘湯の数々が旅人に癒やしをもたらしてきた。また熊野からほど近い、田辺市上秋津には農業体験宿泊施設「秋津野ガルテン」がオープン。ゆっくりとした時間の流れの中で温かい田舎暮らしが満喫できる。
仙人風呂は1000人分?
温泉地には露天風呂がつきもの。でもここ、川湯温泉(田辺市本宮町川湯)は規模が違う。同地を流れる清流「大塔川」の地下には約200メートルにわたり温泉が流れており、川底の至る所でぶくぶくと湯が噴き出ている。文字どおり「川の湯の温泉」だ。基本的に1年中開放されているが、毎年水量の減少する11月から2月は期間限定で、お湯がわき出る個所をせき止め、延長約50メートル×奥行き約15メートル×深さ約60センチの巨大露天風呂「仙人風呂」としてオープンする。和歌山県および近県では冬の風物詩として親しまれ毎年約10万人が訪れる。
名前の由来は仙人が入っていそうな秘湯とのことだが昔は「千人風呂」と呼ばれていた。ちなみに名前どおり本当に1000人入湯できるか地元の観光協会が10年ほど前に実験したそうだが、500〜600人が入湯したところで規定の時間をオーバー。結局正確なところは分からなかった。川湯に漬かってみると地下を流れる源泉のため、川底の砂利が温かく座っても快適。源泉の温度は約70度だが、川の水により40〜45度に保たれている。
ただ、混浴の上、県道に面しているという衆人環視の環境。水着着用が賢明だろう。県道を挟み旅館が4軒建ち、宿泊客には水着の貸し出しも。
川湯温泉、湯の峰温泉、大日越えに関する問い合わせは熊野本宮観光協会TEL0735-42-0735
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しゅん険な山道の続く「大日越え」 |
熊野古道に信仰の湯
熊野本宮大社と最もゆかりの深いのが、1800年前に発見されたという日本最古級の温泉「湯の峰温泉」。中世には参拝後に湯の峰温泉で旅の疲れを癒やしていたのが、近世になると、大社へ参拝する前に湯垢離(ゆごり)をして心身を清める神聖な温泉に。
この湯の峰温泉と大斎原(旧熊野大社跡地)の間には大日山(標高369メートル)が横たわる。これを結ぶのが「大日越え」と呼ばれる山越えの熊野古道だ。かつては神官や修験僧など限られた人が祭礼などで使う特別な道だった。
現在は誰でも登れるハイキングコースとして開放され、都会からも多くの人が訪れる。
同大社権祢宜(ごんねぎ)の長谷川圭治さん(45)は「都会の人はけん騒を離れ、ただ歩くことによって無になり、体内時計を調整しているのでは」と話す。
農家レストラン「みかん畑」のスローフードバイキングは大人気 |
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地元の食をスローフードで 秋津野ガルテン
温暖な環境の下、1年中かんきつ類が収穫できる田辺市上秋津。昨年11月、その地に廃校舎を利用した農業体験宿泊施設「秋津野ガルテン」がオープンした。
施設の目玉は農家レストラン「みかん畑」のスローフードランチバイキング(大人900円)。登録された地域の主婦ら25人の料理人が、地元で採れる豊かな食材を家庭の味付けで調理。野菜をメーンに、常に30種を用意する日替わりメニューで人々の舌を楽しませる。
宿泊収容人数は34人。宿泊料は部屋チャージ型・4人部屋で大人4人1万4000円(1人での宿泊も可能)。問い合わせはTEL0739-35-1199
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工房では松本さんの作業風景も見学できる |
「一生もの」木の風呂桶
「マイ桶(おけ)」を持っての温泉巡りはどうだろう?
国道311号沿い、熊野古道の通る中辺路町野中の山里に「おけ屋」の看板が。誘われてのぞいてみると気持ちの良いフィトンの香りに包まれる。ここはこの道50年の紀州桶職人・松本次さん(75)の工房「桶」。紀州産のスギ・ヒノキなどを使い、風呂桶をはじめ、おひつ、すしの桶ほか、作れるものはオーダーメードで何でも作るという。
看板を見てふらりと立ち寄った旅人らに好評を博す。理由は材料、そして手作りのこだわり。材料は樹齢80年以上の木材しか使わない。「若い木は腐りが早い」と松本さん。また1つの製品には丸々2日を費やすという。風呂桶の値段は1つ6000円ほどと高めだが、手入れに気をつければ「一生もの」とのこと。「底が通常のものより2倍の厚さがあり、壊れにくい」とか。問い合わせはTEL0739-65-0561
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