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健康長寿のご利益があるとされる長命寺 |
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白洲正子が愛した名刹
健康長寿や勝運のご利益があるといわれる古社寺への巡礼の旅。滋賀県には随筆家・白洲正子(1910〜98)が訪れた名刹(めいさつ)などの記録が書籍に残されている。折しも、08年は西国巡礼中興の祖・花山法皇の一千年忌。これを受けて西国三十三所観音霊場の全札所が10年5月末までの期間、ご本尊を順次開帳する計画だ。白洲の足跡をたどり、ご利益いっぱいの近江路を旅した。
数多くの随筆を残した白洲は、能、骨董(こっとう)などに造詣が深く、“日本古典美の目利き”ともいわれる。名紀行として名高い代表作「かくれ里」「西国巡礼」「近江山河抄」などの取材で、白洲は幾度となく近江を訪れている。
「近江山河抄」で訪れたのが長命寺。同寺は長命寺山(標高333メートル)の山腹(同250メートル)に位置。西国三十三所観音霊場の第三十一番札所だ。琵琶湖岸のそばから800段余り長い石段を上ると、諸堂の屋根が重なり合った美しい線を見ることができる。千手観音(秘仏)を本尊とし、聖観音、十一面観音、毘沙門天など多くの国指定重要文化財が安置されている。
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夫婦和合、ご縁結びのご利益があるとされる太郎坊宮の夫婦岩 |
「かくれ里」で白洲が取材したのが、石の寺「教林坊」と「太郎坊宮」だ。
教林坊は605(推古13)年、聖徳太子によって創建されたという。小堀遠州作の名勝庭園や葺(ふ)き書院など、わびさびの幽玄の世界が広がり、日本美を堪能できる。本尊は聖徳太子自身の作といわれる石仏。二度参りによる心願成就のほか、良縁成就、子授かり・安産祈願の観音として信仰されている。
一方、太郎坊宮は標高350メートルの赤神山の中腹にあり、正式には阿賀神社といい、地元では「太郎坊さん」の名で親しまれている。“どんな事にでも勝つ”勝運の神としてあがめられている同宮は開運厄よけ、ご縁結びなどにもご利益があるとされ多くの人々の信仰を集めている。
参道から本殿に参拝するには約740段の急峻(しゅん)な石段を上らなければならない。本殿の周りにはあちこちに岩座と呼ばれる巨岩や怪石を見ることができる。中でも、本殿前にある高さ数十メートルの巨岩の夫婦岩は圧巻だ。
本殿前の展望台からは、蒲生野の絶景が一望できる。この景色は、万葉の時代に額田王と大海兄皇子が詠んだ激しい恋の相聞歌の舞台でもある。
また、白洲が「西国巡礼」で訪れたのが観音正寺。同寺は標高433メートルの繖(きぬがさ)山の山頂付近にあり、西国三十三所観音霊場の第三十二番札所として知られる古刹(こさつ)だ。本尊は総白檀(びゃくだん)の千手千眼観世音菩薩坐像が安置されている。
「ガチャコン電車」近江鉄道
滋賀県内の歴史ある観光資源を結ぶ“足”としてぜひ利用したいのがローカル電車の近江鉄道。
創業は1896(明治29)年と古く、今年112年目を迎える。琵琶湖の東側に当たる彦根、東近江市を中心に総延長59.5キロメートルの鉄路だ。
のどかな田園地帯を「ガチャコン、ガチャコン」と音をたてて走ることから地元では「ガチャコン電車」と呼ばれ親しまれている。
不老長寿の果実“むべ”
長命寺山のふもとの干拓地で栽培されているのが“不老長寿の果実”「むべ」。近江にゆかりが深い天智天皇がこの実を食べて「むべなるかな(なるほどなぁ)」と言ったとされることからこの名がついたという伝説の果実だ。
アゲビ科の一種で、秋に7〜9センチほどのだ円形をした赤紫色の実を結ぶ。
現在、「むべ」の皮や実を原料にしたあめ、リキュールなどが近江八幡の新しい特産品として注目されている。
(社)びわこビジターズビューロー
TEL:077-511-1530 |
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