「鶴仙渓川床」について説明する田向真木子さんは創業800年の老舗旅館「白鷺湯たわらや」35代女将 |
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1300年以上も前から霊峰白山のふもとにわき出る北陸の温泉郷−山中、山代、粟津、片山津の加賀四湯(石川県加賀市、小松市)は、美しい自然とともに豊富な湯量と泉質の良さを今に伝える。九谷焼発祥の地であり、松尾芭蕉や北大路魯山人など著名文化人ゆかりの歴史文化の“宝庫”でもある。現代の加賀四湯の魅力を知ってもらおうと10月5日(日)まで「加賀四湯博」キャンペーンを展開中だ。緑が輝く加賀四湯の地を巡ってきた。
地の食材、洗練の美味に
山 中
渓谷美の温泉地・山中温泉は、「奥の細道」の長旅に疲れた芭蕉が9日間の長逗留(とうりゅう)をしたことで有名。歴史ある温泉宿「白鷺湯たわらや」の35代女将(おかみ)、田向真木子さん(36)は「昔ながらに各宿が地下5メートルの深さから1馬力のポンプで、自噴に近い形で自家源泉をくみ出しています。(お湯は)カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉で、無色透明、無味無臭の軟らかい泉質として日本有数です」と話す。
温泉街のゆげ街道沿いには、地の食材を使った鍋(道場六三郎氏考案)を1杯100円で提供する「町人旅人亭(まちびとたびびとてい)」がある。また、あやとりはしを渡った鶴仙渓にはこのほど「鶴仙渓川床」が新設された。3畳ほどの川床で渓谷の緑とせせらぎ、それに“道場レシピ”の冷製抹茶しるこを味わっていると都会のけん騒も忘れる。
源泉とうふ作りを体験
片山津
1300年の歴史を誇る山中、山代、粟津に対し明治に温泉地として発展した片山津温泉。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で胃腸病などに効能があるという。「茶房富久紗」では源泉を豆乳に混ぜ、温めて作る源泉とうふ作りを体験できる。毎年夏(8月21日)に柴山潟で打ち上げられる花火は質、量ともに北陸有数の規模である。
現代に復活「大田楽」10月まで「四湯博」
山代
今の加賀四湯の魅力ともいえるのが山代温泉の「山代大田楽」。中世の芸能、田楽を基に現代演劇として野村万之丞が作り上げた。「迫力があってかっこいいですよ。一度見てほしい」と旅館「べにや無何有(むかゆう)」女将の中道幸子さん(49)。夏まつりとして8月10日(日)から24日(日)まで行われる。
足の湯につかると疲れも吹き飛ぶ(開湯1300年「菊の湯」=山中温泉) |
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中道幸子さん |
山代温泉には陶芸家魯山人が「福田大観」と名乗っていた1915(大正4)年10月から約半年間滞在していた吉野屋旅館別荘をそのままに残した「魯山人寓居跡 いろは草庵」がある。魯山人が使った仕事部屋、書斎、いろりの間とともに魯山人の陶磁器、書、絵画が展示されている。
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「おしょべ恋物語」のお末と竹松像 |
伝説の恋物語しのぶ
粟津
古来、切り傷や解毒作用に働くとして有名な粟津温泉。泉質は純度100%の芒硝(ぼうしょう)泉だ。旅館ごとに自家掘りする源泉かけ流しの湯に入浴できる。合掌造りの宴会場を備えている旅亭懐石「のとや」では、白山の雪どけ水で炊き上げた地元・鶴来産のこしひかりを使用。
その温泉地に江戸時代から伝わるのが「おしょべ恋物語」。下女のお末と下男の竹松が紆余(うよ)曲折の末に大恋愛を成就させたという。2人のゆかりの場所、(1)おしょべ像(2)黄門杉(3)おしょべ公園(4)総湯(5)那谷寺(なたでら)を恋人同士や熟年カップルでめぐるといいことがあるかも。那谷寺の奇岩遊仙境は輪廻(りんね)転生の場としてみそぎ再生、胎内くぐりの聖地。
旅亭懐石「のとや」
TEL:0761-65-1711 |
「加賀四湯博」の問い合わせ 「ほっと石川」観光キャンペーン事務局TEL:076-225-1542 |
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