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車道と歩道の段差がなく、車いすを楽に押せるバリアフリーの市街地 |
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12年かけ“3つ星”評価
段差ない市街地/国際化に対応
歴史ある町並みを歩く日本人に交じって韓国や台湾などアジアや欧米の観光客の姿が目立つ飛騨高山(岐阜県)。「住みよい町は行きよい町」を掲げて12年前からバリアフリーの町づくりや心をこめたおもてなしに取り組んできた。このほど仏ミシュランが東京や京都と並んで3つ星に評価した飛騨高山を旅した。
「おもてなし」も一層充実
昨年、高山を訪れた観光客は434万5000人で前年よりも15万1000人、3.6%増えた。注目されるのは海外客が13万2000人(同2万4800人、23.1%増)と多いことだ。
一時期、高山の観光客は旧国鉄民営化の影響で落ち込んだが、地道にバリアフリーの町づくりとホスピタリティー(心をこめたおもてなし)に取り組んできたことで以前の水準を大幅に上回って観光客が増加。減少に悩む全国の地方自治体から“高山モデル”として注目を集めている。
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日本語、英語、中国語、ハングルの4ヵ国語で表示している標識 |
「これからは少子高齢社会。海外の観光客を増やさなければやっていけなくなる。それとともに高齢者、障害者の方たちに来てもらうにはどうすればいいか、というテーマの下、12年ほど前からバリアフリーの町づくりを進めてきたのです」と飛騨高山東京事務所代表の山本誠さん(68)は話す。
高山の町を歩いてみて気付くのは、道路と歩道の段差が市街地にはほとんどなく、車いすキャスターがはまることがないように細かい網目のグレーチングを設置するなど、高齢者や障害者のためにきめ細かなところに徹底して気を配っている点。車いす対応の公衆トイレは市内78カ所、休息用ベンチは380カ所にも及ぶ。電動車いすの貸し出しサービスもあり、また市は補助金を出してホテルなど宿泊施設の車いす使用者向け入浴装置や、弱視者用コントラストルーム導入などを支援している。このほか、町の標識は海外客のために英語、中国語、ハングルと日本語の4つの言葉で表記、市の海外訪問客用ホームページは10言語で作っている。
一方、ソフト面も観光関連業者におもてなしマニュアル、小中学生にバリアフリーテキストを配布するほか、車いす利用者や視覚障害者などへの対応の仕方を学ぶホスピタリティー研修に力を入れている。
ことし3月には高山グリーンホテルで中国、韓国、台湾出身の3氏を招いた「お国柄おもてなしニーズ研修会」を開催。旅館・ホテルなど観光関係者を中心に140人が出席、講演者の率直な意見に聞き入っていた。
バリアフリーの町づくりは、障害者や外国人、旅行会社を高山に招いてのモニター旅行を12年前から25回以上も続け、そこで得られた意見を地道に実行することから生まれたのである。
有巣栄里子さん
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リピーター目立つ
飛騨高山独自の取り組みは実際のサービスにも表れている。大手旅行代理店でも部屋を押さえるのに苦労するという旅館「本陣 平野屋 花兆庵」(TEL0577・34・1234)は特に女性客が多い。「年2回ひな人形を飾るなどイベントを催し、誕生祝いの料理や時にステーキをご用意するのも、お客さまの喜ぶ顔が見たいからです」と女将(おかみ)の有巣(ありす)栄里子さん(48)は話す。3分の1近くがリピーターで2世帯家族からアラブの豪族までスイートルームは年間を通じて予約が途切れることがない。
また、江戸時代から続く宮川朝市でも、身振り手振りで外国人観光客と話す露店の女性の姿が見られるようになったという。
かつて乃木希典や司馬遼太郎も訪れた200年以上の歴史を誇る料亭「洲さき」、重要文化財の古民家「吉島家」「日下部民芸館」、「高山陣屋」、日本3大美祭のひとつ「高山祭」など高山の市街地は歴史と文化の宝庫。
こうした資源にあぐらをかくことなく、先見性と市民の努力で実現した高山市のバリアフリーの町づくりは、全国の自治体にとって参考になるだろう。
本陣 平野屋 花兆庵
TEL:0577・34・1234 |
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