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三徳川を間近に見る三朝温泉の河原風呂。
5月から7月末は、カジカガエルの鳴き声も楽しめる |
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山陰鳥取─。首都圏からの交通手段が乏しいためか、その魅力を肌で知る人は多くない。しかし自然と歴史の造形、山海の美味、名湯に魅せられ、再訪する人は少なくない。例えば山あいの三朝 (みささ) 温泉。「ラドン含有量日本一」とあって、病気の治療にも活用されている。三朝で旅の疲れを癒やし、ゆかしさを感じる名所に足を延ばした。
自然と歴史の造形、美味、名湯
ラドン含有「日本一」 三朝温泉
「がん死亡率、全国平均の約2分の1」。三朝温泉地区の住民統計調査が1992年、学会誌に載った。温泉から気化するラドンは自然治癒力を高めるとされ、「湯めぐりの宿を訪ね歩いて」と三朝温泉観光協会会長の藤井享さん (64) は話す。和風建築の多い温泉街は、しっとりとした情感を漂わせる。
温泉街を流れる三徳川では、例年5月から7月末までカジカガエルが澄んだ鳴き声を奏でる。木屋旅館 (TEL0858・43・0521) の御舩道子さん (78) は30年近く保存活動に携わり、今も保存研究会会長だ。「美しい音は耳のごちそう」。カジカガエルがすむ清流を守るため、源流のブナ原生林保護にも力を注ぐ。
さて、がん死亡率が低いのは本当?─。
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光延文裕さん |
岡山大学病院三朝医療センターのセンター長・光延文裕さん (48) は「総合的にみて“その通り”とは言えない」と慎重に言葉を選ぶ一方「三朝の泉質は万人向け。免疫機能を刺激し (老化防止などにつながる) 抗酸化力を高めると考えます」と内臓や関節疾患などの治療に温泉療法を取り入れている。
絶壁に“謎”の名建築
投入堂
三朝温泉から山あいの道を行くと修験道の行場だった「三徳山三佛寺」(TEL0858・43・2666) に着く。三徳山山頂近くの絶壁に建つのは国宝「投入 (なげいれ) 堂」。近年、平安時代後期の建築と確認されたが、どうやって造られたかは今なお謎だ。見上げられることを意識した舞台造りは、写真家の土門拳からも絶賛された。
手続きをすれば投入堂まで登れるが、かつての行場だけに足場が悪く鎖に頼る急斜面も。体力に自信のある人は、挑戦してみたい。
御舩道子さん |
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風が変える砂の表情 鳥取砂丘
東西16キロ、南北2.4キロの鳥取砂丘。起伏に富んだダイナミックな景観の中に、足を踏み入れることができる。日本海からの夜風が砂丘の足跡を消す朝は、「風紋」などと呼ばれる風の造形に出合えることが多い。朝・昼・夕、そして四季折々に砂丘はその表情を変える。
26日(土)からは砂の彫刻が建ち並ぶ「砂の美術館」が開幕する。09年1月3日(土)までの予定。
地元限定の味 もさえび
「海の王」松葉ガニや大山牛などが鳥取の味として有名だが“地元限定”の味も見逃せない。「もさえび」は5月までが漁獲時期で今が“旬”。傷みが早いため県外に流通することはほとんどないという。ぷりっとした食感と上品な甘みは「海の女王」といわれるほど。刺し身や空揚げなどの料理を、海に近い食堂などで味わうことができる。
平安時代後期、絶壁に建てられた投入堂。
ふもとの拝観所からも見ることができる。 |
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鳥取砂丘。観光客が最も集まる「馬の背」は高さ30メートル以上もある |
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