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桜が咲き誇る称名寺 |
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広重に思い“野島夕照”
ようやく到来を告げた春。ちょっと遠出して横浜をぶらりと歩いてみませんか?
元町など海の方面がクローズアップされがちな横浜だが、金沢区・称名寺と周辺一帯にも魅力的なスポットがある。北条実時によって建立された称名寺は四季折々の美しさを見せる浄土式庭園が有名。ヤマザクラ咲く裏山には、浮世絵師・歌川広重が描き残した金沢八景のうちの1枚「野島夕(せき)照」の野島とランドマークタワーを見下ろせるポイントも。折りしも2008年は広重没後150年に当たる。この機会にぜひ訪ねたい。
京浜急行金沢八景駅からスタート。ここから約30分歩いて称名寺を目指す。
江戸時代、風光明美な入り江が続く景勝地だった横浜・金沢八景。広重が描き残したことから、現在でもその名は知られている。金沢八景駅から徒歩5分ほどの琵琶島神社を海の先まで行くと、「野島夕照」に描かれた野島が当時の形のまま姿を現す。形は違えど入り江には船も停泊しており、広重の描いた世界の現代版のよう。モノレールが空中を横切る様子がシュールだ。
「広重は風景をそのまま描いたのではなく、多少デフォルメして描いたといわれています。『瀬戸秋月』も、ここで見た風景を組み合わせているようです」と、横濱金澤シティガイド協会の塚本眞砂子さん(58)は説明する。
琵琶島神社を出て、伊藤博文が明治憲法を草創した場所といわれる宿の跡を通り、龍華寺へ。「ぼけ封じ観音」と境内のオムロザクラをめでよう。5月にはボタンも咲く。トイレ休憩も可能だ。龍華寺から20分ほど進めば称名寺だ。
坂を上がると、称名寺の赤門がお出迎え。赤門から仁王門までの参道は、4月には桜のトンネルになる。幅狭の短い参道だが、仰々しくないのがいい。「ここの仁王像は院興(いんこう)一派によって制作されたもので、約680年前に作られました。全身に力強さがみなぎっていて、一見の価値があります。関東圏内では一番大きいのではないでしょうか」と仏像に詳しいガイドの岡部正文さん(72)。
称名寺の美しさは何といっても広大な浄土式庭園。満開のころには池のふちの桜が水面に映る。裏山一帯も薄桃色のもやがかかる。
称名寺は13世紀半ばに武将・北条実時が建立。勉強家だった実時は中国、朝鮮などから集めた本を納める書庫を寺内に作った。それが金沢文庫である。
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琵琶島神社から見る現代版「野島夕照」
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さて、ここからいよいよ“秘密”の裏山に登る。裏山といっても実は「横浜市民の森」に指定されているハイキングコースである。往路はかなりきつい階段を一気に上がる。15分ほどで頂上にある八角広場に着く。南東には海にぽっかり浮かぶ野島が見え、北西からは、晴天の日はランドマークタワーやレインボーブリッジまでが見渡せる。
復路は金堂の裏に出る手付かずの自然が残るコースで下る。道中、ヤマザクラが密集する場所があり、「ここが横浜?」と一瞬疑ってしまうほどの静けさ。
食事は「ふみくら茶屋」の名物「しゃこ丼」(時期によってないことも)がお薦め。和菓子で休憩もできる。金沢文庫駅までは赤門前からバスに乗ってもいいが、グリーンの歩道を歩けば15分ほどで着く。快特に乗れば18分で横浜へ。
まだあまり知られていない金沢八景を、春の散策候補にぜひ入れてみよう。
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ハイキングコースの下り口 |
横浜コンベンションビューロー
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