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色付く尾瀬ケ原。カヤやスゲの穂が茶色に染まり、葉の先端が赤く色付く草紅葉 |
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尾瀬の秋
格別の味わい 1泊2日のトレッキング
群馬、福島、新潟3県の県境に位置する国立公園・尾瀬。「夏がく~れば思いだす~」という歌の印象があまりにも強いためか、尾瀬といえば、ミズバショウと夏を連想する人が多いようだ。しかし尾瀬の秋も格別の味わいだ。黄金色に染まる草原が風にそよぐ様は本当に幻想的で、ミズバショウの季節に比べると、はるかに静かなのもうれしい。紅葉と草紅葉をめでる1泊2日の尾瀬のトレッキングコースを紹介する。時季は9月末から10月10日ごろまでが紅葉と草紅葉のベストシーズンだ。
1日目 / 歩行約3時間半
大清水 ~ 三平峠 ~ 尾瀬沼 (泊)
売店が並びにぎやかな大清水が今回のトレッキングの出発点。東京を朝出るとJRとバスを乗り継いでもマイカーでも、昼ごろには大清水に到着する。
腹ごしらえをしたら、早々に出発しよう。この行程は短いとはいえ、秋は日も短い。遅くとも午後4時までには小屋に到着するようにしたい。周りの木々を観賞しながら約1時間で一ノ瀬休憩所に到着だ。トイレ休憩をすませたら再び歩き始めよう。三平橋を渡るとすぐ左手に山道が延びている。
清らかな沢音に癒やされながら歩を進めるとやがて木道が現れ、三平峠まではしばし登りとなる。少し息をはずませながらたどりついた三平峠はこの行程の最高点。ここからはわずかな下りで尾瀬沼に到着する。
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下の大堀。池塘 (ちとう) に浮かぶヒツジグサの紅葉 |
2日目 / 歩行約6時間半
尾瀬沼 ~ 下田代十字路 ~ 尾瀬ケ原 ~ 山ノ鼻 ~ 鳩待峠
山小屋での朝食を終えたら、早速出発しよう。アップダウンは少ないものの2日目は少々長丁場だ。それでも尾瀬沼を眺めながらの歩行は本当に気分がいいので、あまり苦にならない。そして日が昇るにつれて周囲の木々の赤や黄が鮮やかにその姿を現し始めると「うわ~」とか「ハー」とか皆が歓声を上げる。人は本当に感動するとそんな言葉しか出てこないのかもしれない。
沼尻休憩所でひと休みしたら、いよいよ尾瀬沼ともお別れだ。しばし、樹林の中の道をゆくのだが、秋にはこの樹林帯が見事に色付いていて、あきることなく下田代十字路に到着する。尾瀬には全長57キロメートルに及ぶ木道が整備されていて貴重な湿原を保護してくれている。実は尾瀬の約7割の土地を所有しているのが東京電力。同社は、木道のほかにもトイレや太陽光発電など、尾瀬の自然を守るためにさまざまなバックアップをしている。
この長い木道の周りにそよぐ黄金色の草原とそれを渡るさわやかな風を感じながら、ひたすら山ノ鼻を目指して歩く。そして山ノ鼻からは鳩待峠を目指して最後の登りとなる。でも、焦ることはない。もう、ゴールは近いのだから尾瀬の余韻を楽しみつつ、のんびりと登ればいいのだ。やがて小屋の屋根が視界に入ってきたら目指す鳩待峠まではあとわずかだ。
アフタートレッキングの楽しみ
山歩きのあとの楽しみはやはり食事と温泉。尾瀬の名物といえば、「そば」とイワナ。まずは鳩待峠でイワナの塩焼きをさかなにビールで歩き疲れた体をいたわるのもいい。その後は鳩待峠から最も近い尾瀬戸倉温泉へ。単純温泉でやけどや切り傷に効能のある温泉だけに、登山での多少の傷はこれで大丈夫。肌触りがよく、滑らかな泉質は特に女性に好評だ。
(登山教室「歩きにすと倶楽部」主宰・太田昭彦)
【交通アクセス】
JR上越線沼田駅から関越交通バスで大清水下車(駅からは約1時間40分)。また、関越交通は期間限定で新宿駅南口発の大清水直行バスを運行している (所要時間約4時間、要予約) 。
関越交通:TEL0279-22-2020
尾瀬林業 (株):TEL0278-58-7311 (宿泊など尾瀬に関する問い合わせ) |
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