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消防団の番屋として使われていた紺屋町番屋。大正年間の木造洋風事務所建築の典型といわれる |
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先人愛した自然と歴史感じて
中津川、北上川、雫石川。3つの川のせせらぎとともにその歴史を積み重ねてきた盛岡市は、石川啄木や宮沢賢治など先人らが愛した地。石垣が往時を物語る城跡や石割桜のほか、通りには歴史的建造物や古い商家が点在する。最近では映画や朝の連続ドラマのロケ地としても注目されている盛岡は、"歩いて楽しむまち"と定年世代の散策におすすめ。8月には盛岡さんさ踊りや盛岡七夕祭りなど、イベントもめじろ押しだ。
夏にはアユが踊り、秋には産卵のためにサケが上る中津川。中の橋のたもとには国の重要文化財、岩手銀行中ノ橋支店が堂々と建ち、赤いレンガと白い花こう岩の帯が際立つ外観が美しい。一方、銀行向かいの「プラザおでって」は近代的なデザインの建物。盛岡弁で「おいでください」という意味の情報発信基地には地元ボランティアによる盛岡ふるさとガイドの会もあり、散策ルートの拠点に。
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福島紀子さん |
市内には「でんでんむし」と呼ばれる循環バス (1日フリー乗車券300円) も走り、気ままに散策を楽しむのもいいが、初めての人にはガイドツアーがおすすめだ。
緑のスカーフと帽子姿がまばゆいガイドの福島紀子さん(67)と市内を散策。中の橋を渡ると、左手には盛岡城跡公園(岩手公園)があり、四季折々の風情を伝えている。約400年前、陸奥の大名、南部信直の築城が街づくりの基礎となった盛岡市。その後、城郭は取り壊されたが、盛岡産の花こう岩を積み上げた石垣は今も見事に残り、その美しさから東北三名城に数えられるほどに。園内には巨大な烏帽子(えぼし)岩や「不来方のお城の草に寝ころびて~」と詠んだ石川啄木の詩碑が残る。
散策のエネルギーを補給するため、昼食は盛岡が誇る四大麺 (めん) の中からじゃじゃ麺をいただく。食べ方は、うどんに香ばしい肉いためみそをのせ、好みに応じてラー油やニンニク、酢などで味付けし、刻んだキュウリやネギなどと混ぜながら食べるというもの。食べ終わったら、といた生卵に、ゆで汁、肉みそを加えた卵スープ「チータンタン」で仕上げるのが地元の常識だとか。週に1~2回来るファンも多く、「3回食べるとやみつきになる味。最近、昼休みが15分短縮になったので困っています」と嘆く地元の会社員も。
ドラマのロケなどにも使われた中津川沿いの柳道 |
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もともとは40年ほど前、1人の男性が戦時中に旧満州で食べた味を基にアレンジしたという盛岡のじゃじゃ麺。そのほかの四大麺は冷麺、わんこそば、南部はっと鍋 |
江戸末期の土蔵も
腹ごしらえを終え、再び元気に歩き出す。江戸末期の土蔵が残る「ござ九商店」は竹製品や日用雑貨の老舗として親しまれ、盛岡の町屋を象徴している。南部鉄器や南部絞りの店舗を見学し、風情ある街並みにひたっていると、「昔はもっと中津川に水量がありました。染織屋さんが染め物を洗っていたんですよ」と福島さん。
移りゆく街並みと引き継がれてきた伝統。創業70年以上という「白沢せんべい店」で南部せんべいとお茶をいただきながら、そっと中津川の瀬音に耳を澄ました。
観光ボランティアと回るコースは、青春時代を盛岡で過ごした文人の愛した散歩道を満喫できる「啄木と賢治青春の道」や、宰相・原敬や米内光政が眠る寺町を散策する「宰相の道」など5つ。所要時間は約2時間半。各コース3000円(ガイド1人につき)。1週間前までの申し込みが必要。
『循環バス・でんでんむし』
料金:300円 (1日フリー乗車券) |
『盛岡観光コンベンション協会』
問い合わせ:019-604-3305 |
★周辺スポット★
市内から車で30分以内には、動物とのふれあいや新鮮な乳製品が楽しめる小岩井農場 ( = 雫石町)。また「盛岡の奥座敷」と呼ばれるつなぎ温泉で散策の疲れを癒やすのもいい |
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