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ごぼう積の石垣が美しい国宝の天守閣 |
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国宝・彦根城 築城400年
彦根は古くから中山道と北国街道の分岐点に立地し、琵琶湖に面した交通の要衝。中でも彦根城は関ケ原の合戦後、近江の豊臣勢力の監視を担い、徳川幕府の要所を支えた井伊家35万石の威風を今日に伝える。ことし築城400年を迎え、彦根城を中心に11月25日(日)まで記念祭を開催している。井伊家のぼだい寺「龍潭寺(りょうたんじ)」など大老・直弼ゆかりの地を地元ボランティアガイドとともに歩いた。
彦根城といえば1963(昭和38)年に放映された大河ドラマ「花の生涯」を思い出す人もいるだろう。庶子として生まれ、ささやかな屋敷で禅や茶道に人生をささげることを決意するも、世継ぎの急死で彦根藩主になった井伊直弼。彦根は、幕政にかかわり“開国”や安政の大獄を決断し、桜田門外に散った人物ゆかりの地。
三重白亜の国宝・天守閣や天秤櫓(てんびんやぐら)などの重要文化財は美しく、最近では映画「武士の一分」やドラマ「大奥」のロケ地などにもよく使われ“時代劇のハリウッド”とも称されるほど。
もともとは関ケ原の合戦後、徳川四天王の1人、井伊直政の子・直継と直孝により金亀山に築城された彦根城。佐和山城や長浜城など近隣の旧城郭の建物や石垣などで造られた"リサイクルの城"は、近江の豊臣勢力を監視するため、やぐらや堀に囲まれた防御に富んだ構造になった。
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西村元愛さん |
ボランティアガイド歴6年の西村元愛(もとよし)さん(74)の案内で城内を見学。重要文化財の二の丸佐和口多聞櫓や馬屋を通り過ぎると井伊家伝来の名宝約6万5000点を所蔵する彦根城博物館に。かっちゅう、刀剣をはじめ、雅楽器や茶道具、江戸時代当時の能舞台も現存、今秋には修復された国宝「彦根屏風(びょうぶ)」も見られるという。
急な石垣を見上げながら天守を目指して歩を進めると、視界が開けて絶景のパノラマに。健脚の西村さんは丁寧な解説を交えながら天守の急なはしご階段もすいすいと昇り、「降りる時はカニの横歩きで」と笑う。
新緑や紅葉の季節など天守閣から見渡す景色も楽しみだが、外から見上げる彦根城もおすすめだ。
簡素な武家屋敷も
名勝の玄宮園内の茶席で抹茶をすすり、直弼御用達の老舗「いと重」の菓子「埋れ木」をほおばる。近江八景を模した趣ある回遊式庭園を眺めながら、直弼も食べたのだろうかと思いをはせると上品な甘さに不思議と散策の疲れも薄れていく。「譜代大名が5万石、老中でも15万石。井伊家は別格の35万石で参勤交代も免除され、御三家扱いです。約2時間のコースですが、歴史の流れを感じてほしい」と西村さん。茶や禅宗にも明るい直弼に少し近づいたような気分になった。
彦根城周辺には直弼が青年時代を過ごした簡素な武家屋敷「埋木舎」や町屋風に統一された店が軒を連ねる夢京橋キャッスルロード、食のスポット「四番町スクエア」など散策スポットも充実。「らくらく(バリアフリー)コース」や「彦根宿場巡りコース」などボランティアガイドと回ろう。所要時間1~3時間。ガイド1人につき交通費代1000円。
禅宗の古寺「龍潭寺」で枯れ山水の名庭
「ふだらくの庭」を観賞 |
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芹川沿いの「七曲がり」と呼ばれる道は、10軒以上の仏壇店が並ぶ彦根仏壇の産地。ケヤキの粗い木目を生かした一間仏間が特徴の彦根仏壇は、彫刻・蒔絵(まきえ)・錺(かざり)金具など専門工程七職で造られる伝統的工芸品で、江戸中期に平和産業として始まった。
制作には半年から1年以上、高価なものでは5000万円以上するものも。創業187年の老舗「永樂屋」の宮川富子常務取締役は「お祝いの時など仏壇にお祈りして幸せな気分になってほしい」。同社では工場見学や、1回300円で金ぱく押し体験もできる。
400年記念祭の会期中は城内の重要文化財で特別展を実施。彦根城・玄宮園・博物館のセット券は大人1400円。
会期中の土日祝日で巡回バスを利用したガイドコースもあり、龍潭寺など直弼ゆかりの名所を見学。屋形船に乗って湖上から彦根城を眺める特別企画なども。
『彦根城』
アクセス : 東京から新幹線利用で約2時間20分
お問い合わせ:400年祭実行委員会/(TEL)0749-30-6141
(社)彦根観光協会 / (TEL)0749・23・0001 |
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