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  東京版 令和7年3月下旬号  
“連れ琵琶”の心、伝える  琵琶奏者 鶴山ヒロさん

「私の分身みたいなもの」と鶴山さんが構える“相棒”は年代物の筑前琵琶。「全体が堅いクワで豪壮な音を響かせる薩摩琵琶に比べ、筑前琵琶は腹板(表側)にキリを使っているので柔らかな音色を奏でます。それに薩摩琵琶に比べ軽いので、女性奏者に人気があります」。また、自宅では4匹の猫を飼う愛猫家という鶴山さん。「穏やかな演奏だと周りでおとなしく聞いていてくれるのですが、激しい演奏をすると一斉に隣の部屋に逃げてしまいますね(笑)」
故・上原まりの「後継者」に
 東元宝塚出身という異色で、天才肌の琵琶の名手・上原まりが急死してから今年で7年。琵琶の定番である「平曲(平家物語)」を、現代に通じるエンターテインメントとしてよみがえらせたその上原の志と技を継承したのが、琵琶奏者・鶴山ヒロさん(66)だ。4月には「筑前琵琶 故上原まりを偲(しの)んで 『平家物語』を語る〜連れ琵琶そして、横笛の囁(ささや)き」に出演。上原が生前、原典に独自の節を付け築き上げた「平家物語」の世界を奏でる。「彼女の残した“琵琶の形”を自分なりに咀嚼(そしゃく)し、後進に伝えるのが自らの使命だと感じています。当日は、まりさんの気持ちをくみ取って、その“心”を奏でたいですね」

  琵琶法師たちにより鎌倉時代から弾き継がれてきた「平曲」。一人(ソロ)で弾き語ることが常識だと思われてきたが、上原は生前、古典籍から複数の奏者が共演する“連れ琵琶”という演奏スタイルを発見。なじみであった日本琵琶楽協会会長の須田誠舟と組み、男声と女声のハーモニーも織り交ぜる形で、現代のエンターテインメントとして“連れ琵琶”の復活を試みたが、道半ばで上原は急死する。

 それを惜しんだ須田により、上原に代わるパートナーとして選ばれたのが日本琵琶楽コンクールで上位入賞の常連だった鶴山さんだ。「私の地声は低く、男性の須田さんの声にぴったり合わせることができるのが決め手になったそうです。4月の舞台でも須田さんとともに“連れ琵琶”で弾き語りをします。皆さんを『平家物語』の時代へいざなうような、臨場感あふれる演奏を披露したいですね」

 とはいえ、鶴山さんは「琵琶楽界、ひいては邦楽界のスターだった、まりさんの後釜が務まるのかは今も不安です」とも話す。

  当初は、上原と面識もない自分に突然舞い込んだ“後継者”の指名に驚きを隠せず、戸惑うばかりだったという鶴山さん。だが、上原の楽曲をあらためて聞き込んでみて仰天。「伝統的な琵琶の奏法(弾法=だんぽう)は厳しく定められているのですが、まりさんの演奏は伝統に縛られない独自の奏法と伝統的奏法を組み合わせた、あまりに革新的なものでした。その音色に洋楽の薫りさえ感じ、どんどん彼女の演奏にのめり込んでいきました」

 実は上原に弟子はおらず、また自身が作り上げたオリジナルの演奏も楽譜に残していない。全て頭の中で作り込み演奏していたのだ。「孤高の天才ですよね。残されているのは音楽媒体だけですから、琵琶楽界全体の革新となるかもしれない彼女の奏法を、私が解析して“発掘”していかなければ失われてしまうと悟ったとき、“連れ琵琶”のパートナーとしてだけでなく、真に彼女の“後継者”となる覚悟を決めました」

琵琶の音に憧れて
 鶴山さんは1958年に出生。伝統音楽と関係ない、横浜のごく普通の家庭で育ったが、音の出るものが好きな子どもだった。「テレビの人形劇か時代劇かで聞こえた妖しい琵琶の音にすごく魅了された記憶があります。それが、私の琵琶への憧れの第一歩でした」

 伝統音楽に出合うのは、「大学を遊びほうけて卒業できず(笑)、アルバイトで食いつないでいたときですね」。知人から「15分で1万円稼げる仕事がある」と誘われる。実は、エンターテインメントな演奏を志す和太鼓による音楽集団からの勧誘だった。「詐欺みたいな話ですよ(笑)。でも入団しました。やはり音にひかれたんですかね」

 猛練習のすえ和太鼓を習熟し、日本をはじめ世界を股に掛け演奏旅行の日々を送る。「当時はバブル。企業のパーティーによく呼ばれ、ガッツリ稼がせていただきました(笑)」

37歳で琵琶に転向
 そんな95年のある日、神戸での演奏会を予定していたが、阪神・淡路大震災の影響で急きょスケジュールが空くことに。そこに琵琶奏者で初の人間国宝に認定された山崎旭萃がたまたま大阪から上京、その演奏を聞く機会に恵まれる。「関西弁の品の良いおばあさまでしたが、演奏ではまるで別人。その迫力に圧倒されました」
 幼少時の琵琶への憧れがよみがえり、楽屋へ押しかけ弟子入りを志願。すると、彼女の高弟で東京に拠点を置く山下旭瑞に教えを受ける形で、孫弟子として入門を許される。37歳からのスタートとなったが、そこから猛練習。わずか7年で師範の免状を取得する。

 それから約20年、紆余(うよ)曲折を経て須田に見いだされ、上原まりの“後継者”に指名されたのだ。「邦楽の世界は師匠と弟子の内輪の世界に引きこもりがち。でも、まりさんの衣鉢を継いだからには、和太鼓楽団での経験も生かし、多くの人が琵琶の音に触れる機会を作っていきたいですね」。そして、平家物語への思いも語る。「心に響く琵琶の音で、現代にも通ずる普遍的な人間の感情をさまざまに描いた『平曲』を紡いでいきます。多くの人に平家物語に興味を持ってもらえたらうれしいですね」


銀座 観世能楽堂での公演の様子
♪「筑前琵琶 故上原まりを偲んで 『平家物語』を語る
   〜連れ琵琶そして、横笛の囁き」♪

  4月5日(土)午後1時半、二十五世観世左近記念観世能楽堂(GINZA SIX地下3階、地下鉄銀座駅徒歩2分)で。

 故上原まりが愛用した筑前琵琶が見守る舞台で、彼女が晩年に心血を注いだ“連れ琵琶”により平家物語の名場面を邦楽の名手らが弾き語る。

 予定演目:「祇園精舎」「壇ノ浦」ほか。出演:須田誠舟(薩摩琵琶)、鶴山ヒロ(筑前琵琶)、西川浩平(横笛)。

 全席指定。S席6000円〜B席5000円。問い合わせは(株)インターナショナル・カルチャー Tel.03・3402・2171

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