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  東京版 令和7年1月下旬号  
沖縄の勇気を舞台で表現  俳優・大和田獏さん

散歩が趣味のひとつという大和田さん。「よく多摩川べりを歩いてせりふを覚えたり、下手な俳句を詠んだりしています」と話す。先日、操作を誤って、スマートフォンに記録した俳句を全部消してしまった。「今また、消した俳句を思いだしながら、書き入れています」と苦笑い
2月開催「おばぁとラッパのサンマ裁判」に出演
 50年以上もドラマや舞台、ワイドショーの司会など幅広く活躍している俳優の大和田獏さん(74)。そんな大和田さんが2月3日から紀伊國屋ホールで上演される舞台「おばぁとラッパのサンマ裁判」に出演する。アメリカが支配していた時期の沖縄で起こった実話をもとに、「劇団チョコレートケーキ」の劇作家・古川健と演出家・日澤雄介のコンビが描く同劇。出演を前に、資料や台本を読んだ大和田さんは、「当時のことについて僕らはほとんど知らない。でも、あらためて沖縄の人たちの苦難や、巨大権力に立ち向かう勇気が伝わってきました」と話す。

 1960年代、アメリカの施政権下にあった沖縄で実際に起こった裁判騒動。鮮魚商の「おばぁ」と弁護士の「ラッパ」は庶民の魚、サンマへの不当な関税の撤廃を求め、真正面からアメリカに法廷闘争を挑むのだが…。舞台では72年の沖縄返還のきっかけになったともいわれる“サンマ裁判”をめぐる人々の様子が描かれる。

 この劇で大和田さんは、当時の琉球巡回裁判所裁判官の一人を演じる。「彼ら裁判官は、アメリカから任命されているから抗議をしたら首を切られるかもしれない、失職するかもしれない。それでも抗議の声を上げて、おばぁとラッパが始めた“サンマ裁判”を後押しした。その勇気が、ゆくゆくは沖縄返還(本土復帰)へと、つながっていったのではないでしょうか」

初めは「役者は無理?」
 大和田さんは福井県敦賀市で生まれ、高校2年まで暮らした。父の転勤で移り住んだ名古屋では大学(名古屋市立大学)に進み、演劇同好会や、演劇仲間とつくった企画集団で芝居をやるなどしていた。だが、就職活動をするころには俳優ではなく、地元放送局(中部日本放送=現CBCテレビ)への入社を志望する。「ちょうど兄(俳優の大和田伸也)がテレビや映画に出演するようになっていたんですが、それまでの下積みの苦労を見ていたので、自分には役者は無理かなと。テレビ局のディレクターかプロデューサ―になって兄を出演させようと思っていました」

 しかし、地元放送局は不採用になったため、東京の芸能事務所に所属し、花登筺原作・脚本のテレビドラマ「こんまい女」(73年、フジテレビ系)に出演。同ドラマが大和田さんの俳優デビュー作となった。

 そんな経緯で、兄と同じ俳優の道へと進むことになった大和田さん。その後は、「渡る世間は鬼ばかり」(98~2011年)やNHK大河ドラマ「おんな太閤記」(81年)、「春日局」(89年)などのテレビドラマや、「あにいもうと」(76年)などの映画に出演したほか、役者以外にもタレント、司会者として活躍の場を広げた。特に、NHKのバラエティー番組「連想ゲーム」では12年間レギュラー回答者を務め、お茶の間の人気者に。また、昼どきのワイドショー番組「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)では11年間、メインキャスターを務めた。「(注目を集めるようになって)兄から、『天狗(てんぐ)になるなよ』『調子に乗るな』とよく注意されました」

子どもの元へ
 「連想ゲーム」での共演がきっかけで女優の岡江久美子と結婚し、娘・大和田美帆も長じて女優の道へ進むなど芸能一家としてそれぞれ活躍していたが、20年に新型コロナウイルス感染症により妻を亡くす。「妻のいた穴はなかなか埋められません。だけど、娘ともよく話すんですが、意味のないことはないんだと。誰しも、いろんな苦しみや悲しみを味わっています。それをどう乗り切って生きるかが大切だと思います。(妻が亡くなって)周囲のみなさんの優しさをより以上に感じていて、感謝しています。優しさをいただいた分、人へも優しくなれるかな、という思いがあります」

 そんな大和田さんにとって心機一転となったのが、娘からの提案で始めた獏と美帆の親子ユニット「ばくみほ」の活動だ。2人で、療養生活を送る子どもとその家族を支える地域コミュニティー型の通所施設「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」などを訪ねて歌や朗読、紙芝居、手品などを披露し、小児がんなどの重い病気にかかった子どもたちを楽しませている。「呼んでもらったらそこへ行って、役者としてやってきたことを生かして喜んでもらえる。これが子どものころから僕のやりたかったことなんだな、と感じています」。おととし、芸能生活50周年を迎えた大和田さんは、「生涯役者でいたい。お声が掛かれば何でもやります」と話す。「おばぁとラッパ」の後は、3月に舞台「モンテンルパ」に出演する。

「おばぁとラッパのサンマ裁判」
 2月3日(月)~9日(日)、紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階、JR新宿駅徒歩5分)で。全7公演。

 出演:柴田理恵、太川陽介、鳥山昌克、森川由樹、大和田獏。

 全席指定。一般前売り6000円(当日6500円)、夜割引5000円(当日5500円)、シニア(60歳以上)5500円、U-30(30歳以下3500円)ほか親子割引、バリアフリー割引もあり。問い合わせはトム・プロジェクト Tel.03・5371・1153

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