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  東京版 令和6年11月下旬号  
面白くて奥深いパントマイム  パントマイム・アーティスト 「が~まるちょば」さん

「趣味はパンクロックと革ジャン、オートバイのほか、映画もよく見る」と、が〜まるちょばさん。新作を生み出すため、常にアンテナを張っている。「いろんなものを見たり、聞いたりしていると、これをパントマイムでやると面白いだろうなと、つい思ってしまう」
1月から全国ツアー開催
 セットも何も無い舞台で、言葉を使わず体の動きだけで2時間にわたるストーリー性のある作品を1人で上演する—。そんなパントマイム・アーティストが「が〜まるちょば」さん(58)だ。「世間ではジェスチャーと混同されやすいのですが、パントマイムは単なる身ぶりや手ぶりではありません。歌舞伎などほかの演芸と何ら変わりがなく、見て感動し、楽しむ舞台表現です」。20代から、ひたむきにパントマイムの可能性を追求してきた。2025年1月13日の東京公演から始まる全国ツアーでは、「面白くて奥深いパントマイムを見せたい」と意気込む。

 サングラスをかけ、黄色いモヒカンのヘアスタイルという特異な風貌で一見、近寄りがたい印象の「が〜まるちょば」さん。だが、「パントマイムの面白さをみんなに知ってほしい」という気持ちは人一倍強い。今回のツアータイトル「Everybody hates MIME(誰もがパントマイムを嫌っている)」には、「誰も、パントマイムの面白さを知らない」という気持ちが逆説的に込められている。

 「パントマイムの起源は紀元前の古代ギリシャにさかのぼるそうです。ギリシャ語のパントス(全て)とミモス(まねる)が合わさってパントマイムという言葉になったといわれています」。歴史が深いにもかかわらず、いまだ世間では「パントマイムのだいご味がよく知られていない」と嘆く。

 パントマイムがサイレント映画のように無声であるのも、理由があると言う。「その方が、見る人が自由に想像して楽しめるから。例えば何かを飲んでいるシーンでは、ビールが好きな人にはビールを飲んでいるように見え、焼酎が好きな人には焼酎のように見えるのです」

 人は十人十色。が〜まるちょばさんは「老若男女一人一人の“見えてくるものが違う”というのが、パントマイムの魅力の一つ」と話す。ちなみに芸名の「が〜まるちょば」は、ジョージア語で「こんにちは」という意味。「ドイツの国際フェスティバルに招待されたときに、群舞を見せるジョージアの子どもたちと『が〜まるちょば』という言葉だけで交流できた」という経験から名付けた。

進路に悩んだ末に
 が〜まるちょばさんは埼玉県春日部市出身。若い頃、「なんで生まれてきたのか」「生きるってどういうことなんだろう」と思い悩む。「こう見えても人見知りで、言葉も上手に使えない自分が将来、何を職業にしたらいいのか分からなかった」と言う。一方で、「25歳までに自分の進路を決めようと思っていた」。高校卒業後、ガソリンスタンドでアルバイトをして生計を立てていた25歳のとき、「パントマイム」という言葉が頭に浮かんだ。「ふっとパントマイムなら一人でやれて、話すこともないのでやれるんじゃないかと思い付いたのです」。まさに天の啓示のような一瞬だった。それまで特にパントマイムに興味があったわけではなく、よく知らなかったため、パントマイムを見に行ったり、先生について習ったりして猛勉強。「これができなかったら、ほかにどんな仕事もできないだろうという覚悟を持ってパントマイムを始めました」。それからは、世間から認められるように努力してきたが、「自分はパントマイム・アーティストだ」と自信を持って言えるまでには、かなり時間がかかったという。

「ソロ」で活動継続
 当初はソロで活動していたが、1999年に「ケッチ!」と2人でサイレントコメディーデュオ「が〜まるちょば」を結成する。「HIROマイナスPON(ヒロポン)」の芸名でケッチ!とともに繰り広げるパントマイムは「パントマイムの固定概念を超えた演劇作品とショー」と、日本よりも世界でいち早く注目を集め35カ国以上から招待されて上演。逆輸入という形で日本でもブレークした。2019年にケッチ!が脱退し、約20年におよぶデュオ活動に終止符を打つが、一人で「が〜まるちょば」を名乗り活動を継続。21年の東京2020オリンピック開会式では、動くピクトグラムの演出を担当し、パントマイムの可能性を広げて話題を集めた。

 自らの演技だけで、聞こえない「セリフ」と見えない「情景」で物語を紡ぎ、客席を笑いと感動の渦に導く—。その一瞬が、が〜まるちょばさんにとって至福のときだ。だが、その楽しさが「まだ世間に十分認知されていない」という思いは強い。「パントマイムの面白さをもっと多くの人に知ってもらいたい。古典芸能の歌舞伎や落語に親しんでいる人は、特にパントマイムの良さが理解しやすいと思う」と話し、「パントマイムをやっている人はそれほど多くいませんが、機会を見てパントマイムのライブ会場にも足を運んでほしい」と願う。

 そんな思いから、今年は短編作品を集めた「真面目・不真面目・馬鹿・利口」公演や浅草花劇場での3週間ロングラン公演などさまざまな試みを行ってきた。「パントマイムの面白さが世の中に十分浸透していないのは、やる側の僕の責任でもある」と話すが〜まるちょばさん。今度の全国ツアーでは、さらにパワーアップしたパフォーマンスで観客を沸かせようと熱意を見せる。


が〜まるちょばさんの舞台の様子
「が〜まるちょば シネマティック・コメディー
   JAPAN TOUR 2025〜Everybody hates MIME〜」

 2025年1月13日(月・祝)午後4時半、よみうり大手町ホール(読売新聞ビル内、地下鉄大手町駅直結)で。

 全席指定6000円。未就学児入場不可。作・演出・出演:が〜まるちょば、企画・製作:ティアスエンド。

 なお、東京公演の終了後は、大阪、広島、三島などの地方都市で公演する。詳細はが〜まるちょばオフィシャルサイト(http://www.gamarjobat.com/)で。

 問い合わせはチケットサンライズ Tel.0570・077・020

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