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  東京版 令和6年6月下旬号  
「舞台づくりは共同作業」  劇団「文学座」代表、演出家・鵜山仁さん

英国の建築様式・チューダー様式が採用された「文学座アトリエ」(新宿区)の入り口に立つ鵜山さん。アトリエは文学座の稽古と、前衛的・実験的な作品を主とした公演「アトリエの会」で使われている。創立者の久保田万太郎、岸田國士、岩田豊雄(獅子文六)に始まり、杉村春子、戌井市郎、森本薫、北村和夫…。コロナ禍の影響が残る中、先人・先達の思いを継いで代表となった鵜山さんは前を向く。「力を合わせて、いい芝居をつくり続ける。それが一番大切と思っています」
29日から文学座公演「オセロー」
 劇団「文学座」の代表に今春就いた演出家・鵜山仁(うやま・ひとし)さん(71)は、「舞台づくりは共同作業です」と穏やかな笑みを見せる。「(稽古場での)異論反論が演出家を育てる」が、かねての持論。加えて、代表としても「異論反論が劇団をたくましくすると信じている」と明言する。29日からの文学座公演「オセロー」は、“嫉妬の罠(わな)”が破滅をもたらす物語。自らの演出で「シェークスピア四大悲劇」の一つに挑む意気込みをこう語る。「肉声による言葉が人の顔色や身体を動かし、曲折を経て『情念の爆発』に至る。ライブで見てこそ面白い作品です」

 「できれば全てを(稽古の)現場で考えたい」。鵜山さんは舞台の稽古初日、「まず役者の(台本を読む)声を聞く」と話す。冗談めかして「僕がそれに難癖を付けるという入り方(笑)」。出演者の意見を「A」、自身の考えを「B」として、演出家としての基本姿勢を言い表す。「答えは『B』ではなく、『A』と『B』の化学変化による『C』でないと…。そんな感覚を持っています」。今回の「オセロー」は文学座公演とあって、長く仕事を共にしてきた俳優も少なくない。「稽古では“きょうだいげんか”があっていい。そうしたノイズ(雑音)が芝居に厚みと奥行きを与えると期待しています」

 奈良県大和高田市出身の鵜山さんは慶應義塾大学文学部フランス文学科を卒業後、俳優を目指し舞台芸術学院へ。やがて演出家に目標を変え、1980年上演の「オペラ・死神」で演出家デビューを果たしている。「僕には役者の才能はなかったようで…(笑)」。その後は文学座に籍を置きながらも、劇団の枠にとらわれることなく古典・名作の演出を手掛けてきた。「『人間が死ぬ確率は100%』という考えは嫌い。『どこかに何億年も生きている人がいるかも?』と妄想しています(笑)」。その真意を説明する。「シェークスピアは400年以上前、ギリシャ悲劇は2500年も前…。“命の記憶”は一人一人の寿命を超えて連綿と続く。そうした『見えないもの』を芝居にして、未来へつないでいくつもりでやってきました」

 公演の延期・中止が相次いだコロナ禍では、「盤石であったはずの『甲子園』(春と夏の高校野球)までも開催中止(2020年)。ここでも世界を揺るがせたのは、ウイルスという『見えないもの』でした」とかみ締める。演劇の存在意義を自らに問い直し、「人の心理、死者の思い…、『見えないもの』を、舞台空間にあたかもあるように創出できなければ、芝居をやっていく意味はない。そこで最も大切になってくるのは、やはり言葉です」。

せりふの妙味
 悲劇、喜劇、史劇…。昨夏上演の「夏の夜の夢」など、これまで数多くのシェークスピア作品を演出してきた鵜山さんは、その魅力の一つに「せりふの面白さ」を挙げる。中でも「オセロー」は、「言葉が魔術的と言っていいほど、相手の思いもよらない反応を引き起こしていく」。劇中、ベニス公国に仕える将軍・オセローは高潔な人格で周りから尊敬されながらも、忠臣であったはずのイアーゴーの策謀にはまり、妻のデズデモーナへの疑念にとらわれていく—。

 鵜山さんは「シェークスピア劇の中でも、主人公の感情の振れ幅が大きい。そして過剰なまでのせりふの応酬は、時として喜劇とも感じさせる」。インターネット上のSNSで行き交う不確かな情報が誤解や分断を生む現代との共通点も強く感じている。「人間は心の弱みを突かれると、案外もろいのかも。そして、芝居を見る人は、だます側、だまされる側双方の視点を獲得できる。あまたの情報が混在し真偽を見極めることが困難になっている今と、そう遠くない世界の作品です」

「90周年」へ歩む
 1937(昭和12)年9月、「真に魅力ある現代人の演劇」を理念に掲げて発足した「文学座」代表としても、「役者やスタッフ…、立場の違う人たちと活発に意見を交わしていきたい」と語る。その歴史を振り返り、「前衛的・実験的な作品から大衆性のある芝居まで、試行錯誤しながら幅広くやってきた劇団です」。その上で未来に視線を向け、言葉を継ぐ。「芝居の多様性を大事にしながら3年後の90周年、そして100周年に向けて歩んでいきたい」

 一方、演出家としては、「稽古中、椅子を持ってきてもらえるなど“手薄い介護”を受けられるようになってきた」と苦笑しつつ、「頭も体もまだ動く」とも。英国・ロマン主義の画家ターナーと、フランス印象派の巨匠モネ…。晩年、作風を変えながら傑作を残した2人を「憧れ」と言い、こう続けた。「僕においても老いや体の衰えが、逆に世界の広がりに通じるようになれば…。自分も“死の世界”に浸透していき、90歳くらいで『超抽象演劇』みたいなものができれば面白いと思っています」

「オセロー」
 29日(土)〜7月7日(日)、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA(タカシマヤタイムズスクエア南館7F、JR新宿駅徒歩5分)で。全10公演。昼公演は午後1時半開演で、夜公演は同6時半開演。

 作:ウィリアム・シェークスピア、訳:小田島雄志、演出:鵜山仁、出演:横田栄司、浅野雅博、saraほか。

 全席指定。一般6500円。文学座(チケット専用)Tel.0120・481034

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