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  東京版 令和5年8月下旬号  
津軽塗がつなぐ父娘の絆  俳優・小林薫さん

映画「バカ塗りの娘」では、娘・美也子が津軽塗を継ぎたいと言ったとき清史郎は反対したが、小林さん自身は「子どもの好きなことをやらせるのが一番だと思っています」と話す。「中学生の息子がいるんですが、彼が突然、『中学を卒業したら漁師になりたい』と言ってきたときも反対しませんでしたね」
9月1日公開の映画「バカ塗りの娘」に出演
 「津軽弁が難しかった。何度やってもできない発音があって、七転八倒しながらせりふと格闘しました」と話すのは、9月1日から全国公開される映画「バカ塗りの娘」で青森の伝統工芸、津軽塗の職人を演じた俳優の小林薫さん(71)だ。撮影前から方言指導を受けて撮影に臨んだが、「現場でも何十回となくチェックを受けた」と苦笑い。映画は、青森県弘前市を舞台に津軽の四季折々の風景や土地に根付く食材と料理、そして人々の魅力を織り交ぜて、ひたむきに生きる津軽塗職人の一家を描いている。

 映画「バカ塗りの娘」は、青森県出身の作家、髙森美由紀の小説「ジャパン・ディグニティ」(産業編集センター)が原作。小林さん演じる青木清史郎は、津軽塗の名匠だった祖父から津軽塗を継いだが、今は注文も減ってしまい経済的にも苦労している。仕事を優先するあまり、妻は家を出ていき、離れに工房がある自宅で娘の美也子と暮らしている。津軽塗を継ぐと期待していた長男で美也子の兄、ユウは美容師になってしまい、気が付けば家族はバラバラになっていた。

 日本人にとって大切な日用品として昔から使われてきた漆器。中でも、津軽塗は“漆を塗っては研(と)ぐ”を繰り返し、完成までに48もの工程があるという。「バカに塗って、バカに手間暇かけて、バカに丈夫」なところから、“バカ塗り”ともいわれる。「手を抜いたら津軽塗じゃないんだと職人さんは“バカ塗り”にこだわっています。ほかの地域の漆器では多分そこまで漆を塗らないんじゃないですか。それだけに津軽塗は美しいんですが高価でもあるので、需要を増やすのは大変だなと思いました」と話す小林さん。

 小林さんは今回の映画のロケ中、菓子入れ用に津軽塗の小さな重箱を買い求めたという。今では、正月用などの需要に限られる津軽塗は斜陽産業となり、後継者不足に悩まされている。映画では廃校、老人ホームなども映し出され、少子高齢化という現代日本のいびつな社会構造についても考えさせられる。

自分の経験と重なる
 物語は、スーパーでレジのアルバイトをしながら父の津軽塗を手伝っていた美也子が、「私、漆を続ける」と宣言したことから新たな展開へ—。清史郎は今の時代、津軽塗で食べていくことは簡単じゃないと美也子を突き放すのだが…。「かつての分かりやすい父親像だったら、『ダメだ』って押し切れるんでしょうけれど、時代が変わって、清史郎自身もそう言い切るだけの自信がない。美也子の気持ちを肯定せざるを得ない気持ちがどこかにあったんだろうと思います」と小林さんは清史郎の心情を思いやる。実は、小林さんにも似たような経験があった。「私が演劇の道を目指したころ父は定年間近でした。すでに、『東京に行く』と決めていたんですが、親としては演劇の世界に入ってもうまくいくわけがないと思っていたようです。東京へ行くと報告したときに、『どうかな?』と言って反対されました」

 小林さんは1951年京都市生まれ。10歳年上の兄の影響で演劇に興味を持ち、18歳から大阪の俳優養成所に通いながら働いていたが、そのうち東京で演劇をやろうと決意。しかし東京には知り合いもおらず、まとまったお金もなかった。「まずは東京でアパートの家賃が払えるだけのお金をためよう」という小林さんの気持ちを知ったアルバイト先の雇用主が給料の1カ月分を上乗せしてくれ、それで上京することができた。「すごくありがたかった。そのお金でなんとかアパートが借りられました」。20歳で上京した小林さんは当時、ブームだったアングラ演劇をけん引していた唐十郎主宰の「状況劇場」に入団、舞台俳優としてキャリアを積んでいく。そして、77年に「はなれ瞽女おりん」(篠田正浩監督)で映画デビューする。29歳で「状況劇場」を退団してからは、主に映像の世界で活躍するようになり、「それから」(85年、森田芳光監督)、「秘密」(99年、滝田洋二郎監督)、「東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜」(2007年、松岡錠司監督)などの映画に出演。テレビドラマでは「ナニワ金融道」シリーズ、「Dr.コトー診療所」シリーズ、「深夜食堂」シリーズなどに出演している。

「争うより仲良く」
 主役から悪役まで幅広く演じる小林さんは、日本映画界には欠かせない存在。だが、芸歴50年を超えるキャリアを積んだ今も、「俳優の世界を楽しく感じるような余裕は全くありません。一生懸命仕事をしている感じですね」と話す。「職人の世界に例えたら、不器用だけどなんとかやっているというタイプじゃないですか」と自らを評している。

 映画は、ラスト近くで美也子の津軽塗への挑戦をきっかけに父娘はお互いの存在を身近に感じるようになっていく。「僕自身はこのシーンで何だか幸せな気持ちになりました」と小林さん。「武者小路実篤の『仲よき事は美しき哉』ではないですが、人は、争うより仲良くなっていく人を見ると幸せな気分になるんだと思いました」


©2023「バカ塗りの娘」製作委員会
「バカ塗りの娘」 日本映画
 監督:鶴岡慧子、脚本:鶴岡慧子、小嶋健作、企画プロデュース:盛夏子、出演:堀田真由、坂東龍汰、宮田俊哉、片岡礼子、酒向芳、松金よね子、篠井英介、鈴木正幸、ジョナゴールド、王林、木野花、坂本長利、小林薫ほか。118分。

 9月1日(金)から、シネスイッチ銀座(Tel.03・3561・0707)ほかで全国公開。

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