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  東京版 令和4年10月下旬号  
洋楽と邦楽の共演、「新しい日本歌曲」創る  声楽家・森田澄夫さん

30代初め、国際ロータリークラブ財団奨学生として5年間、イタリアに留学した森田さん。現地で「音楽関係の人や実業家など、いろんなロータリアンと交流できたのはラッキーでした」と話す。帰国後もロータリーで催される音楽会への出演などを通じ、「ロータリーの人たちとの接点は今も続いています」
新作公演「邦楽器とともに」、10月28日に開催
 作曲家・筝曲家の宮城道雄らが「新日本音楽運動」を起こしたのは約100年前。新しい邦楽を目指して洋楽の技法を大胆に取り入れた。そして今、その動きとは逆に、洋楽の声楽家らが箏(こと)などの邦楽器と共演して歌う“新しい日本歌曲”の創作に挑戦している。その先駆者が声楽家の森田澄夫さん(76)だ。自ら設立し代表を務める日本歌曲協会主催の新作公演「邦楽器とともに」は28日開催の秋公演で17年目を迎えた。森田さんは、「改訂初演を含む新作は135曲に増え、ルーツの違う洋楽と邦楽がやっとなじんできました」と目を細める。

 毎年、秋に行われる「邦楽器とともに」の公演では、日本語の詩に付曲した新曲をソプラノやテノールの歌手が箏、尺八、三味線、薩摩琵琶などの邦楽器の伴奏で歌う。「日本の気候風土に育まれ、日本人の心を表すのに最も適しているのが邦楽器。その伝統楽器を使って声楽家が歌う声楽曲“現代日本の歌”を創ろう」という発想から始まったのが「邦楽とともに」の公演だ。2018年からは春の公演も加わって、春と秋の年2回、開催している。

 森田さんが「邦楽器とともに」を始めるヒントを得たのは、ある曲がきっかけだった。その曲、筝曲家の野坂操壽(二代目)が演奏する三木稔作曲の「箏譚詩集」を聞いたとき「邦楽器で洋楽と同じようなこともできるのか」と衝撃を受け、「声楽家が邦楽奏者と一緒に演奏すれば“新しい何か”ができるのでは」とひらめいた。当時、東京藝術大学大学院生(オペラ科)だった森田さんにとって同曲は「邦楽、洋楽の枠を超えた音」に聞こえた。

「邦楽は両親の音楽」
 声楽家を目指して東京藝術大学、同大学院へと進学した森田さんだったが、子どものころ周囲では「いつも邦楽が流れていました」と話す。九州・福岡市の生家は父が琴古流の尺八奏者、母は宮城道雄から直接教えを受けた筝曲家という家庭だった。そんな両親に反発していた森田さんは、長ずるにつれ洋楽に引かれていく。「邦楽は両親の音楽、自分は洋楽だと思っていました」

 福岡で催された「ドン・コサック合唱団セルゲイ・ジャーロフ」の公演を聞き、「一生を懸けて取り組んでいこう」と声楽家を志したのが高校3年と遅かった森田さん。「運よく藝大に入ることはできましたが、(学友の)みんなと同じようにできるわけがない。遅く始めた分、できるだけ“卒業”をのばして声楽を学ぶ期間を長くしたい」と同大学院修了後の1976年、国際ロータリークラブ財団奨学生としてイタリアに5年間留学し、国立ベルディ音楽院で学ぶ。同国でさまざまな人たちと交流しイタリア人への理解は深まったが、一方で「自分は日本人だ」という意識も強まる。帰国後、声楽家(テノール)としてデビューする際に「西洋の歌と日本の歌を歌っていこう」と決心するが、「現代の邦楽曲はほとんどが楽器の演奏による曲で、歌える曲は少ない」という現実に気付く。

 1901(明治34)年に瀧廉太郎が「荒城の月」(詩:土井晩翠)を作曲し日本歌曲(童謡・唱歌)が誕生。そして、邦楽界にも革命児・宮城道雄が現れ、邦楽器を使って西洋音楽の技法を大胆に取り入れ、楽曲「春の海」に代表される「新日本音楽運動」を推進する。その宮城が発明した十七弦箏など音域、音量の豊かな多弦箏の出現は現代邦楽の器楽曲全盛時代を招来し、歌曲はほとんど姿を消してしまう。イタリアから帰国後、森田さんが「歌える邦楽曲が少ない」と思ったのもこうした背景からだった。

 森田さんは、声楽家として、ヘンデル「メサイア」、ベートーベン「交響曲第9番」のソロ(独唱)、宮城道雄「交声曲 日蓮」など多くの曲をコンサートで歌う一方、50演目以上のオペラ、オペレッタやミュージカルに出演。イタリア古典歌曲から現代日本歌曲までと、幅広く意欲的な活動を続けた。

海外にも発信を
 そして2006年から、声楽家としてデビュー以来の懸案だった「声楽家が歌える曲」づくりに着手する。邦楽器伴奏による日本歌曲の新作コンサートをはじめ、さらなる発展を期し16年には「日本歌曲協会」を設立、代表に就任した。詩人、作曲家、声楽家、邦楽家の4者が所属する同協会では、新作を披露する秋の公演に加え、春の公演も開催。春は新曲の再演や、次代を担う若き音楽家たちの参加、毎回テーマを設定—という三つの柱で開催。最近、動画共有ウェブサイト「You Tube」で年2回の公演を公開するなど、情報発信にも力を入れている。

 日本歌曲協会が発足してから6年。「何もないところから始めてやっと一つの団体としての形が整ってきたかな、と思っています」と森田さんは手応えを感じている。3回連続で文化庁芸術祭参加公演に選ばれるなど、その評価は高まっており、“音楽界の1ジャンル”として認知されるようになってきた。「これからは海外への普及も図っていきたい。世界のタレントを結集して、5年後、10年後にさらなる飛躍を遂げた『邦楽器とともに』の姿を夢見ています」と話す。「邦楽器とともに」の仕事を優先している森田さん。声楽家としての活動は当面、休止状態が続きそうだ。


「邦楽器とともに」の公演「四季と俳句」
(2020年秋)
♪第17回邦楽器とともに 〜2022年 いま届けたい魂のうた〜
 28日(金)午後1時半、東京文化会館(JR上野駅徒歩1分)小ホールで。

 第1部:「組曲『芭蕉と民謡の素敵な関係』」、「午後の電話」、「曲集『あおのふるさと』より『その日—August6』ほか」、「死者の書」、第2部:「秋風幻想」、「生きている」、「『お笛恋語り』より『かえで紅葉はぜ紅葉』ほか」、「横笛の恋」。

 全席自由。一般5000円。問い合わせは日本歌曲協会事務局 Tel.03・6421・2105

【読者割引】
 「第17回邦楽器とともに」のチケット予約(事務局扱いのみ)時に「定年時代を見た」と言えば、一般チケット料金を500円引き。

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