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  東京版 令和4年8月下旬号  
戦争はみな“同じ顔”  ドキュメンタリー映画監督・坂田雅子さん

“枯葉剤3部作”の「集大成」といえる最新作「失われた時の中で」のポスターには、坂田さんの亡き夫グレッグ・デイビスが写された写真が使われている。坂田さんは夫が元気だった頃、「私自身は正直いって、社会の問題にあまり関心を払ってこなかった」と明かす。「個人的な動機」で取材に入ったベトナムで、「私は(社会の問題に)目を見開かされ、社会との絆をつくることができました」とほほ笑む。「グレッグ(夫)の死後、私は彼の導きで“新しい生”を授かった。今は、そんな気もしています」
「枯葉剤」の被害追った最新作「失われた時の中で」公開
 戦争はいつまでも終わらない—。ベトナム戦争の「枯葉剤」の被害を追うドキュメンタリー映画監督・坂田雅子さん(74)の実感だ。奇形などの障害者や家族の“その後”を追った最新作「失われた時の中で」は20日公開。年老いて自身亡き後のわが子を案ずる親、家族の世話で将来の夢を描けない少女…。戦争終結から半世紀近くたつ今も「“真の終わり”は遠い」と明言する。日本は終戦から77年。双方の「戦後」を重ね合わせる。「戦争はみな、同じ顔。弱者を真っ先に苦しめ、ずうっとさいなむ。『絶対駄目』。諦めずに声を上げていくことに希望はあると思います」

 最愛の人との永別は突然だった。2003年春、坂田さんの夫のグレッグ・デイビスは、胃の不調と足の腫れを訴えたわずか2週間後、54歳で他界。ベトナム戦争激戦期の1967〜70年、米軍兵士として戦地に居た夫の死因は、肝臓がんだった。長野県に生まれた坂田さんは京都大学在学中、兵役を終え日本に来ていたデイビスと出会い、やがて結婚。

 坂田さん自身は写真通信社の仕事で忙しい日々を送りながらも、「反戦」の信念を胸にフォト・ジャーナリストになり、ベトナムを含む各国を巡っていた夫に、「誇らしい気持ちを抱いていました」。

55歳から映像学ぶ
 「それなのに…、どうして?」。ぼうぜんとしていた坂田さんに、友人が「枯葉剤が原因では…」。ベトナム戦争中、米軍が当時の「南ベトナム」に散布した枯葉剤は、胎児の異常やがん発症の可能性を高めるダイオキシン類を含んでいた。「(夫の死の)真の原因を知りたい。わらにもすがる思いでした」。55歳で映像制作を学び始め、04年からベトナムへ。手や脚の欠損をはじめとする先天奇形、知的障害、精神障害、がん発症…。1人が複数の障害を負う症例は多く、一つの家に何人もの障害者が居る事例も珍しくない—。強い衝撃を受けながらも取材を重ね、08年に初監督作品「花はどこへいった」を発表した。

 米国政府は今も公式には枯葉剤の人的被害の責任を認めておらず「救いの手は十分でない」。「花はどこへいった」の公開後、1年間ベトナムに住み、障害者やその家族を対象にした奨学金制度「希望の種」を、ベトナムのボランティア団体と共に立ち上げた。「3年間で10万円足らず。それで1人の子の未来が変わります」。さらに、米国の帰還兵とその子どもたちにも目を向け、2作目の「沈黙の春を生きて」(11年)では、「時を超え、国境を超えて続く被害」を描き出した。

「戦争が残すもの」
 最新作公開を控え、こう話す。「今度は『戦争が後(の時代)に残すもの』、言い換えれば“いつまでも終わらない戦争”を見つめた作品です」。経済的に発展するベトナムで、苦しみ続ける人々の存在がかすみつつある現実。作中では、「花はどこへいった」に登場した障害児が成長し、自立した姿が紹介される半面、子どもたちの面倒を長年見る老親の疲れと憂い、父や伯父らの世話で勉強する時間が取れない少女の葛藤が映し出される。加えて、枯葉剤を供給した企業の責任を問う動きも。敗訴した女性の声にも耳を傾け、「企業は散布前から『人体に有害』と分かっていた。『国に頼まれたから』で許されるのでしょうか…」と唇をかむ。

世界の「核」も取材
 坂田さんは東日本大震災、東電福島第一原発事故の後、取材のテーマを世界の「核」にも求め、「わたしの、終わらない旅」(14年)と「モルゲン、明日」(18年)の2作を発表した。「枯葉剤と原発…、『もの』は違うけれど構図は同じ。大量消費を前提にした国家と巨大企業の論理…、しわ寄せを受けるのは、決まって弱者」。10年ほど前から群馬県みなかみ町に暮らし、自然エネルギーを活用した「自然に優しい生活」を実践する。次回作の構想をこう語る。「技術の進歩が戦後日本の暮らしに与えた功罪を検証したい」

 ただ、指摘の中身は厳しくても、その表情は柔らかい。夫の急逝を振り返り、「『残りの人生、どうすればいいの?』とまで思い詰めた」。しかし、「私はベトナムで人々の強さと優しさに癒やされ、『後半生のテーマ』に出合えました」と笑みを見せる。設立から12年の「希望の種」には、これまで1000万円以上の寄付が集まり、100人を超す子どもの勉強に役立っている。「戦争はたくさんのものを奪うけれど、奪えないものもある。それは人間の愛情と絆ではないでしょうか」

 今、ウクライナの母子や高齢者の映像を目にするたび、「時代と場所が違っても、戦争はみな、同じ顔」とあらためて思う。「いつになれば人は学ぶのだろう…」。だが、希望を捨てることは決してない。「組織に頼らない小さな私だからこそ、できることもある。私なりの視点で粘り強く平和のメッセージを発信し、大量消費の発想からは生まれない『真の豊かさ』についても問い掛けていきます」


©2022 Masako Sakata
「失われた時の中で」 日本映画
 監督・撮影:坂田雅子、構成・編集:大重裕二、60分。

 20日(土)から、ポレポレ東中野(Tel.03・3371・0088)ほかで全国順次公開。
【坂田雅子公式サイト 】
 監督作品や奨学金制度「希望の種」などについて紹介。 masakosakata.com

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