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  東京版 令和4年4月下旬号  
チェロは“歌う楽器”  チェリスト・長谷川陽子さん

「ロシア音楽の大家」といわれた師・井上頼豊の影響もあり、長谷川さんは、ショスタコービッチらのロシア音楽を「私の細胞の一部のように感じてきた」と話す。「でも今は、本来、音楽とは関係のない理由から、人前で弾くのをやめています」。フィンランド留学時は、「友人たちと『ロシアが攻めてきたらどうする?』といった会話が普通にあった」と回想する。「ウクライナ人道支援の寄付をさせていただいた」と言い、祈るような思いも語る。「早く平和が戻ってほしい。そしていつの日か、ロシア音楽をまたお聞かせしたいです」
5月、ベートーベンのチェロ・ソナタ全曲を演奏
 チェロは朗々と歌う楽器—。日本を代表するチェリストの一人・長谷川陽子さん(52)は、チェロの魅力をこう言い表す。「あたかも人の歌声のような、慈しみと温かさに満ちた音色です」。5月のデビュー35周年記念リサイタルでは、ベートーベンのチェロ・ソナタ全曲演奏に挑戦する。コロナ禍で公演中止が相次いだ中、「ベートーベンの作品とじっくり向き合い、その深淵(しんえん)に触れることができました」。困難の中、人を前向きにさせてくれる力を、「楽聖」の一番の本質と考える。「そんな私の実感を皆さまと共有できれば、うれしいです」

 「(演奏は)『不要不急』と言われ、すごくショックでした」。2020年春以降、公演の多くが延期・中止となった長谷川さんはかみ締める。緊急事態宣言の合間に実現した公演もあったが、「開催(の有無)が直前まで決まらないことが度重なって…、本当に心が折れそうになりました」。そんな中、練習で弾いたベートーベンの楽曲に、「弱い自分が叱られ、そして励まされたように感じました」と言葉に力を込める。

 聴覚を失いながらも、傑作の数々を生み出した生涯に思いをはせる。「苦難の中から生まれた作品は、誠実で潔く、力強い。その上、弱さを含め全てを包む優しさもある、人間愛にあふれた音楽です」

カザルスの音色
 東京に生まれた長谷川さんは3歳のとき、レコードでパブロ・カザルスのチェロを耳にし、「その音色が今も記憶に残っている」と、笑みを見せる。9歳で日本チェロ界の先駆者の一人である井上頼豊に師事。15歳のとき、日本音楽コンクール・チェロ部門で2位に入賞し、17歳で初のリサイタルのステージに立った。その後、桐朋学園大学に進んだが、「演奏活動と学業を並行させたら、すり切れてしまうかも…」。井上らの勧めもあり1989年、フィンランドのシベリウス・アカデミーに留学した。92年、同アカデミーを首席で卒業後、演奏活動に注力。レパートリーを広げながら、アコーディオンやギターとの協演を重ねるなど、チェロの新たな可能性も探ってきた。音域の広さが持ち味でもあるチェロの音色は、「温泉に入っているような心地良さ。人の声の周波数に近いとも聞いています」。長谷川さんの表現力は、「色彩のある音色」や「歌うような響き」とも評され、国内外の主要オーケストラから頻繁に協演の声が掛かる。さらに、NHK連続テレビ小説「純情きらり」(06年)ではテーマ曲、NHK大河ドラマ「平清盛」(12年)ではエンディング・テーマ曲を演奏。ファンクラブが結成されるなど、その人気はクラシック音楽の垣根を越える。

“楷書”の印象
 ただ、「これまで積極的にベートーベンを弾くことはありませんでした」。楽曲の素晴らしさに引き込まれながらも、演奏家としては「楽譜は厳密で、習字に例えれば『楷書の手本をなぞらないと…』という印象があった」と明かす。コロナ禍でぽっかり空いたスケジュールが、「結果として、ベートーベンの曲に取り組む好機になった。貴族のための音楽を脱し、曲に自身の真情を吐露した彼の神髄に無我夢中で迫りました」。5月のリサイタルで演奏する5曲は、ベートーベンの「初期・中期・後期の入り口」にわたる。「曲作りの推移、特に『チェロならでは』の音楽が生まれ、優美に巨大になっていくさまを一夜にして感じ取れる構成です」

 チェロ・ソナタ全曲をはじめベートーベンの室内楽曲を収めたデビュー35周年記念CDも5月リリースを予定。CD収録、リサイタルの双方で協演のピアニスト・松本和将を「国内屈指のベートーベン弾き」と評した上で言葉を継ぐ。「今なら、私なりに理想とする『楷書の枠ぎりぎり』を攻められる。松本さんなら、それをがっちり受け止めてくれます(笑)」

円熟の「糧」に
 長谷川さんは自身の出産・子育てと演奏活動の両立に悩んだ経験を生かし、「0歳児とおでかけ応援プロジェクト」コンサートに企画段階から参加。テレビやラジオの音楽番組にも積極的に出演し、「感動の共有の広がり」に努めてきた。「今後も応援プロジェクトは続けたい」。大の愛猫家としても知られるが、「あと何年かしたら猫だけでなく、孫も抱けるかも?」とほほ笑み、視線をより先に向ける。「おばあちゃん演奏家になったとき、『コロナ禍も円熟の糧になった』と思えるよう、前を向いていく。私にそう思わせてくれたベートーベンの曲からは、苦悩と混沌(こんとん)の中で輝く“希望の光”も聞こえてきます」


©武藤章
♪ デビュー35周年 長谷川陽子チェロ・リサイタル ベートーヴェン・チェロ・ソナタ全曲演奏会 ♪
 5月19日(木)午後7時、東京文化会館(JR上野駅徒歩1分)小ホールで。

 予定曲:ベートーベン「チェロ・ソナタ第1番ヘ長調」「同第2番ト短調」「同第4番ハ長調」「同第3番イ長調」「同第5番ニ長調」(演奏順)。チェロ:長谷川陽子、ピアノ:松本和将。

 全席指定5000円。ジャパン・アーツぴあ Tel.0570・00・1212

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