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  東京版 令和4年2月下旬号  
紛争地帯の“生”を撮る  ドキュメンタリー映像作家 ジャンフランコ・ロージさん

ロージ監督が「『国境の夜想曲』の仕事がすべて終わったら、ぜひ行きたい」と言って挙げたのは、なんと日本。「日本で学生たちに映画について教えながら1、2年間住んで、学生らと一緒にドキュメンタリー映画を作りたい。教授職を求めています」
監督作「国境の夜想曲」が公開中
 イラク、シリア、それら国々の国境を越えて広がるクルド人の居住領域クルディスタン、そしてレバノン—。この中東と呼ばれる南西アジア地域では、2001年の「9・11米同時多発テロ」などに端を発し現在に至るまで侵略、圧政、テロリズムで多くの人々が犠牲になっている。そんな危険地帯で、イタリアのジャンフランコ・ロージ監督(57)が3年以上かけて撮影したドキュメンタリー映画「国境の夜想曲」が上映中だ。「中東の国境地帯でISIS(イスラム国)などから被害を受けた人々に会い、そこでどんな悲劇が起きたのかを見ることができました」と話す。

  夜の闇のような絶望に満ちた生活の中で懸命に生きようとする人々マイナス。ロージ監督は「国境の夜想曲」で、その姿を詩情豊かな映像として映し出した。

 「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」で2013年度ベネチア国際映画祭金獅子賞、「海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜」で16年度ベルリン国際映画祭金熊賞、17年度アカデミー賞ノミネートを果たしたロージ監督。そんなドキュメンタリー映画の名匠が選んだ最新作のテーマは、戦争に翻弄(ほんろう)され続ける中東の国境地帯だった。その理由について、次のように話す。

映画通し「真実」伝える
 「前作では、自国で起きた悲劇から逃れるためヨーロッパに押し寄せてきたたくさんの人々と出会いました。その次に、実際に悲劇が起こった場所に赴くのは私にとって自然なステップでした」

 撮影チームのロージ監督(兼カメラマン)とアシスタント、それに運転手の3人が入ったのは、イラクとシリアにまたがる地域で活動するイスラム過激派組織ISIS(イスラム国)やシーア派、スンニ派など、さまざまな勢力がせめぎ合う危険な地域。ロージ監督は、最初の8カ月間カメラを持たず現地に赴き、被害を受けた人々に会った。“初めはカメラを持たない”というのがロージ監督の取材方法。「カメラ無しで現地に赴き、被害に遭った人々に会うというステップが大事でした」。初めからカメラを持っていくと「カメラに映像を残さなければと、妄執にとらわれる」と言う。8カ月がたってカメラを回し始めたが、「同じ場所を一度で撮り切ることはほとんどありませんでした」。

 中でも数多く訪れたのは、孤児院と精神病院だった。孤児院にはISISによって村を破壊され、両親を失った子どもたちがいた。子どもたちが自らの悲惨な体験を話す場面を撮影したロージ監督。「あのシーンを撮るのはとても痛ましく、映画の中でどの証言を使うかという取捨選択も難しかった」

 現地で撮影した時期は、ISIS崩壊の後、新型コロナウイルスによるパンデミックが始まる前だった。「現地に住む人々とのやりとりをもとにストーリーを考えていく」というのがロージ監督のスタイル。映画を見る人は、ロージ監督が出会った人々を一緒に追いかけるようにして見て行き、ラストシーンにたどり着く、という構成になっている。

映画作りの原点
 「最初はカメラを持たない」「長い期間を現地で過ごす」など、ロージ監督独自の映画作りの方法はどのようにして生まれたのか。その原点は、インドで映画を撮った20代のころにさかのぼる。

 アフリカの角と呼ばれるアフリカ大陸北東部・エリトリアの首都アスマラに生まれたロージ監督。エリトリア独立戦争のとき、13歳で家族と離れてイタリアへ。青年期をローマとトルコのイスタンブールで過ごす。イタリアの大学を卒業後、1985年に米ニューヨーク大学フィルム・スクールで学んだ。同大学では最初にストーリーを書き、それに沿って俳優をキャスティングし撮影クルーを組み、3、4日で短編を撮るという映画の作り方を学んだものの、「自分がやりたいこととは全然違う」と感じていたという。そんなある日、ドキュメンタリー映画「シャーマンズ・マーチ」(85年、ロス・マケルウィー監督)を見た。一人の男が16ミリカメラとマイクを持って、ストーリーを探しながら街の中を歩くという映画を見終わったとき、「僕もこうやって一人で映画を作ろうと思った」。

 さっそくマイアミで5人のショートストーリーを撮ったところ、その映像を見た人から「まるで(ヒンズー教の一大聖地)インドのバーラーナシー(ベナレス)で撮ったようだ」と言われ、バーラーナシーへ行くことに—。同地でカメラを持ち、「何か面白い話はないか」と2カ月間歩き回ったが、何も見つからない。あと2、3日で滞在が終わるというとき、「もう映画はいい。ツーリストになろう」とカメラを置いて街中を歩いて出会ったのがボパールという男だった。ボートのこぎ手だった彼とボートに乗って丸一日いろんなところを巡っていて、「この光景を撮りたい」とひらめいた。結局、それから5年間、バーラーナシーに通って撮ったのが、初のドキュメンタリー映画「ボートマン」(93年)だった。

 このガンジス川の船乗りを撮った中編を製作する過程で、「数多くのことを学んだ」とロージ監督。カメラの持ち方からストーリーの組み立て方、カメラと被写体との距離感、(被写体に)質問しない、見る人を旅路に誘わなければいけない—ということまで、現在の映画製作方法のほとんどは、同作から編み出された。「この作品で私はドキュメンタリー映像作家になったんです」

 今作「国境の夜想曲」では、「紛争の最前線である国境に沿って生きる人々の日常をしっかり伝えようと思った」と話すロージ監督。これからも、映画という表現媒体を通じて「真実」を伝えていく姿勢は変わらない。


© 21 UNO FILM / STEMAL ENTERTAINMENT / LES FILMS D'ICI / ARTE FRANCE CINÉMA / Notturno NATION FILMS GмвH/ MIZZI STOCK ENTERTAINMENT GвR
「国境の夜想曲」 イタリア・フランス・ドイツ映画
 監督・撮影:ジャンフランコ・ロージ、編集:ヤコポ・クワドリ。104分。
 Bunkamuraル・シネマ(Tel.03・3477・9111)ほかで全国順次公開中。

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