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  東京版 令和2年12月下旬号  
「原発事故…まだ、終わっていない」  映画監督・林海象さん

林さんは映像作家として活動するほか、2007年から京都芸術大学や東北芸術工科大学で学生を教えてきた。「若い人材を育成しないと映画は滅びる」という思いからだ。かつての教え子には女優・黒木華も
7年ぶりの新作「BOLT」公開中
 大地震で原子力発電所のボルトが緩み、配管から放射能に汚染された冷却水が漏れ出した—。そんな未曽有の事態に人生が大きく翻弄(ほんろう)されていく男を描いた映画「BOLT」が劇場公開中だ。34年前にモノクロ・無声映画「夢みるように眠りたい」で監督デビューした林海象(はやし・かいぞう)さん(63)の7年ぶりの新作となった同映画。ボルトを締めに行って被ばくし失職した男を描くことで林さんは、東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所事故への処理が、10年近くたった今も「まだ、終わっていない」というメッセージを込めている。

 映画「BOLT」は3話構成。第1話「BOLT」は原発が舞台。ある日、日本のある場所で起きた大地震の振動で原発のボルトが緩み、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ出す事故が発生。それを止めるためにボルト締めの作業にあたった男たちの物語だ。第2話「LIFE」は、原発事故後も避難指示区域に住み続けて孤独死した老人の遺品回収に行った男が目にした現実を描いた。第3話「GOOD YEAR」は、山形の廃工場で放射能除去装置をつくろうとしている男のところに謎の女が…。その女は、大地震直後の大津波に飲み込まれた妻によく似ていた—。第1話から第3話まで、主人公の男を俳優・永瀬正敏が演じるオムニバス形式の映画だ。

 「『BOLT』を映画にしたいと思ったのは、福島第一原発事故の写真展で話を聞いたときでした」と林さん。

 東日本大震災の翌年、京都で開かれた原発事故関連の写真展で撮影者の作業員から、「一つのボルトを締めるのに延べ200人がかりの作業だった」と聞いた。しかも、「ボルトを締めるのは1人1回だけ。もう1回締めようとしても『帰れ』と言われた」という話に強い印象を受け、「これを映画にしたい」と思ったという。

 しかし、実際に撮り始めてみると、完成するまで6年を費やすことに—。「こんなに時間がかかったのは今回が初めて。心身ともに疲れました」と苦笑する。作品の完成度を高めるために、音響などの仕上げ作業に時間がかかり、その都度資金不足に悩まされたという。ある美術館で開かれていた個展会場を映画の撮影現場に提供してもらうなどで製作コストを大幅に抑えたが、それでも製作費は3000万円近くかかったと話す。

 「私立探偵 濱マイク」シリーズ(1993〜96)や「彌勒 MIROKU」(2013)などの作品で知られる林さん。今では、独特の作風で根強いファンを持つ映像作家として映画界に確固たる地位を占めるが、監督への道は決して生易しいものではなかった。

1日500円生活
 京都生まれ、京都育ちの林さんは子どものころから映画好きで、将来、映画監督になるのが夢だった。両親は大反対していたが映画監督になる夢を捨て切れず、立命館大学経済学部2年のとき大学を退学して上京。すぐに寺山修司主宰の劇団「天井桟敷」に入団したものの、同劇団は厳しいタテ社会。1年も我慢できず飛び出すことに—。その後は頼る人もいない東京でアルバイトをしながらの生活が続く。「建設労働者など20種ぐらいの仕事をしました。ひと月の家賃が1万5000円の部屋に住み、1日500円で暮らしていましたね」。監督になる志は持ち続けていたものの、映画界につてがあるわけでもなく、将来が全く見えない中、窮乏生活が長く続いた。

 そんな林さんが26歳のとき、仲の良かった7歳年下の弟が突然、亡くなった。「血液のがんでした。弟が息を引き取るのを病室で見ていたにもかかわらず、弟の死はにわかに信じられませんでしたね」。弟が12歳のころに林さんが東京へ出てしまったため、かまってやれなかったことが悔やまれた。19歳で人生の幕を閉じた弟のことを思っていると、「自分は今まで監督になると公言しながら、そのために何もしていない」と気付いた。そこで「映画を作ろう」と発奮、脚本を書き始めた。

 しばらくして脚本が出来上がり、知人から紹介してもらったピンク映画の監督に映画製作について尋ねると、「500万円あったら映画は撮れるよ」と言われた。すぐに林さんは「お金は集めるので、お願いします」と答えたが、1日500円生活の林さんにとって500万円はどうやっても工面できない。そのうちに製作スタッフも集まりだし、もう後には引けない。骨董(こっとう)商を営んでいた父に頼み込むしかなかった。大学を中退し、家出同然に飛び出した林さんの借金の申し出に対し、意外にも父はすんなりと500万円を用意してくれたという。「銀行から借りたのか、貯金から出したのか分かりませんが、今もこのことには感謝しています」

デビュー作も公開
 そうやって完成した作品が林さんの映画監督デビュー作「夢みるように眠りたい」(86)。永瀬とともに「BOLT」に出演している俳優・佐野史郎のデビュー作としても知られている同映画は、今回、クラウドファンディング(インターネットサイトを通して広く資金を集める仕組み)により集められた資金でデジタルリマスターされ、「BOLT」と同時公開中だ。

 これまで「映画は人生の夢の部分を描くべき」と考え、多くの映像作品を作ってきた林さん。今も「映画を政治的発言の道具としては使わない」という思いは変わらない。しかし、福島第一原発事故が原因で起こった汚染水の問題や避難指示区域から退去させられた人々の問題は震災から10年近くたつ今も「まだ、解決できていない」。今回の新作「BOLT」の背景には、「人の運命の残酷性や、解決されていない問題が現実にある、というメッセージが込められています」と話す。


©レスパスビジョン / ドリーム キッド
/ 海象プロダクション
「BOLT」 日本映画
 監督・脚本:林海象、プロデューサー:根岸吉太郎、美術:ヤノベケンジ、出演:永瀬正敏、佐野史郎、月船さらら、佐藤浩市(声)ほか。80分。

 ユーロスペース(Tel.03・3461・0211)などで公開中。

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