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  東京版 令和2年6月下旬号  
和洋を超える横笛の音楽  “二刀流”横笛奏者・西川浩平さん

「生涯現役を自負するつもりはありませんが、今回のコロナ騒ぎで隠居が怖くなくなりました」と西川さん。「最近は夫婦両方とも全ての仕事がお休みとなりずっと在宅です。隠居とはこういう生活になるんだなと。図らずも予行演習ができました(笑)」
琵琶奏者と7月にセッション
 若き日に気鋭のフルート奏者として活躍、長じては篠笛(しのぶえ)など伝統邦楽の世界で修業を積み、いまや和洋二刀流の横笛奏者として注目を集める異色の音楽家・西川浩平さん(66)。7月の公演では、「平家物語」を弾き語る琵琶の名人らとセッション。和洋の枠を超えたその至芸を披露する。「自分だけの音楽に出合いたいとの一念でここまで来ました。琵琶奏者がつまびく墨絵の絵物語のような『平家物語』に、自分の伴奏で総天然色の背景を描きたいです」

 当日は3人の琵琶奏者一人一人との競演や、全員での合奏も。幽玄の音を響かせるフルート吹奏や、邦楽の横笛、また珍しい民族楽器の伴奏で琵琶の音と語りを引き立てるほか、話のクライマックスでは琵琶奏者らと“対決”するという。「盛り上がりの頂点では、琵琶と笛、双方の心のこもった音がどうしても重なります。『平家物語』の栄枯盛衰は、現代にも通じる普遍的なテーマ。琵琶の弾き語りが『もののあはれ』の幻影(イメージ)を聴衆の魂に語り掛けるならば、私は音で“ディテール”を描き、聞く人の脳内でフルカラーの情景が浮かぶような臨場感ある新しい『平家物語』をお聞かせしたいです」

 西川さんは1953年、東京・中野で誕生。中学で吹奏楽部に入部、フルートの旋律に魅せられ音楽の道に生きることを決意。音楽で有名な名門高校に進学し、ある日の練習でのこと。指揮者から、「この曲は横笛のつもりでフルートを吹いてほしい」と指導され、邦楽の囃子(はやし)を参考にするため歌舞伎を見学。「そこで能管(横笛の一種)の音色に魂をつかまれました。そこから“二刀流”への模索が始まりましたね」

大フィルで一番奏者
 以後、学校でフルートを学びながら邦楽の門をたたき、並行して横笛を修業。フルートでは78年、24歳で大阪フィルハーモニー交響楽団のフルート一番奏者に就任。同年には第1回オーストラリア国際フルートコンクールで第3位入賞を果たす。そして自身のリサイタルを開いた際には前半でフルート、後半に横笛の演奏を披露した。だが、「横笛は趣味の域を出ず、どうしても納得できなかった」と、本格的な邦楽修業を決意する。

 背水の陣で臨もうと、27歳で大フィルを退団。「和洋の違いはあれど、同じ横笛。こちらの頂から尾根伝いに向こうの頂に登れる。そう軽く考えていました」

 だが、それはいばらの道だった。「本格的に始めてみれば洋楽器と和楽器の演奏では、“言語が異なる”とおぼしいほど根底的に違うことが分かりました。麓に降りてもう一度、一から登り直しでした」

 邦楽の旋律を五線譜に落とし込むことはできても、そのまま吹くだけでは一流の演奏はとてもできない。邦楽の家元に伝わる「口唱歌(くちしょうが)」と呼ばれる、西洋音楽の理論では説明できない口伝を頭にたたき込まなければ、スタート地点にすら立てなかったのだ。西川さんは本格的な修業のため、30歳を前に封建的な邦楽の世界に足を踏み入れるが、「経済的にも精神的にも困窮しました」と苦笑する。「収入はゼロ。でも結構な額の稽古代は必要で、深夜に焼き肉の鉄板洗いなどのアルバイトをしていました。きつかったですね(笑)」

 また、古巣のクラシック界からも、邦楽の世界からも、西川さんの“二刀流”への情熱は理解を得られず、双方から冷たい目で見られていたと振り返る。そんな中、37歳ころにたまたまの出会いがあり歌舞伎の囃子方となることができ一息付けたという。

一時はカナダに拠点
 だが、経済的に安定すると「自分だけの音楽との出合い」のため、3年ほどで歌舞伎の世界を離れ、コンサート活動に移る。拠点としたのはカナダ・トロントとモントリオールの2都市。ピアニストの妻と、洋楽の打楽器奏者、中国琵琶の奏者、そして作曲家と組み、「西川アンサンブル」を結成。さまざまな民族楽器の編成で各国・地域の文化や歴史の枠を超えた普遍的な音楽を目指した。「邦楽や民族楽器の音色を一定のイメージにとらわれず、音楽として素直に楽しんでほしかったんです。移民が多く、さまざまな文化が混然となったカナダの人々は聴衆として最適でした」

 次々と革新的な音楽を奏でることはできたが、楽団の運営から雑用まで一人で背負い込んだことから西川さん自身が疲弊。「西川アンサンブル」は約10年で終了する。現在は日本を拠点に、演奏活動のほか、大学などさまざまな教育機関で邦楽の講師として教壇に立つ。著作者としても「敷居の高い」邦楽の世界を紹介している。「外からは封建的に見える邦楽の伝統も、実は理にかなっています。洋楽専攻の学生に邦楽の世界を紹介するのはとても面白いですね」

 もちろん、「自分だけの音楽との出合い」の追究は今も続く。「演奏を褒められることはありますが、『あんなこと誰もしない。あなたならではですね』と言われるのが一番うれしいです。これからもナンバーワンではなく、オンリーワンを目指していきます」


前回の様子
♪ 筑前琵琶 故上原まりを偲んで
 「平家物語を語る〜琵琶と横笛の戦い〜」

 7月11日(土)午後1時半、二十五世観世左近記念観世能楽堂(GINZA SIX地下3階、地下鉄銀座駅徒歩2分)で。

 予定曲:「平家物語」より「衹園精舎」「入道死去」「壇ノ浦」ほか。出演:須田誠舟(薩摩琵琶)、鶴山旭翔(筑前琵琶)、川嶋信子(薩摩琵琶・鶴田流)、西川浩平(横笛)。

 全席指定。S席5000円、A席4500円、B席4000円。問い合わせはインターナショナル・カルチャー Tel.03・3402・2171

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