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井上ひさし作「太鼓たたいて笛ふいて」など、舞台での活躍が多かった神野さん。40代後半からは映画出演も増え、「これからも多くの映画に出演したい」と意欲を見せる |
映画「37セカンズ」、2月7日公開
生まれたときに37秒間呼吸できなかったことで障害を負い、車椅子生活を送る娘とその母を描いた映画「37セカンズ(サーティセブンセカンズ)」が2月7日から公開される。母親役で出演した女優の神野三鈴さん(53)は、映画出演以来、街を歩いていて「この道は幅が狭くて車椅子では通れないなとか、バリアフリーになっていないなとか、以前は気付かなかったところが気になるようになりました」と話す。成長した娘に対し、つい過保護になってしまう母親が娘の自立を通し、前向きに生きようとする姿を熱演した。
23歳の貴田ユマは体に障害を抱え、車椅子がないと移動できない。そんなユマを母の恭子は、シングルマザーとして働きながら育ててきた。漫画が大好きなユマは、漫画家のゴーストライターをしているが、いつか自分の名前で漫画を発表したいと思っている。「いい作品を描くためには母から自立しなければ」と思ったユマは自宅を飛び出すが…。
同映画の主人公・貴田ユマを演じる佳山明は、ユマの“モデル”。佳山の出演が決まってから、ユマの設定が脊髄損傷を負った女性から佳山と同じく、出産時に障害を負った女性に変わった。HIKARI監督が体に障害を持つ女性を公募した中から見いだされた演技初挑戦の佳山。彼女の母役を務めることになった神野さんは撮影に入る前、「佳山さんと一緒に生活したい」と監督に訴えた。「ユマが自分で何ができ、何ができないのかを知る必要がある」と感じたからだ。数日間ではあったが、東京・高円寺のマンションで一緒に食事し風呂に入り、眠った。
演技初挑戦の主役を支える
また、新宿や表参道でショッピングなどをし、はり・きゅうやマッサージにも。撮影に入ってからは、朝早くから夜遅くまで撮影所での慣れない環境に戸惑う佳山を、神野さんは「踏ん張らなくてはいけないときもあるのよ」と、先輩の役者として叱咤(しった)激励することも何度かあったという。
15歳で舞台のオーディションを受けてデビューし、それから演劇にのめり込んでいったという神野さん。ジャズピアニストの小曽根真との結婚後はニューヨークに住むが、日本にいる母が急病で倒れ、ニューヨークと日本を行ったり来たりしながら13年間母を介護した経験を持つ。しかし、その生活が神野さんを演劇の世界につなぎとめることに…。母の介護で日本にいるときは舞台に立つことができたからだ。
神野さんは今回の映画で恭子を演じ、あらためて母と娘の関係について考えたという。「私も、母に甘やかされ自分が駄目になってしまうと、葛藤を感じた時期がありました」とかつての自分を振り返る。
同作は“母と娘の自立”というテーマが海外でも共感を呼び、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ観客賞を受賞している。 |
©37Seconds filmpartners |
「37セカンズ」 日本映画
監督・脚本:HIKARI、出演:佳山明、神野三鈴、大東駿介、板谷由夏ほか。日本映画。115分。
2月7日(金)から新宿ピカデリー(Tel.050・6861・3011)ほかで全国公開。 |
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