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  東京版 令和元年10月上旬号  
「進化求めて常に挑戦」  歌手・秋元順子さん

現在まで大きな病気はしていないと秋元さん。健康の秘けつを聞くと、「睡眠が大事です。また、バランス良く栄養を取り健康管理にも気を付けています。料理が大好きで、買ってきたものでも栄養面を考えながら極力手を加えて食卓に並べています」
11月、初の本格的タンゴ・コンサート
 遅咲き58歳でメジャーデビュー、“アラ還(還暦前後の人々)の星”と呼ばれ話題をさらうとともに、「愛のままで…」(2008年)の大ヒットで知られる秋元順子さん(72)。15周年を迎えた芸能生活も含めジャズ、ラテン、カンツォーネ、歌謡曲などこれまでさまざまなジャンルを歌い上げてきたが、11月のステージでは初の本格的なタンゴ・コンサートに挑戦するという。「人間というものは常に進化をしていかなくてはいけないと思っておりまして、そのためには挑戦が必要です。今回のタンゴ・コンサートは素晴らしい機会。どんなジャンルの曲でも魂を込めて歌えば、必ずや聞く人の魂に響き、揺さぶると信じています」

 小、中学生のころ、タンゴブームを経験。タンゴ特有のバンドネオンの切ないメロディーは今も印象深いと振り返る秋元さん。ただしこれまで日本の歌謡タンゴを歌ったことはあるが、本場のアルゼンチン・タンゴやヨーロッパのコンチネンタル・タンゴの曲を本格的なステージで歌うのは初めてと話す。「今回、素晴らしいタンゴ楽団とご一緒させていただくことでこの挑戦が実現しました。彼らの演奏、そしてタンゴの魅力を伝えるためにも、当日は“自然体”で聴衆の皆さまに歌声を届けたいと思います」

 秋元さんは1947年、東京の下町生まれ。父は謡曲に浪曲、母は民謡と両親とも音楽好きで、毎日のように二人の練習の歌声が家庭内に響いていたという。「ラジオでかかる歌謡曲からも音楽を吸収していました。中学生のころには深夜放送で流れるフランク・シナトラなどの洋楽にのめりこむようになり、特にナット・キング・コールが大好きでしたね」

幼少時は声に劣等感
 幼少時はおてんばだったと秋元さん。今ではハスキーボイスで多くの聴衆を魅了するが、当時は同級生たちから「男の声みたい」と囃(はや)され、教科書を音読することも恥ずかしいと思うほど自分の声にコンプレックスを持っていたと話す。しかし、小学3年生のとき、教師に独唱を促され頑張って歌うと「良い声ね」と褒められ、教室の皆にも喝采を受けたことからコンプレックスを克服。もとより歌うことは大好きだったが、人前で歌うことに抵抗がなくなったという。「思えばあれが歌手としての私のスタートだったかもしれません」

 小、中、高校では音楽好きの仲間とクラブ活動を謳歌(おうか)。卒業後は家庭の事情で就職するものの同好会活動が盛んな会社で、秋元さんもアフターファイブでハワイアン・バンドの活動を楽しんだ。「皆、アマチュアでしたが素晴らしい演奏家ばかりで、ハワイアンだけでなくさまざまな音楽を教えていただきました」

 その後、秋元さんは結婚し「お花屋さん」の店主夫人に。自ら店頭で接客、事業が軌道に乗ると支店をいくつも出店したが、大きく増員した社員らの面倒を見て、さらに家事、育児とその生活は多忙を極めた。そのため本格的な音楽活動は“休憩”していたというが、「お客さんがいないときを見計らって店内にかかる有線放送に合わせ歌っていました」と、歌声をさび付かせないよう、できる範囲で努力を重ねていたとほほ笑む。

家族も復帰後押し
 結婚してから10年余り、子育てが一段落したころ、1本の電話により“休憩”は終わりを迎える。昔のバンドの仲間が声を掛けてくれ、音楽活動に復帰したのだ。家族も秋元さんの背中を押してくれたという。「せっかくなんだから、とことんまでやってみれば!」

 その後、ジャズに軸足を移し音楽活動を継続。そんなある日、友人を通じて作詩・作曲家の星桂三に出会うチャンスに恵まれる。星に指示された曲を歌うと自費でのCD制作を勧められ、レコーディング。それが「マディソン郡の恋」(04年)だった。同曲はインディーズ版にもかかわらず有線放送の問い合わせチャートで異例の1位を獲得。合計で約6000枚を売り切った。「私も商売人ですし、キャリーケースにCDを詰め営業に駆け回りました」

 これが実を結び翌年、58歳でメジャーデビュー。08年には「マディソン郡の恋」で編曲を担当した花岡優平作詞・作曲の「愛のままで…」でNHK紅白歌合戦出場を果たす。「まさに奇跡でした。兼業主婦が専業歌手になれたのですから…。本当に幸せです」

「次代へ名曲継承」
 現在、古希を過ぎたが毎日楽しく過ごしていると秋元さん。「年を取ると“宝物”が増えるんです。1年ごと、自分が挑戦してきた行いが、次の誕生日に“宝物”として帰ってくる…。そう考えれば年を重ねても1日1日を充実して過ごせます」

 今年も新曲やアルバム制作など精力的に歌手活動に励む。「歌は人生そのものです。これからもオリジナルのほか、日本や世界の名曲を歌っていきたいですね。それにより若い人たちにそれらの歌を歌い継いでもらえるような、そんな歌手になりたいです」

♪ アルゼンチン・タンゴコンサート 〜秋元順子〜世界のタンゴに挑戦 ♪
  11月28日(木)午後2時、東京文化会館(JR上野駅徒歩1分)小ホールで。
 予定曲:「小雨降る径」「恋心」「夜のプラットホーム」「愛のままで…」「或る雨の午後」「ラ・クンパルシータ」ほか。演奏はチコス・デ・パンパ(バンドネオン:北村聡、バイオリン:永野亜希、ピアノ:宮沢由美、コントラバス:佐藤洋嗣)。
 全席指定5400円。問い合わせはインターナショナル・カルチャー Tel.03・3402・2171
CD「令和元年の猫たち〜秋元順子 愛をこめて〜」
シャム猫を抱いて」「なつかない猫」「黒ネコのタンゴ」など“猫の人生”をつづったコンセプト・アルバム。9曲のカバー曲と今年発表の新曲「たそがれ坂の二日月」で構成。
(キングレコード(株)・3000円)

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