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  東京版 令和元年8月下旬号  
結成60周年、受け継がれる“音”  ベンチャーズ

「ベンチャーズ」の現メンバー。(左から)リオン・テイラーさん、ルーク・グリフィンさん、イアン・スポルディングさん、ボブ・スポルディングさん

「ベンチャーズ」の“オリジナル・フォー”。(左から)ドン・ウィルソン、ボブ・ボーグル、メル・テイラー、ノーキー・エドワーズ
9月まで来日ツアー開催
 ベンチャーズ結成60周年―。日本に空前のエレキ・ブームを巻き起こした“ベンチャーズ・サウンド”は、メンバー交代を重ねた今も健在だ。「創生・全盛期」のメンバーと共に活動したボブ・スポルディングさん(72)は、「僕らは、彼らの音楽と精神を継承している」と明言する。その一方、新曲の創作など、「進化」へのチャレンジも怠らない。ボブさんを含む現メンバー4人は、9月まで記念の来日ツアーを行っている。「スタンダード・ナンバーを存分に聞かせた上で、新しい曲も織り込む。ベンチャーズの“今”を体感してほしい」

 「ジャパン・ツアー2019」の幕開けとなった7月27日の東京・小平公演。アンコール曲「キャラヴァン」では、リオン・テイラーさん(63)が、躍動感のあるドラム・ソロを響かせた。ベース・ギターの弦をドラムスティックでたたくパフォーマンスは、すっかりおなじみ。演奏後、立ち上がって声援を送るファンの中には、祖父と孫、母と娘といった、世代を超えた組み合わせも。リズム・ギターのイアン・スポルディングさん(46)と、ベース・ギターのルーク・グリフィンさん(41)は、声を弾ませる。「日本のファンは最高。昔を知る人も、キャリアの浅い僕たち2人を心から応援してくれる」

新しい感性で「進化」も
 アメリカでドン・ウィルソンとボブ・ボーグルが「ベンチャーズ」の名でデビューしたのは1959年。ギターのノーキー・エドワーズが加入した60年には、「ウォーク・ドント・ラン」が全米シングル・チャートを、2位まで駆け上がった。歌の入らないインストゥルメンタルとしては、異例ともいわれた大ヒット。62年には、ドラムのメル・テイラーも加わり、「パイプライン」や「ダイアモンド・ヘッド」など、今はスタンダード・ナンバーとなったカバー曲やオリジナル曲を次々に発表した。ドン、ボブ、ノーキー、メル…。60年代の世界的なエレキ・ブームを担った彼らは、歴代メンバーの中でも“オリジナル・フォー”とたたえられる。

 現在、リード・ギターを担当するボブさんは、父親の仕事の関係で日本に居た62年、ベンチャーズの初来日公演に衝撃を受けた。「すぐにバンド活動を始めた。ギターの先生は日本人(笑)」。81年からレコーディングに参加し、「5人目のベンチャーズ」とも呼ばれたベテランは言葉を継ぐ。「“オリジナル・フォー”の音がベンチャーズ・サウンドの根幹」。だが、現在86歳のドンは15年の来日を最後にツアー活動を離れ、ほかの3人は、病気でこの世を去っている。傍らのリオンさんと共に、こうも話す。「ベンチャーズの成功は、常に新しいアイデアを出し合って自分たちの音を磨き上げてきた結果。今のメンバーの感性も生かして、サウンドをさらに進化させたい」。リオンさんは96年の来日ツアー中、病に倒れ、離日10日後に亡くなったメルの長男だ。「(加入から)20年以上、偉大な父を目標にしてきました」

日本の歌謡曲も
 ベンチャーズは08年、エルビス・プレスリーやザ・ビートルズも名を連ねる「ロックの殿堂」入りを果たした後も、日本の津々浦々に足を延ばす。これまでの来日公演数は3千回近く。軽快でスピード感のある音楽は、“テケテケ・サウンド”とも呼ばれるが、ボブさんは「日本人向けの楽曲を作ったのも、僕らが長く愛されている理由では…」と話す。60年代後半から流行した“ベンチャーズ歌謡”。「二人の銀座」や「京都の恋」「雨の御堂筋」などは、今も広く口ずさまれている。4人のメンバーは「僕たちの音楽性は幅広い。コンサートではインストゥルメンタルで“ベンチャーズ歌謡”を披露します」。

「ドンがサポート」
 ベンチャーズのメンバー交代には「原則」がある。それまでのメンバーが年齢や病気を理由に第一線を退く場合、メンバー候補とできる限り長く活動を共にした上で“新たなファミリー”として迎え入れる。「僕は4年ほど『候補』だった。それでもかなり短い方」とルークさん。ボブさんの長男のイアンさんは「幼いころから父に(ギターの)コードを教わった。今は同じメンバーとして、アドバイスを受けている」と話す。

 今夏には60周年記念の「ベスト・アルバム」に加え、現メンバーが全曲を演奏したライブCDを発売した。今はサポート役を務めるドンは、「最高の出来」と満面の笑顔を見せたという。4人はさらに先を見据える。「偉大な先輩たちが創ったサウンドを継ぐのは僕たちの責任。そして大好きな日本に、これからも通い続けます」

♪ ベンチャーズ結成60周年記念 ジャパン・ツアー2019 ♪
【東京・大田公演】
 9月6日(金)午後6時半、大田区民ホール・アプリコ(JR蒲田駅徒歩3分)大ホールで。
 全席指定6000円。

【東京・中野公演】
 9月8日(日)午後4時、中野サンプラザ(JR中野駅徒歩2分)ホールで。
 全席指定6800円。

 問い合わせは大田公演、中野公演ともM&Iカンパニー Tel.03・6276・1144
◆ CD情報 ◆
「ベンチャーズ60周年ヒストリック・オリジナル・コレクション」
 歴代主要メンバーによるベスト・ヒット・ライブ音源の「DISC1」と、オリジナル曲を収録した「DISC2」の2枚組み。
((株)ポニーキャニオン・3000円)

「ベンチャーズ ライブ・アット・ダリルズ・ハウス・クラブ」
 現メンバーによるニューヨーク・ライブを収録。2枚組み。
((株)ポニーキャニオン・3500円)

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