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  東京版 平成29年12月上旬号  
父・永六輔の大往生つづる  長女で映画エッセイストの永千絵さん

永六輔の最後のテレビ出演は昨年2月。「徹子の部屋」で、大きなリクライニングの車椅子にもたれ、同学年の黒柳徹子、大橋巨泉とのトークを披露した。千絵さんは、六輔が前立腺がんの骨転移に伴い、背中の手術を控えていたこともあり、「本心では出演をやめてほしかった」と明かす。「でも父は『2人との約束だから…』と言って、病院から介護タクシーでスタジオ入りしました」
「執筆は自分の癒やしに」
 父・永六輔の大往生の記録—。昨年7月、83歳で死去した永六輔の長女・永千絵さん(58)は、父の介護の日々をつづった「父『永六輔』を看取る」を著した。映画エッセイストとして活躍する傍ら、父と濃密な時間を共有した10年間。前立腺がん、パーキンソン病、背骨の圧迫骨折…。「最期まで好奇心旺盛だった父は、老いや病の中にも“楽しいもの”を探していた」とほほ笑む。「私の個人的な気持ちを形にしていただいた本。執筆は、私の癒やしにもなりました」

 ラジオ・テレビ番組の企画・演出、ラジオパーソナリティー、数々のヒット曲の作詞、老いや死にまつわる市井の言葉を集めたベストセラー「大往生」の執筆…。昭和を代表する「才人」である永六輔の名は、今も至る所で取り上げられる。六輔の本名は「永孝雄」。千絵さんは「家の中と外、言い換えれば『孝雄』と『六輔』の性格・態度に隔たりはありませんでした」と話す。ただ、「私にとっての父はやはり、自分の孫たちからも『孝雄くん』と呼ばれていた白髪のおじいさんです」。みとって程なくしてから“孝雄くんの記録”をメモに取り始めた。「初めは本にする気は全くなく、思い付くままを箇条書きしていました」

 東京に生まれ育った千絵さんは、子どものときの“事件”を降り返る。「父と一緒に外出中、知らない人に笑われた。『(顔が)そっくり』と…。有名人である父を恨みました(笑)」。多忙な父への気遣いに気恥ずかしさも加わり、じっくり話す機会は多くなかった。

 だが、映画の話題になると、「時間を忘れるほど話が弾んだ」。高校時代、映画に関するエッセーを書き始め大学卒業後から本格的に映画エッセイストとして活動する。あえて評論家とは名乗らない。「観客に近い目線で『面白い』と感じた作品を紹介しています」。「親子で映画日和 子どもと映画を楽しむために」(近代映画社)などの著書があるほか、現在も朝日新聞や雑誌「SCREEN」に文章を載せる。自身を「父に比べると内向的」と評する一方、「組織や既成の価値観の『枠』にはまりたくないという性格の“根っこ”は同じです」。六輔は実験放送の段階からテレビに関わりながらも、46年9カ月にわたって「誰かとどこかで」(TBSラジオ)にレギュラー出演するなど、ラジオを活動の軸にした。「自由度の高いラジオの方が、父は『枠』にはまらずにいられたのでは…」

父の“スイッチ”
 「両親は外でも手をつないで歩くほど、仲が良かった」。胃がんに侵された母親が亡くなった2002年には、「父もすごく痩せた」と言う。10年ほど前から、「体調に陰りが見えてきた」。やがて滑舌が悪くなり、ラジオ出演時の話が聞き取りにくいという異変が現れた。妹でフリーアナウンサーの麻理さん(56)や六輔のマネジャーをしていた夫と共に、「病院嫌いの父に検査を受けさせた」。診断結果はパーキンソン病。既に前立腺がんの治療を受け始めていた六輔はその後、大腿(だいたい)骨頸部(けいぶ)骨折や背骨の圧迫骨折といった大けがにも見舞われた。それでも車椅子でスタジオ入り。入院中は病室で収録するなど、亡くなる4カ月余り前までラジオ出演を続けている。

 「僕はパーキンソン病のキーパーソン」。千絵さんは、自ら病名を公表し治療の経緯をリスナーに聞かせた父の声音を思い返す。「体調がいくら悪くてもマイクの前では(六輔として)“スイッチ”が入るようでした」。当時の父の心中を推し量る。「自分の生き方を老いや病も含めて伝えるという気概を持った上で、『面白く、楽しく』と工夫していたのでは…」。一例として、六輔が作詞をした「上を向いて歩こう」にちなむエピソードを挙げた。「リハビリ中、思わず『上を向いて歩こう』と声を掛けたのは私。父はラジオでそれを外国人介護士とのやり取りに仕立て直してしまいました(笑)」


「父『永六輔』を看取る」
(1404円・宝島社)
力合わせ在宅介護
 だが、「親しい人の訃報は、父を気落ちさせました」。12年に小沢昭一、15年に野坂昭如…。さらに前立腺がんの骨転移による背中の痛みが衰弱に拍車を掛けた。千絵さんらは昼夜交替で在宅介護。「私は時間に縛られない仕事だった上に、夫や妹たちと力を合わせられた。(在宅介護は)誰にでも勧められるものではない」。自力で寝返りが打てなくなった父の体位変換のため、3カ月間ほどは毎日、真夜中に起きた。「正直、『いつまで(介護が)続くのか…』と思ったこともあります」

 ただ、その最期は「父に意表を突かれた感じでした」。六輔は亡くなる前夜、いつになく調子が良く、娘2人と家族だんらんを楽しんだ。死因は肺炎だったが、「医師は『老衰といってもいいくらい穏やかに逝かれた』と言ってくださった」。本の執筆を終えた今は介護の苦労も笑って話せる。「晩年の『孝雄くん』とはゆっくり話す時間が持てた。そして『永六輔』のプロ意識の高さ、すごみも目の当たりにしました」。柔和な笑みを見せ、こう結んだ。「父を誇りに思いながらも、私は自立した人間として、いい仕事をしていきたいです」

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