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  東京版 平成29年3月下旬号  
一人芝居「化粧」、“最終公演”に挑む  女優・平淑恵さん

加藤剛主演のテレビドラマ「大岡越前」(第9部〜第15部、2時間スペシャル)で、大岡忠相の妻・雪絵を演じた平さんは「今も『雪絵』のイメージで見られることが多い」とほほ笑む。「雪絵は品のある良妻。『化粧』の女座長は、それとはだいぶ違う」。“きれいごと”では済まない境遇を必死で生きてきた女座長に心を寄せる。「彼女の心の軌跡や悲しみが、これまでの公演以上に、自然とにじみ出るようになれば…」
「役を憑依させる」気構えで
 井上ひさしが残した一人芝居の傑作「化粧」。女優の平淑恵(たいら・よしえ)さん(62)は今春、自身にとっての“ファイナル公演”に挑む。右膝を痛め昨年は活動をほぼ見合わせたが、今は日常生活への支障が全くないほどに回復した。ただ、初演以降、「体力、気力の全てを要求される芝居」と実感するだけに、「『化粧』はこれで最後という覚悟が必要でした」。テレビドラマで演じた“大岡越前の妻”は「品がある」といわれたが、一つのイメージにとどまる意思はない。「役の『女座長』が私自身に乗り移ってくる—。そのくらいの気構えで臨みます」

 憑依(ひょうい)する—。平さんは自分が演じる役柄を“魂”をなぞらえる。

 「公演が近づくと役の人間の性格が“素の私”に染みてきて…、なかなか抜けずに困ってしまう」。自身を「決して器用な役者ではない」と評した上で、「仕事と私生活の切り替えも上手ではない。劇場や稽古場に居ないときも、絶えず役づくりを考えている」と苦笑する。「化粧」の登場人物「五月洋子」は酸いも甘いもかみ分けた、大衆演劇の劇団の女座長。「今は家の中でも(劇中で使う)銚子弁が口をついて出てしまう。しかも男言葉で、家族をびっくりさせています(笑)」

 北海道帯広市に生まれた平さんは都内の短大を卒業後、文学座附属演劇研究所に入所。1年後の1977(昭和52)年、「かもめ」(作:チェーホフ)で初舞台に立った。文学座座員に昇格後も数多くの舞台で主要な役を任され、83年と96年には紀伊國屋演劇賞個人賞に輝いている。テレビドラマにも数多く出演。中でも「大岡越前」(TBS系)の“妻・雪絵”は、お茶の間にとってなじみ深い。85年から15年にわたって演じ、06年の「2時間スペシャル」にも出演した。「すごく楽しい撮影でした」。ただ、「舞台を離れる気は毛頭なかった」と明言する。「生身の自分をさらす舞台は正直怖い。でもお客さまのいろんな反応は、役者を鍛えてくださいます」

名優2人の“後継
 96年には杉村春子が名優の座を不動のものにした「女の一生」(作:森本薫)の「布引けい」役を、杉村から直接託された。さらにその10数年後、日本を代表する演出家の一人といわれる鵜山仁から、「化粧」出演の依頼を受けた。「化粧」は井上が82年、渡辺美佐子の一人芝居を念頭に書いた作品。木村光一の演出の下、渡辺の上演数は、2010年の最終公演までに648回を数えた。杉村や渡辺を「目標というより憧れ」と感じていた平さんは振り返る。「すごい重圧を二つ重ねられた感じでした」

断念して「号泣」
 “鵜山・平コンビ”による「化粧」は11年の初演から高い評価を受け、全国各地で上演を重ねた。「『女の一生』と『化粧』に、人生の後半をささげると思い定めていた」。だが15年春、「女の一生」公演を終えた直後、右膝の激痛に襲われた。初舞台から40周年を迎える平さんは、目をしばたたかせる。「長年、(脚などに)無理をさせていたようです」。「布引けい」役を他の女優に譲る決心をして、「号泣しました」。それでも、さまざまな治療法を取り入れ、筋力トレーニングを重ねた平さんは今、笑顔を取り戻している。「予想以上に良くなってくれた。これなら(舞台に)戻れると…」。周囲の働き掛け、熱心なファンの要望もあって、「化粧」出演を決めた。“ファイナル”にした理由を語る。「自分を奮い立たせる意味で『最後』とさせていただきました」

 物語の舞台は、さびれた芝居小屋の楽屋。昔、泣く泣く一人息子を手放した女座長・五月洋子は、開演前の化粧をしながら、演目の“母子再会の場面”のおさらいをする。その時、楽屋を訪ねてきた息子を名乗る青年—。

 現実と劇中劇の虚構が交錯する中、女座長は青年や他の座員ら“見えない相手”と対話する。平さんは「お客さまの心に“見えない相手”の姿を浮かび上がらせる。すごく高度な演技力が求められます」。わが子への断ち難い思いを抱く女座長の人生は、大衆演劇の衰退と歩調を合わせるかのように、時代の波にのみ込まれていく。「その悲劇性を際立たせるのが、最後の“どんでん返し”。これはライブで見ていただかないと…」。自らに課した課題も明かす。「強さ、したたかさだけでなく、たおやかさや色気、もろさも…、女性のあらゆる面を表現したい」

 平さんは「『化粧』は時代を超える名作。次の世代の役者が演じ続けてほしい」と話す一方、自身の“化粧後”の予定は決めていない。「今は目の前の舞台だけに集中している」。自らに言い聞かせるように言葉を継いだ。「精根尽きるほど演じ切った後、見えてくる可能性もあると念じています」


2014年の公演より  撮影:谷古宇正彦
「化粧」(東京公演)
 4月25日(火)〜30日(日)、紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階、JR新宿駅徒歩3分)で。全7公演。
 作:井上ひさし、演出:鵜山仁、出演:平淑恵。全席指定5000円。こまつ座 Tel.03・3862・5941

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