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  東京版 平成29年3月上旬号  
母がレビー小体型認知症、体験基に映画づくり  映画監督・熊谷まどかさん

熊谷さんはCM制作会社を退職後、デパートの店員や電話オペレーターなど、さまざまな職業を経験した。48歳で“商業映画デビュー”を果たし「遅咲き」ともいわれるが、「回り道をした分、見えてきたものもあると思っています」
初の長編「話す犬を、放す」、11日公開
 見えないはずの人や物が見える「幻視」などが特徴的な症状とされる「レビー小体型認知症」。母親がこの病気と診断された映画監督の熊谷まどかさん(48)は、自分の体験を基に劇映画を作った。11日から上映される「話す犬を、放す」。自身初の長編作品への思いを熱っぽく語る。「映画がレビー小体型への理解が進む一助になれば…」。ただ、啓発だけが目的の映画ではない。「親子の“つながり”、そして、それ以外の“つながり”も描いた作品です」

 アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と共に、「三大認知症」の一つに挙げられるレビー小体型認知症。認知症全体の約2割を占めるとされるが、熊谷さんは「意外なほど、この病気は知られていない」と苦笑する。初期の段階ではアルツハイマー型などと違い、「もの忘れ」に代表される認知機能の低下が目立たない。しかし、幻視のほか、手の震えや歩行障害といった「パーキンソン症状」、身近な人を別人と思い込む「誤認妄想」など、症状は多様で個人差も大きい。「診断が遅れ、悪化させてしまうケースもあるようです」。熊谷さんは2年近く前、母親から「(幻視で)お猿さんが見える」と告げられた。「ごく初期のうちに診察・検査を受けさせることができた。それは本当に良かったと思っています」

 大阪府出身の熊谷さんは同志社大卒業後、映像の作り手を目指し大阪のCM制作会社に就職。「バブル(景気)の余韻が残る時代、『徹夜で雑用』の連続で疲れてしまった」と3年後に退職した。

 会社の同僚だった夫の転勤に伴い、東京に引っ越してからも、「挫折感を引きずっていた」。“再挑戦”を決意し2003年、都内の映画学校へ。実習で手掛けた劇映画「ロールキャベツの作り方」(04年)は映画監督の登竜門といわれる「ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード)」で入賞。次作の「はっこう」(05年)はPFFアワードのグランプリに輝いた。その後も自主製作で短編の劇映画を撮り続け、「世の中はざらざらしている」(13年)が、ソウル国際女性映画祭で入選するなど、作品は海外でも上映されている。だが、「自分の映画がどれだけ人の心と“つながり”を持っているか不安でした」。描くテーマを「個人の内面」から「人と人との関わり」に広げてきたこともあり、「長編を撮りたい、映画館で多くの人に見ていただきたいという欲求を募らせていました」と明かす。

“母との距離近く
 そんな時、現在は父親と2人で神戸市に住む母親の異変を知った。たまたまレビー小体型について調べたことがあったため、「すぐ受診を促した。『目の病気かもしれないよ』と言って…」。実家に頻繁に足を運ぶうち、「私自身が抱いていたレビー小体型のイメージは変わった」と明言する。「母の性格は元のままだし、意思の疎通も普通にできる。『幻視=精神異常』なんて、とんでもない誤解」。以前に比べ、「心の距離はむしろ縮まった」と笑みを見せる。「母の内面にあった『親だから…』という力みが抜けてきたように感じます」

劇中の母娘に投影
 自身の体験、母親への思いを劇中の母娘に投影した「話す犬を、放す」には、「認知症をいたずらに怖がらなくていい」という考えから、コメディーの要素も織り込んだ。“売れない女優”であるレイコと母のユキエは、周囲の誤解によるトラブルなどに感情を揺さぶられながらも、互いに心の内を打ち明け“つながり”を深めていく。子どもがおらず「お母さんから受け継いだものが消えてしまうのでは…」と思い悩むレイコは、熊谷さんにとって「私の分身のような存在」。映画に込めた思いを語る。「私が生んだ作品も、何らかの形で“つながり”をつくっていくと信じたい」

 作品は昨年、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭や東京国際映画祭で上映され、患者やその家族、専門医らも鑑賞した。「温かい言葉を頂き、ホッとした」。劇場公開を控え、こう話す。「認知症による変化を、変わりゆく人格の『ありよう』として受け入れられれば、本人も周りも楽になるのでは…。映画を見た人もそう感じてくださればうれしい」

 現在、82歳の母親は「症状も精神面も、今はかなり落ち着いている」。これからも映画製作の傍ら、両親の元に通う。「母の老いと病気を通して私も気付きを得た。恩返しのつもりで、母に寄り添っていきます」


©2016埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
「話す犬を、放す」
 俳優養成学校で教える下村レイコは、自身も芝居を続ける“売れない女優”。映画出演の依頼を受け、喜び勇んでいた時、母親のユキエから電話がかかってきた。「チロが時々帰ってくる」と…。チロは昔、飼っていた犬の名前。「幻視」に悩むユキエは「レビー小体型認知症」と診断される。レイコは映画出演と母との生活を両立させようとするが、相次ぐトラブルに心が折れてしまう。そんな時、母から意外な告白が…。

 監督・脚本:熊谷まどか、出演:つみきみほ、田島令子ほか。84分。日本映画。
 11日(土)〜24日(金)、有楽町スバル座(Tel.03・3212・2826)で上映。

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