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  東京版 平成29年2月上旬号  
「歌は体の一部」  歌手・伊東ゆかりさん

現在、伊東さんは私生活でテニスやスカッシュを楽しむ。またディズニーランドや韓流ドラマも大好きだという。「仕事の世界しか知らなかった若いころに比べ、この年になってから喜びがいっぱい見つかっています」とほほ笑む
3月3日、「3人娘」のステージ
 ♪あなたが噛(か)んだ小指が痛い〜。今も歌い継がれる「小指の想い出」(1967年)で、昭和歌謡の歴史に大きな足跡を残した伊東ゆかりさん(69)。芸能界から距離を置いたこともあるが、「私には歌がなければ生きてはいけない!」と現在も全国のステージに立つ。また、かつて青春時代を共にした中尾ミエ、園まりとの「スパーク3人娘」も再結成から12年、今年も3月3日からツアーがスタートする。「私たちと同年代のシニア層のファンが多いですね。観客の皆さんも含めて同窓会のようなもの。3人のうち誰か一人が欠けるまでずっと続けていたいですね」

 それぞれのヒットナンバーや当時のツイストの曲、本音のトークのほか、さまざまな仕掛けで観客を楽しませてきた3人娘コンサート。「先代の3人娘(美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ)の曲を歌ったり、AKB48の曲を3人でのりのりに合唱したこともありますね(笑)」と伊東さん。今年の公演はこれまでの集大成を目指したいという。

 伊東さんの歌手人生は幼少時にさかのぼる。伊東さんは喜怒哀楽の表情が乏しい笑顔の少ない少女だった。これを案じたバンドマンの父は「人様の前で歌えば表情が出てくるのでは」と考え、伊東さんは6歳の時から米軍キャンプを回り、歌わされていた。

 「実際は、私は人前で歌うことが苦手。笑いもせずいやいや歌っていたので、『ノースマイル』と呼ばれていました。でも妻子と別れ遠い異国にいる“進駐軍の兵隊さん”には、子どもが歌っているというだけでとても受けましたね」

 これが関係者の目にとまり、11歳にして芸能界デビュー。だが、そのころは思春期の真っ盛り。自らの意思で歌手を志したわけでもなく、また反抗期も重なり、“ふてくされながら”芸能活動をしていたという。当時流行のミニスカートで伊東さんがツイストを踊った映像がテレビに流れると、「翌日には学校の先生に呼び出され、けしからんと叱られました。でも芸能事務所からはもっと激しく踊れと注意され、ますますふてくされていきました(笑)」。

「普通」への憧れ
 当時はごく普通の生活を送ることに憧れていたという伊東さん。3人娘として華々しく活躍し、さらに「小指の想い出」の大ヒットでお茶の間の人気者となるが、心の片隅ではますます「普通」への憧れが募っていった。

 そして1971年、人気絶頂の中、24歳で俳優・歌手の佐川満男と結婚し、芸能界を引退。娘も授かり幸せな結婚生活。そのまま平凡な家庭人として人生を歩むはずだった。だが、ある理由で芸能活動を一時的に再開。すると、「スポットライトを浴びて歌うことが“とても楽しい”と感じる自分がいました」

年重ね「気付き」
 夫には家事との両立を約束し芸能活動を本格的に再開。だが当時は夫婦共働きという考え自体が希薄。夫との認識のずれが広がり、76年に離婚。伊東さんは娘を養うためにもさらに歌手活動にまい進していく。「生活がかかっていますから、一生懸命です。それに幼少から歌の世界にどっぷり漬かっていた私には歌しかないことにあらためて気付きました」

 その後は3人娘の復活も含め現在まで精力的に活動を続けている。だが決して順風満帆だったわけではない。その陰では鼓膜破損や喉のポリープ除去など、歌手人生を脅かすトラブルや病魔ともたびたび闘ってきた。現在も股関節を痛め療養中で、昨年手術しリハビリをしながら仕事に励んでいる。昨年の手術前は痛みがひどく、あるステージではたまたま共演した千昌夫や黛ジュン、森昌子らに心から心配してもらい、歌う勇気をもらったという。「競争しかないと思い込んでいた芸能界に多くの温かい人がいることに気付かされました。若いころにこのことに気付いていれば…、と思ってしまいますね」

 年とともに、体が言うことを聞かなくなってくるが引退は考えていない。「歌うことが体の一部。この一部をとられてしまったら、私は生きていけないし、これからも歌を通じて皆さんに元気を届けていきたいです」

♪「ゆかり・ミエ・まり 3人娘メモリアルコンサート〜ファイナルスパーク2017〜」♪
 3月3日(金)午後3時開演、Bunkamura(JR渋谷駅徒歩7分)オーチャードホールで。
 予定プログラム:「小指の想い出」「可愛いベイビー」「逢いたくて逢いたくて」ほか。
 出演:伊東ゆかり、中尾ミエ、園まりほか。

 全席指定7500円。申し込み・問い合わせは東京音響 Tel.03・5774・3030

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