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  東京版 平成28年11月上旬号  
「スクリーンに詩を紡ぐ」  詩人・映画監督 福間健二さん

詩人であり映画評論家でもある福間監督。詩と映画の融合を図る自身の作風に関し、「最後にやってきた芸術である映画は懐が深いんです。何でも受け入れてくれる。またかつての映画監督でも、“自分の詞(ことば)”というものを持っていたゴダールとかトリュフォー、小津安二郎や黒澤明もある意味で詩人だったと思うんですよね」と批評する
 スクリーンに詩を紡ぐ映画監督・福間健二さん(67)。英文学の大学名誉教授にして映画評論家、さらに萩原朔太郎賞、藤村(とうそん)記念歴程賞を受賞した現代詩人でありがなら、メガホンをとる異色の映画人だ。自身が紡ぐ現代詩と行間や余白のある映像を組み合わせた前衛的な作風は、若い世代に共感を得ている。だが、現在公開中の最新作「秋の理由」は、60代の二人の男の友情を軸に展開する。「老いが主題ではない。再び青春を取り戻すためのリセットを描きたかった」と、監督は優しく語り掛ける。

自作詩集「秋の理由」を映画化
 主人公・宮本は小さな出版社の編集者兼経営者で60代の独身男性。親友であるかつてのヒット作家・村岡の才能を信じ、新作を出版するため悪戦苦闘。だが村岡は自分の表現したいこと、世に訴えたいことをうまく書き上げられず、精神的不調から失語症に。その妻・美咲に献身的に支えられている。

 ある日、宮本は村岡のファンであるという不思議な少女ミクと出会う。村岡の代表作「秋の理由」のヒロインとそっくりな彼女と過ごすうち、宮本は美咲への思いをはっきりと自覚する…。

 福間監督は、60代は成人式を3度重ねた“3回目の青春”であり、また秋とは夏が過ぎた寂寥(せきりょう)感の中、人の中で一度壊れたものをリセットする季節だという。

 美咲への恋を自覚した宮本にも、次作が出せない村岡にも監督は、「まだ終わっていない。まだやり直せるということを伝えたい」と語る。

 映画原作は以前福間監督が出版した同名の詩集。映画で俳優らに自身の詩を語らせる。

 《キンモクセイの坂道の下 わたしは 顔や手に粘りつく暗示を洗いおとして だれかが泣いているために 秋が来たわけではないことを知った》

 難解に聞こえるがそれは意識的だという。「映画を見てくれた人に、今まで感じたことのない感情を抱いてもらいたい。そして、その人の“何か”を突き動かすことができればそれが一番うれしい」と創作の原点を語る。

映画にささげた青春
 福間監督は1949年、新潟県で誕生。9歳で東京に居を移した。高校受験の時、勉強の息抜きに映画館に通い始め、たちまち「ゴダール、大島渚、鈴木清順、石井輝男…。反社会、反権力的な作品の数々に心臓をわしづかみにされた」という。

 それから高校在学中は、1年100本の映画鑑賞を目標とするように。ただしお金はないので、ビラ下券(店舗などに映画ポスター掲示の謝礼に渡される招待券)を融通してもらうなど、いろいろと工夫したと懐かしそうに話す。「朝、母親に弁当を持たされなかったときはしめたもの。そういう場合いつも100円をもらえたので、当時なら新宿ローヤル劇場など格安の劇場で映画を見て、おつりでカレーライスが食べられました(笑)」

 ついには映画を撮りたいと思い焦がれるようになり、大学入学後自主映画を製作。現代詩に出合ったのもそのころ。やがて詩作へのめり込むようになる。「詩は、僕にとってお金も掛からず一人で作れる“映画”でした」

 大学院卒業直後、オイルショックが日本を直撃。「夢よりもまずは食っていかねば」と、高校教師として就職。映画も詩も一時忘れざるを得なかった。だがその後、岡山大学への転職が転機に。「周りに詩人や映画好きが多く、岡山時代は僕にとって第2の青春でした」

 都立大(現・首都大学東京)に転任後は、詩作のほか映画評論も手掛けるようになり、英国現代詩を研究しながら詩人として、評論家として世に認められるようになっていく。そして95年、46歳にして念願であった劇映画「急にたどりついてしまう」を製作。監督としての地歩を築く。

人生を取り戻す!
 さらに福間監督は60歳を前に映画製作を本格化、「60代で10本の映画を撮りたい」と公言。「定年で再び訪れた青春。これまでの人生でかなわなかったことを取り戻したかった」。以後「岡山の娘」(08年)、「わたしたちの夏」(11年)、「あるいは佐々木ユキ」(13年)を矢継ぎ早に製作。その独特の作風は、若い世代の映画作家・批評家たちから熱い支持を受けた。

 「60代からの定年後は、賃金労働から解放され工夫次第で好きなことが何でもできる状態。そう考えれば、人間は60代から、それまで積み上げてきた以上のことがやれるんじゃないかな」と福間監督。


©「秋の理由」製作委員会
「秋の理由」 日本映画
 監督:福間健二、プロデューサー:福間恵子、小林良二、出演:伊藤洋三郎、佐野和宏、趣里、寺島しのぶほか。88分。

 ケイズシネマ(Tel.03・3352・2471)で上映中。以後、全国で順次上映。

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