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  東京版 平成28年9月下旬号  
行動を変える“ライブの記憶”  演出家・鵜山仁さん

慶應義塾大在学中、男声合唱団に所属した鵜山さんはオペラやミュージカルの演出も精力的に手掛ける。若いころ、俳優として舞台に立った経験を振り返る。「ミュージカル『シカゴ』で、けっこう目立つ役をやらせていただいた。役者として数少ない実績の一つです(笑)」
 一人一人の心の中に、天使と悪魔が同居する—。演出家の鵜山仁(うやま・ひとし)さん(63)は、イプセン作の舞台「幽霊」上演を控え、「両極のせめぎ合いが生むドラマをお見せしたい」と言葉に力を込める。「家庭劇の形を取りながらも、心のスケールは実に大きい “精神のスペクタクル”に立ち会っていただければ…」。俳優と観客が直接向き合う舞台には、「ライブにしかない『出会い』がある」とよどみない。「役者の声や表情は(見た人の)心に残る。それが後々の行動を変える力になると思いたい」

イプセン作の舞台「幽霊」上演
 鵜山さんは「若いころ抱いていた50代以降のイメージは『老成』。でも、今の自分は全然違う」と苦笑する。「心の中は『天使と悪魔』以外にも、相反するものでいっぱいです」。理想の追求と現実への適応、謙虚さと自負心…。「近代演劇の父」と称されるノルウェーの劇作家ヘンリク・イプセン(1828〜06)に関心を寄せる。「彼は『人形の家』や『幽霊』など、代表作の多くを50歳過ぎに書いている。僕に近い思いはあったのでは…」。イプセンは当時のヨーロッパの常識に挑んだ「社会派」である半面、「大昔から変わらない人間の本質に迫った作家ともいえます」。

 奈良県大和高田市に生まれた鵜山さんは、中高一貫教育の奈良女子大附属中等教育学校(共学)に進学した。

 毎年秋の文化祭は学年ごとの演劇が名物で、「僕は6年間、そこに青春をぶつけていた」と笑う。慶應義塾大文学部フランス文学科を卒業後、俳優を目指し舞台芸術学院に進んだが、やがて演出家に目標を変えた。演出家としてのデビュー作は1980年上演の「オペラ・死神」(作曲:池辺晋一郎)。その後は文学座に籍を置きながらも、劇団の枠を超えて活動する。シェークスピア、テネシー・ウィリアムズ、森本薫、三島由紀夫、井上ひさし…。古典・名作の演出を意欲的に手掛ける中、俳優の意外な一面を引き出す手腕と、言葉のイメージを具象化する力量は高い評価を受けてきた。

 04年には、「兄おとうと」(作:井上ひさし)、「ニュルンベルク裁判」(作:アビー・マン)などで、読売演劇大賞の大賞・最優秀演出家賞を受賞。07年からは3年間、新国立劇場の演劇芸術監督を務めている。「本来、『官』と『民』は相反するものではない。ただ、葛藤もあった3年間でした」。日本を代表する演出家の一人に挙げられる今も、俳優やスタッフに自分の考えを押し付けない。「人とのやりとりの中から、僕の発想を超える表現が生まれる。それは初演に限らない」

「実人生を超える」
 相次ぎ新作に挑む一方、再演を重ねる舞台も数多い。中でも広島の原爆投下後の父娘を描いた「父と暮せば」(作:井上ひさし)は94年の初演以降、500公演を超す。「僕もいつの間にか父親役(の設定)以上の年齢。『フィクションが紡ぐ感動は、実人生以上に連綿と続く』と強く感じるようになった」。ギリシャ悲劇を再構成した「グリークス」で紀伊國屋演劇賞団体賞に輝いている鵜山さんは言葉を継ぐ。「ギリシャ悲劇を演じた人たちの精神は、現代人の中に“無意識の記憶”として流れている」。照れたような笑みを浮かべ、こう続けた。「僕も“1万年後の記憶”になるような仕事をしていきたい」

上質のミステリー
 イプセンの作品は、「道徳的にふさわしい結末」を演劇に求めた19世紀のヨーロッパでは、「スキャンダラス」と批判も浴びた。だが、鵜山さんは「生と死、聖と俗、愛情と打算、さまざまな『相反するもの』の対立・葛藤が作品にエネルギーをもたらしている」と指摘する。「これらは、現代の私たちにも共通する普遍的な問題」。自身にとって初演となる「幽霊」を読み込み、「イプセンはエンターテイナーでもある」とあらためて感嘆した。「登場人物5人の意外な過去が明らかになるにつれ、物語が思いもよらない方向に突き進む。上質のミステリーとしても楽しめます」

 鵜山さんは今、「相反するもの」が対立しながらも共存する心模様を「カラフル」と言い表す。「カラフルだからこそ、人生は面白い」。今後も自身の葛藤を受け入れ、人間の多様性を表現し続ける考えだ。「心を“一色”に染めるのが一番つまらない。第一“一色”を無理強いするのは危険です」

「幽霊」
 29日(木)〜10月10日(月・祝)、紀伊國屋ホール(JR新宿駅徒歩5分)で。全15公演。
 ノルウェーのフィヨルドに臨むアルビング夫人の屋敷では、亡き夫の名前を冠した孤児院の開院式を翌日に控え、準備作業が進んでいた。一人息子のオスバルも数年ぶりにパリから帰省し、夫人の心は浮き立つ。だが、彼女が恐れていた“幽霊”が再び姿を現して…。
 作:ヘンリク・イプセン、演出:鵜山仁、出演:朝海ひかる、安西慎太郎、吉原光夫、横田美紀、小山力也。全席指定7800円。チケットスペース Tel.03・3234・9999

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