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ジャズは癒やしの音楽 元ジャズプロデューサー・木全信さん |
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“やさしいジャズ”を掛け、女性にも受ける仕掛けでファン層を拡大、ジャズとしては異例のヒットをたたき出し続けた木全さんだが、「当時はコアなジャズファンから『木全の作るジャズは軟弱で不愉快!』なんて言われたこともありますよ」と苦笑する |
1980年代の“おしゃれなジャズ”の仕掛人
「ジャズは癒やしの音楽。“難解”との誤解は解きほぐしたいですね」と語るのは元ジャズ・プロデューサーの木全信(77=きまた・まこと)さん。1980年代、ピアニストのケニー・ドリュー(1928〜93)と組み、日本でブームを巻き起こした“おしゃれなジャズ”の仕掛け人だ。一線を退いた現在でも「ジャズは気楽な旋律」(2014年・平凡社刊)を出版、自身がプロデュースしてきたジャズミュージシャンらとの触れ合いを描き評判を呼んだ。そして今月20日、著書と同一タイトルのコンピレーションアルバム集が、原盤を持つ各3社のレコード会社よりリリースされる。収録曲は全て木全さんがプロデュースしてきた約300枚のアルバムの中から自ら選曲。「誰もが聞いたことのある、おなじみのスタンダードな曲が中心です。リラックスして聞いてほしい」
木全さんは38年、愛知県生まれ。「浪曲が好きだった」との幼少期を経て中学時代、映画「グレン・ミラー物語」(54年)に出合いジャズに魅せられたという。大学卒業後は短波ラジオ局に就職、早速好きなジャズのレコードをラジオで流し始めた。その縁で32歳の時、レコード会社へ転職。これが後のプロデューサー業への布石となった。
レコード会社では宣伝畑に配属となり歌謡曲を担当。クール・ファイブ、西城秀樹、藤圭子らと組み、大ヒット創出へアイデアを思い付くまま行動した。「皆嫌な顔をせず付き合ってくれましたね」
例えば、クール・ファイブ「東京砂漠」(76年)の宣伝では「砂漠に花を」と、メンバー全員で花の種を配ったり、12月には四十七士の格好をさせ泉岳寺にヒット祈願に行ったり…。ユニークな宣伝活動でいつしか実績トップの宣伝マンとなっていた。
だが、木全さんの中ではいまだジャズの火は消えていなかった。転職して7年目、上司に思い切ってジャズのプロデュースをやらせてほしいと直訴。
上司を何とか口説き落とし、まず和製懐メロジャズバンドの再録で6万枚を超えるヒットを記録。これで足場を固めると、次には憧れだった本場アメリカのジャズメンに接触を図った。彼の名はベニー・ゴルソン。かつて「モーニン」(58年)などの大ヒットを飛ばしたジャズ・メッセンジャーズの一員でサクソホン奏者、そして編曲の名手としてジャズ界に名を成す巨人の1人だ。もちろん全く面識などない。「体当たりで手紙を書きました」
木全さんの、古き良きモダンジャズの復活を切々と訴える手紙は果たしてゴルソンの心を捉えた。当時アメリカではモダンジャズが退潮気味だったのだ。
木全さんは宣伝畑で鍛えたアイデア力で次々と企画を提示。「キマタの考えることは面白い」とゴルソンもその人脈を生かし、続々とジャズの巨匠らをアルバムに誘ってくれ、おかげで日本でのセールスは上々。また木全さんは確かな人脈を手にすることができた。「ベニーのおかげでプロデューサーとして独り立ちできました」と今も感謝の念は深い。
女性中心にヒット
次に力を入れたのは欧州。特に大成功したのはケニー・ドリューとの仕事だ。ドリューの華麗なピアノ演奏と、従来のジャズの常識を覆す明るい水彩画風のジャケットが話題となり、女性を中心に大ヒット。さらに欧州ではヨーロピアン・ジャズ・トリオほか多数のミュージシャンを発掘、日本でのCD売り上げのみならず、欧米のジャズシーンに確かな足跡を刻んだ。
米大統領から礼状
そして96年の夏、一通の手紙が届く。差出人を見ると「ホワイトハウス!?」。けげんに思いながら封を切ると、なんとクリントン大統領の署名。ジャズ振興に対する感謝の手紙だった。「実は大学時代の友人が大統領と知り合いで、彼を通じて僕のCDを聞いた大統領が個人的に礼状を送ってくれたのです」
木全さんの仕事が、本場アメリカより思わぬ形で報われた瞬間だった。
ちなみに木全さんは英会話が苦手でかつ楽器も高校在学時にドラムをかじっただけ。そんな木全さんに成功の秘けつを聞くと、「プロデューサーとは何はなくともアイデア勝負の世界です。運も大きい。でも“好き”であること、そして人に恵まれたことが一番ですかね」と屈託なく笑う。 |

ケニー・ドリュー(左)と木全さん=1988年・赤坂プリンスホテルで |
「ジャズは気楽な旋律」 コンピレーションアルバム
ソニー・ミュージック編、徳間ジャパンコミュニケーションズ編、日本コロムビア編が20日(水)に同時リリース。各20曲計60曲収録。各2700円。各編とも木全さん本人のライナーノーツ付き。 |
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