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大工3人組のロックバンドデビュー 03BAND(ゼロサンバンド) |
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右から新井さん(ドラム)、古澤さん(ボーカル)、相澤さん(ベース)。「バンド名の“03”は『おっさん』のもじりです(笑)」と古澤さん。ライブ時にはギターとキーボード奏者にサポートメンバーとして入ってもらうが、「なるべくおじさんを探してお願いしています」 |
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目標は「かっこいい父ちゃん」
青春時代、「音楽を一生の仕事にしたい!」とバンド活動に励む人は今も昔も多い。ただし、そこからプロとして大成するのはごく一部、その裏では大多数の人が青春の終わりとともに楽器を置き、社会人としての人生を歩むのだろう。そんな経験を持つ現役大工3人組が、異色のおじさんロックバンドを結成した。その名も「03BAND(ゼロサンバンド)」。目標は“かっこいい父ちゃんになる”。デビューシングル“夕焼けの詞”では、定年を迎えこれまでに家を建て、家族を守り続けてきた男の背中を歌い上げる。リーダーでボーカルの古澤正一さん(50)は、「大工仕事をおろそかにする気は全くない。バンド活動にも全力で臨み、あのころ見れなかった世界の先を見たい」と、青春時代の夢への再挑戦を誓う。
メンバーは古澤さんのほか、ドラム担当・新井康徳さん(48)、ベース担当の相澤圭介さん(38)。共に古澤さんが社長を務める工務店(調布市)の現役大工だ。
バンド結成のきっかけは数年前の夏、近所の夜祭りで古澤さんが小学生の息子と交わした一言だった。祭りで演奏していたバンドのステージを聴きながら、「もしあのステージで父ちゃんが歌っていたらどう思う?」。すると、「めちゃくちゃかっこいい。やってよ!」。
この一言が、古澤さんのくすぶっていた音楽魂に火を付け、その思いを仕事仲間でもあり音楽仲間でもあった2人にぶつけた。「もう一度音楽をやろう! そしてかっこいい父ちゃんになろう!!」
古澤さんと新井さんは実はかつてのバンド仲間。残念ながらバンドはプロデビュー直前で解散。「運も実力もあと一歩だった」と古澤さん。これを機に親の跡を継ぎ大工に。だが「建設も曲作りもモノづくりという面では一緒」。バンド時代から修業を積み、今や大工として一国一城のあるじに。
一方、新井さんはというと、TVアニメ「スラムダンク」の名曲「君が好きだと叫びたい」でヒットを飛ばした「BAAD」のドラマーとして見事プロデビュー。だが紆余(うよ)曲折の末、長い時間を挟み古澤さんの下へ再び合流することに。
相澤さんも学生時代からプロミュージシャンを目指していたが、アルバイトで入った古澤さんの会社でモノづくりの面白さに目覚め、いつしか大工が本業となっていた。
今やメンバー全員、家庭を築き子どもをもうけている。家族を守っていくには今の仕事をおろそかにはできない。といって“遊び”でナバンドを組むことは一切頭になかったという。3人共とことんまでやらなければ気が済まないたちだった。そして4カ月間の真剣な話し合いの末、大工とプロミュージシャンの両立を誓った「03BAND」が誕生した。
建設現場でも練習
だが東京五輪を5年後に控えた現在、建設現場の人材不足は深刻で古澤さんたちは全国を飛び回る忙しさだ。「北海道と沖縄以外は全部回りました」と相澤さん。バンドに回す時間など取れそうもないが、建材と共に演奏機材も一緒に運び、現地で練習しているという。ただ、古澤さんは厳しい顔で語る。「大工の仕事に一切妥協は許されません。現場では“鬼”となり2人を指導しますが、バンドでは“友”となります。切り替えが大事ですね」
将来は紅白出場
もちろん音楽だって本気だ。相澤さんは、「いつの日かNHK紅白に出場し、建設現場から中継してもらいたいですね」と不敵に笑う。唯一プロデビュー経験のある新井さんは、「あの世界は上に行くほど自分のやりたいことができなくなるようだった。でも今度はこのバンドで違う着地点を目指したい」と決意を語った。
そして古澤さんは、大工という職業柄いろいろな家族、そして父の姿を見てきたと述べ、「日々家族を支え、休日、または定年後はぐったりという人も多いでしょう。でももうひと頑張りすれば家族から“かっこいい”といわれる存在になれるかもしれませんよ。一緒に頑張ってみませんか」と世のお父さんにエールを送る。 |
1st Maxi Single「夕焼けの詞」
収録曲は「夕焼けの詞」(作詞:03BAND、作曲:古澤正一)、「MOVE ON!」(作詞・作曲:古澤正一)、「祭りの後」(作詞・作曲:古澤正一)、「夕焼けの詞(Instrumental)」。 価格1296円。(株)CITY WAVE Tel.03・3770・7400 |
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