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  東京版 平成27年11月上旬号  
絵画と映像“融合の美”  映画監督・小栗康平さん

「FOUJITA」は戦後、レオナール・フジタと改名した藤田嗣治のフランス語表記。小栗さんは「藤田の戦争画はフランスでは、ほとんど知られていない」と話す。「日本でも鑑賞の機会は少なかった」。現在、東京国立近代美術館で、藤田の戦争画14点が一挙に公開されている。「これは特筆すべきことです」
10年ぶりの新作「FOUJITA」が14日公開
 「泥の河」「死の棘」「眠る男」—。小栗康平(おぐり・こうへい)さん(70)は国際映画祭で受賞を重ねるなど、世界的な名声の高い映画監督だ。10年ぶりの新作「FOUJITA(フジタ)」は画家・藤田嗣治の物語。パリで脚光を浴びた1920年代と、日本で“戦争協力画を描いた40年代。14日からの上映を前に、「二つの時代と文化の差異を描いた」と話す。「藤田(の生涯)を入り口に、今の人間の生き方を問い掛ける作品です」。奥深いテーマを“絵画との融合”ともいえる映像美で彩る。

 戦後70年—。今秋、小栗さんは70歳の誕生日を迎えた。終戦まで、父親は日本統治下の朝鮮の警察官。引き揚げ時、「僕は母のおなかの中に居た」。監督デビュー作「泥の河」(81年)は戦争の傷痕が残る大阪が舞台の作品だ。2・3作目の「伽倻子(かやこ)のために」(84年)、「死の棘」(90年)と共に、1950年代の物語として“戦後3部作”と呼ばれている。戦後、日本国籍を捨てた“フジタ”の物語は6作目。構想と製作に時間を費やし、「寡作の映画監督」ともいわれる小栗さんは今の心境を語る。「映画における自分の原点に立ち戻った気がしています」

故郷で文房具店
 引き揚げ後、父親は群馬県前橋市で文房具店を営み、小栗さんは自然の中を駆け巡る少年時代を過ごした。映画との出合いは高校生の時。「歴史も恋も人生も…、全てを表現する映画のすごさに驚いた」。早稲田大を卒業後、いったん文房具店を継いだが、2年ほどで再び故郷を離れた。「青春の門」などを手掛けた映画監督・浦山桐郎らの下で助監督を務めた修業時代。師と仰いだ浦山の戒めは、今も小栗さんの胸に宿る。「決して権力的になるなと…。(上からの目線で)人間を分かったふうに描くなという教えです」

 少年たちの“心のひだ”に触れたよう—。「泥の河」の反響は海外にも広がり、モスクワ国際映画祭では銀賞を受賞した。ただ、「今の自分から見れば欠点もある。物語を説明するための描写は息苦しい」。言葉に頼り過ぎることなく、映像そのものの“語る力”を追究する傾向を強めた。在日朝鮮人と日本人少女の愛と別れを描いた「伽倻子のために」では1週間分を撮り直し。妥協を許さぬ姿勢は日本人初のジョルジュ・サドゥール賞(フランス)受賞にもつながっている。

 夫婦の愛憎の極限に迫った「死の棘」では、カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリと国際批評家連盟賞をダブル受賞。動かず語らない男性を主人公に据えた「眠る男」(96年)は、「従来の映画話法を根底から覆した」と評価され、モントリオール世界映画祭審査員特別大賞に輝いた。女子高校生の創作と大人の現実が入り交じるファンタジー「埋もれ木」(05年)も、「観念に陥らず“心で感じる映画”を志向した」。カンヌの特別上映で高い芸術性が称賛されるなど、その作品は、常に世界の注目を集める。

「現代と重なる」
 創作の姿勢は実在の人物がモデルの「FOUJITA」でも変わらない。「事実に縛られず物語の世界を広げた」。華美と孤独が背中合わせだった1920年代のパリ…。戦争さなかでも、人々が静かな営みを続けた日本の農村…。「映画は時間の芸術」とも言う小栗さんは「二つの時代」を並置させ、その違いを際立たせる。時代の激動、異文化との対話…。「藤田の問題は、現代の私たちの問題と重なる」。戦時下を生きた人間の複雑な内面に思いを巡らせる。「単純に『戦争画=翼賛』とは決めつけられないでしょう」。“世界のオグリ”と呼ばれる今も浦山の戒めを忘れない。「藤田の生き方から何を感じるか、(映画を)見る人それぞれの内面に委ねたい」

藤田との“コラボ
 日本画的ともいわれる“乳白色の肌”の裸婦画、西洋の古典的な歴史画の影響が見られる戦争画…。藤田の代表作が数多く登場する作中に、絵画の美と調和する映像美の世界も展開する。パリの街並み、日本の棚田…。CG技術も駆使した小栗さんは「絵を見るように映画を見ていただきたい」と言葉を紡ぐ。興行成績上位を占める映画と違い、意外性に富んだストーリー展開はない。商業主義にとらわれないため、「(資金不足で)実現しなかった企画もある。ますます寡作になってしまう」と苦笑する。それでも「最新作を最高作に」との思いは変わらない。「優れた映画文化は豊かな人間性を育む。映画産業に厚みがあった時代を知る、僕ら中高年には映画文化を次代に伝える責務がある」


 ©「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション
「FOUJITA」  日・仏映画
 監督・脚本:小栗康平、出演:オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、加瀬亮、岸部一徳ほか。126分。

 14日(土)から角川シネマ有楽町(Tel.03・6268・0015)ほかで全国公開。
藤田嗣治(ふじた・つぐはる)
 1886(明治19)年、東京府牛込区(現・新宿区)生まれ。1913年に渡仏。20年代、“乳白色の肌”の裸婦画でパリ芸術界の寵児(ちょうじ)に躍り出る。40年の帰国後は、「アッツ島玉砕」などの戦争画を手掛け、日本美術界の重鎮に。戦後、戦争協力批判もあり、再びフランスへ。フランス国籍を取得し、日本国籍を離脱した。カトリックの洗礼を受けレオナール・フジタと改名。68年、81歳で死去。ランス(フランス)の礼拝堂に5番目の妻・君代と共に眠る。

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