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独身を続けてきたモト冬樹さんは、自身の59歳の誕生日に、10年の交際を経て入籍した。「結婚して最初の1〜2年は、意識して2人の時間を持つなど、何事も『奥さん最優先』と考えた。若いころだったら無理だったかも」と話す。「家庭を持ってから、兄(エド山口)夫婦と話す機会も増えました」 |
テレビ番組や舞台、音楽のライブ…。分野の枠を超えて活躍するモト冬樹さん(64)は、発想の“根っこ”をこう語る。「お客さんを喜ばせたい」。もともとはバンドのギタリスト。「お笑い」に重心を移した後も、「俺の根っこは変わらない」と歯切れ良い。演技には「お笑いと音楽の“見せ方・聞かせ方”を生かしている」。10月は、ミュージカル「ザ・デイサービス・ショウ」に元ギタリスト役で出演する。「老い」をテーマに、笑いをたっぷり盛り込んだ舞台。「見た人が元気になる芝居にしたい」
老いがテーマのミュージカルに出演
バンドのライブと舞台の公演。「この二つはすごく近い」とモトさんは明言する。「お客さんの心を揺さぶりたい—。思いを共有する一人一人が力を合わせる点は同じです」。ギタリスト、歌手、お笑いタレント、俳優…。さまざまな肩書で呼ばれるが、「心の中では、自分はずっとバンドマン」と言う。自身が思い描く「バンドマン像」を説明する。「流行しているもの、五感を刺激する何かをショーアップして、人を楽しませる仕事です」
巣鴨の開業医の家に生まれたモトさんは、2人兄弟の弟。3歳年上の兄は歌手・タレントのエド山口だ。エドの影響を受け、中学時代からエレキギターに熱中。高校卒業後、エドや小学校の時から同級生だったグッチ裕三らとバンドを組んだ。
「グループ・サウンズの人気復活を狙った音楽だった」。だが、「お笑い」が好きだったこともあり77年、グッチらとコミックバンド「ビジー・フォー」を結成した。スタンダード曲の替え歌などの「音楽ネタ」で一躍人気に。その後、「ビジー・フォースペシャル」として、長渕剛やさだまさし、サイモン&ガーファンクルなどの「ものまね」も演じ、コロッケらと共に「ものまね四天王」と称された。モトさんは「俺たちのものまねは音楽が基盤」と語る。「歌と演奏をきっちりコピーした上で、意外性を加えている」。たゆみなくネタやトークの“引き出し”を増やした自負も胸に言葉を継ぐ。「場の空気を読む勘と、いろんな表現をとっさに使い分ける判断力は、演技にもすごく役立っている」
「役者」でも存在感
90年代以降は俳優として映画やテレビドラマ、舞台に数多く出演する。実写の「ちびまる子ちゃん」(フジテレビ)のさくら友蔵役などでおなじみの一方、“モト冬樹生誕60周年記念”の映画「こっぴどい猫」(12年)では主人公の作家役を好演。主演の舞台「あるジーサンに線香を」(同・13年)では、老いと若さの対比で笑いと涙を誘うなど、「役者」としての存在感を増している。59歳で結婚したモトさんは表情を緩める。「心の安定が良い結果につながっているのかも」
そんなモトさんはミュージカル「ザ・デイサービス・ショウ」にも意欲を見せる。デイサービス施設を舞台に、高齢者がロックバンドを立ち上げ、ショーを開催しようとする物語。主演でプロデュースも手掛ける中尾ミエとは、2人でコンサートを開くなど親交が深く、「先輩直々の出演の命を頂いた(笑)」。老いや介護がテーマの喜劇を企画する中尾に共鳴する。「笑って向き合う姿勢が大切」。施設利用者の役では、モトさんが「出演者中最年少」だ。「俺にとっては近年にない舞台。緊張するけど、リアリティーのある芝居になりそうです」
台本は、モトさんのバンドでベースを担当する音楽家・山口健一郎の書き下ろし。元ギタリスト役のモトさんは「シナトラの『マイ・ウェイ』を演歌風に弾いたり、速弾きしたり…。“聞かせどころ”もいっぱい」と話す。得意の“薄毛ネタ”もあるだけに「場の雰囲気次第ではアドリブを利かせてみようかな」。
自分も楽しく
モトさんは「その時、その時に心が向いたことを懸命にやってきた」と言う一方、若いころの葛藤を明かす。「壁に当たったような思いが募り、笑いを取ろうとする俺自身が『楽しめていない』という時もあった。それだと、お客さんも絶対楽しめない」。長年の試行錯誤を経た今は、「自分の仕事に納得がいけば、役作りなどの苦しみも喜びに変わる」と快活だ。「そこに、お客さんの笑顔があれば最高」。引退の予感は頭にない。「俺自身が楽しめている限り、ずっと『バンドマン』でありたいね」 |
「ザ・デイサービス・ショウ」
10月3日(土)〜12日(月・祝)、よみうり大手町ホール(地下鉄大手町駅直結)で。全11公演。
ある高齢者のデイサービス施設。ミニコンサート出演で施設を訪れた往年のスター・矢沢マリ子は、利用者によるロックバンド結成を思い立つ。悪戦苦闘を経て何とかバンドは形になり、ショー開催の雰囲気も盛り上がる。しかし思わぬ障害が発生し、悲報も舞い込んできて…。
作・音楽:山口健一郎、演出・振付:本間憲一、出演:中尾ミエ、尾藤イサオ、光枝明彦、モト冬樹、正司花江、初風諄ほか。
全席指定8000円。CATチケットBOX Tel.03・5485・5999
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