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  東京版 平成27年3月下旬号  
ジャズは“個声”で歌う  歌手・マーサ三宅さん

戦後、母と中国の港湾都市・葫蘆島(ころとう)から船で引き揚げてきたマーサさんは回想する。「当時、『日本へ持って帰れるお金は1人2000円(現在で約20万円)まで。規則違反は殺される』と言われた。私たちは泣く泣く残りのお金を燃やしたのに、周りの大人たちは大金を隠し持っていた。当時から真っ正直に生きてきたけど、もっとうまく生きた方がいいかなという気持ちが今ごろ出てきています(笑)」
デビュー60周年、「生涯ベスト盤」発表
 自分の気持ちを素直に出し、自由に表現するアドリブの面白さ—。「ジャズは人生」と話すマーサ三宅さん(81)は、日本ジャズボーカル界の草分け的存在だ。戦後、日本に引き揚げ、ジャズ歌手一筋。主宰する歌唱教室で後進の指導にも当たり、芹洋子や大橋純子、岩崎宏美、山本リンダら多くの歌手を輩出。昨年、音楽活動60周年を記念して、自ら選曲した“生涯集大成”のベストアルバムを発表したマーサさん。「一人一人の“個声”で歌えるのがジャズ。唯一無二の味わいです」

 卓越した歌唱力、きれいな発音…。ジャズに精通した小説家・阿佐田哲也(色川武大)はマーサさんの歌声を「楷書のジャズ」と評したという。書でいう楷書は一画一画をきちんと書く基本の形。少し“崩した”歌い方も得意とするが、その前提となる楷書の実力も「お手本になるジャズ」と認められた。

 レパートリーは優に1000曲を超えるという。特別な1曲をあえて選ばず、「コンサートのリクエストで一番多いのは『スターダスト』」と控えめに笑うマーサさん。ジャズ歌手としてこだわるのは3つ。「まずは声の滑らかさを保つこと。そして、英語の発音と歌詞の正確な解釈。つかえたり、音程がずれたりしないように、聞き心地の良い音を届けたい」

 旧満州(中国東北部)に生まれたマーサさん。父を早くに亡くし、運動具店を営む母と二人暮らし。幼少から歌が得意で母の商売も順調だったが、46年に貨物船で日本へ引き揚げ。「現地に残り、日本舞踊(坂東流)の師匠になるのが夢でした。戦争は人生を180度転換させてしまう」

 中学卒業後、日本音楽学校で音楽の基礎を学び、夜は歌のアルバイトという生活が6年続いた。米軍キャンプでも歌い、当時人気のレイモンド・コンデが主宰する「ゲイ・セプテット」の専属歌手に。

 53年、日劇のコンサート出場を機に芸名を「マーサ三宅」に。ベニー・グッドマン楽団の専属歌手マーサ・ティルトンから付けた。華々しいデビューとはいかず、“替え玉歌手”として映画出演も。「俺は待ってるぜ」の北原三枝や「美女と液体人間」の白川由美の吹き替え…。「黛敏郎さんには『題名のない音楽会』に何度も呼んでいただいた。実は黒澤明監督の『天国と地獄』(63)でも犯人役の山崎努さんが夜の街を逃げる場面で私の歌声が使われています」

 56年にジャズ評論家・大橋巨泉と結婚(64年に離婚)。58年発売のジャズLP「トウキョウ・キャナリーズ」がヒット以降、テレビやラジオでも活躍した。歌手ヘレン・メリルやハンク・ジョーンズ(ピアニスト)ら本場のジャズ奏者とも交流し、ベニー・グッドマンやビリー・ホリデイと共演したテディ・ウィルソンとは一緒に全国ツアーもした仲。「お酒を愛する人。スイング時代の名ピアニストで、最も影響を受けた人物」とほほ笑む。

卒業生は4千人
 日本ジャズ界の発展に貢献した個人に贈られる「南里文雄賞」のほか、芸術祭賞や旭日小綬章も受けたマーサさん。ジャズの裾野を広げた功績は大きく、中でも72年に開校した「マーサ三宅ヴォーカルハウス」は出色だ。「one and only(ワン・アンド・オンリー)」。個人レッスンを中心としたきめ細かい指導がマーサさん流。「意識したのは一人一人の個性が出るような歌い方を作ること。その人に合った音や歌を見つけ、行く道を示してあげる。“個声”を伸ばすのが特徴です」

 今陽子や岩崎宏美など多くのスターを輩出し、卒業生は4千人に上る。現在、指導はマーサさんの直弟子が当たり、定年退職後の男性の入会も多いという。「ジャズははまると抜け出せない、味わい深さがある。40年以上通う生徒もいます」

 歌手生活60年。今では2人の娘(大橋美加、豊田チカ)もジャズ歌手として活躍する。昨年10月に発表した「帰り来ぬ青春」は、マーサさんが“生涯ベスト”と位置付ける集大成の1枚だ。これまでに録音した作品の中から自ら15曲を選曲。最新のデジタル技術を用いて高品質な音色でよみがえった。ジャズソングに限らず、ミュージカルやシャンソン、日本のニューミュージックも収録。「今回は、『こういう曲もあるので気楽にどうぞ』といろいろな人に手を差し伸べる曲目です。聞いてホッとすると思います」

 昨年、骨折した腰に痛みを抱えながらも、「年齢と体調の変化に沿った歌い方を研究したい」と前を向く。「私にとって、ジャズとは人生でした。だから夫でもなければ恋人でも親子でもない。自分の人生ね。息絶えるまで歌い続けたい」

「帰り来ぬ青春 〜Yesterday When I Was Young〜」
 「サンライズ・サンセット」「帰り来ぬ青春」「グルーミー・サンデー」のほか、アリス「冬の嵐」も収録。「サンライズ〜」ではマーサさんの弟子24人がコーラスに参加。2700円。

【マーサ三宅ヴォーカルハウス】
 JR中野駅徒歩3分。発声や楽譜の読み方、ジャズ理論など初心者でも学べる。見学や体験レッスンも随時受け付け中。Tel.03・3388・4416
http://www.martha-jazz.com/

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