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「恋愛に引退はない」 映画監督のパトリス・ルコントさん |
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「日本に来るのは15回目です」とルコント監督。伝統的な面より東京の街並みなど近代的なところが好きだと話す。生魚が好みで刺し身をよく食べる |
新作「暮れ逢い」公開
「髪結いの亭主」などの恋愛映画で世界的に評価が高いフランスのパトリス・ルコント監督(67)の新作「暮れ逢い」が東京ほかで公開中だ。あえて沈黙シーンを多くして、「恋に落ちていく男女の心の機微を表現した」というルコント監督。同作品で「恋愛の欲望は時の経過に打ち勝てるか」というテーマに取り組んだ。“愛の名匠”とも呼ばれる同監督は「私自身、この年になっても常に恋心を持ち続けています」と話し、シニア世代に向けて「年を取っても恋愛に引退はない。年齢差も全く関係ない」と恋心を持ち続けることを勧める。
原作はシュテファン・ツバイクの小説「Journey into the Past」。脚本家の友人から借りて読み、心を打たれたというルコント監督。この小説との出合いは偶然だったが、映画化はすぐに決めたという。
舞台は1912年のドイツ。第1次世界大戦が勃発する2年前のこと。ドイツで鉄鋼業を営む裕福な実業家カール・ホフマイスターとその若き妻ロット、1人息子が暮らす屋敷に27歳の青年が同居することになる。ホフマイスターの個人秘書となった若く才覚あふれる美青年、フリドリックだ。快活で天真らんまんな魅力あふれる4歳年上のロットを一目見て心を奪われたフリドリック。彼のロットに対する欲望は次第に高まっていくが—。
ツバイクの小説を映画化するのに際し、「この作品は沈黙の多いものにしよう」と決心したルコント監督。一番心を注いだのが「言葉にしていない感情を映像にすること」だった。
例えばフリドリックがロットを見ているシーン。フリドリックに密接に寄り添いながら、彼がどんな視線でロットを見ているかに細心の注意を払って撮影したという。「この視線は彼の視線であると同時に私自身の視線でもあったわけです」と話す。
彼女のことを愛するが、彼女が自分のことを愛してくれているか確信が持てないフリドリック。「でも、それは二の次なんですね。彼女を愛することが彼の人生に光を与えてくれているんですから」とルコント監督。人生において、人を愛することは生きる喜びにつながるという。「愛することを知らずに人生を過ごすことは牢屋(ろうや)に入って生きるようなもの」と話す。
“愛と時間に”に着目
しかし映画の2人のような道ならぬ恋では、「誰も傷つかない状況でしか実を結ばない」と考えるルコント監督。映画でもフリドリックとロットは第1次世界大戦で離れ離れになりながら純愛を8年間も守り、(ロットの)夫の死後再会する。
そんなルコント監督が、原作で特に興味を引かれたのが「引かれあう恋人たちの欲望は、時の経過に打ち勝てるのだろうか」というところだった。ツバイクのこの問い掛けに対して、ルコント監督は思案を重ね、脚本家と話し合ったという。そして、映画の最後の10秒を曇り空に青い空が見えるようにすることで2人の行方を指し示すことに—。「これが私の答えです」とにっこりする。
シニア層から反響
ルコント監督の母国フランスでは「たくさんの50代以上の人たちに見てもらった」という映画「暮れ逢い」。日本もそうだがフランスでもアクションやコメディー、青春物など若者をターゲットにした映画が多いという。そんな中、シニア世代から「僕らの見る映画を作ってくれてありがとう」と感謝され、とても感動したと話すルコント監督。「恋に落ちる時、年齢なんて全く関与しません」とシニア世代にエールを送る。 |
©2014 FIDELITE FILMS
‐WILD BUNCH‐ SCOPE PICTURES |
「暮れ 逢い」 仏・ベルギー映画
出演:レベッカ・ホール、リチャード・マッデン、アラン・リックマン、シャノン・ターベットほか。98分。
シネスイッチ銀座(Tel.03・3561・0707)ほかで上映中。 |
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